表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/42

第九話

会議室に続々と人が入って来た。新入社員らしく緊張した面持ちで自分の名前を呼ばれるのを待っている。次々と名前を呼ばれる中で1人だけ会議室に残っている女性がいた。


「はい。じゃあ、君だけ残ったことを説明するね。沢村めいさん。」


少し戸惑っているようだった。


「基本的にうちは希望した部署についてもらっているけど、例外がいてね。君はその例外になってもらいたいんだよ。強制はしないし、嫌なら嫌って言っていいよ。これは僕からのお願いだから。」


真心がめいさん用の資料を手渡しした。


「その資料に詳しく書かれているけど、僕からもしっかり説明するね。君にはモデルの仕事をしてもらいたいんだ。希望では事務課だったけど、事務課に所属しながら同時にモデルとしても仕事をしてもいいし、モデルとして真心の下についてもらうことも可能だよ。どうかな?」


返答はなし。無口なのは、真心から聞いていた。一通り資料に目を通してもらった。


「めいちゃん。無理して今決めなくていいよ。寛は待ってくれるから。」


珍しく、真心から話しかけていた。


「大丈夫です。もう決めました。資料の通りなら本当に真心さんの下で働けるんですよね?」


「そうだね。君には真心についてもらうかな。まずは、マネージャーじゃないけど、裏の仕事を覚えてもらうのと同時に、真心と他のモデルさんを見て勉強して欲しいからね。」


「わかりました。なら、やらせてください。」


めいさんは真心の方を向いて答えた。


「よし。なら、こっちは君が一人前になれるように全力でサポートするから。そんな君に早速、頼みたい仕事があるけどいいかな?」


これからの日程と仕事内容について自分から説明した。すでに決まっている仕事は、愛とのモデル業くらいだが他の人とは全く異なった仕事内容になる。もちろん給料についても詳しく説明した。後は、真心に任せても大丈夫だと判断し、自分は会議室を出た。


「お疲れ様。あの子だったんだね。君がモデルに推薦したのは。」


父さんだった。会社の中ではなぜか自分のことを君と呼ぶ。ある程度距離を置いて自分を見たいかららしい。ここまで距離を置かなくてもいいのにと少し寂しい。


「そうです。意外でしたか?」


「いや、研修旅行中もあまり話さない子だったから。でも、真心には懐いている感じだったかな。」


「自分も驚きました。真心から話しかけていたし、真心の下につけることでモデルの仕事も決断したみたいなので。」


「君にはあの子がどう映ったかな?」


「初めてこの子の写真を見たときにうちのモデルにはいないタイプだと思ったので。経歴から見ても真面目で堅物。少し真心に似ているところもあるとは思っていましたが、内面は全く別ですね。真心は自分の中の感情を隠すことが苦手ですが、めいさんは完全に心をロックしてしまっている感じです。まあそれは後々解錠していく予定ですがあの子の本質はおそらく・・・」


「ああ、もういいよ。なんとなくあの子に似合う服のイメージはできたから。モデルとしての初仕事は愛とだろ?」


「そうです。そのためのデザインをこれからお願いに伺う予定だったのですが。」


「それなら問題ない。これからすぐに取り掛かるよ。できたら君に色付けを頼もうと思うんだ。2人分ね。」


「わかりました。でも、撮影は4ヶ月後になるので、ゆっくりで大丈夫です。自分の腕の状態を見て詳しい日程を決めるので。」


初めての撮影は自分も立ち会うようにしている。カメラマンの人にこの子のイメージを伝えながら撮影するため。写真のイメージは自分に任せられているのでチェックは怠らない。モデルの子の要望にも基本的に答えることにはしている。父さんの考えで『服は人が来て完成するもの。服は人を変える道具でしかない。服自体にそこまでの価値はない。』と言うことを会社全体で大切にしているので服のデザインはそのモデルにあったものにする。だからこそ性格もスタイルも違う様々な人が必要となる。完成した写真も自分がその子のイメージに合わなければ服から作り直す。あくまで服メインではなく人メイン。その人の人柄などが出ていなければ意味はない。だからこそ、自分が現場に必要になる。基本的に新人教育後の月一出勤時の自分の仕事は撮影のことが多い。


「愛との撮影にするのだろ?」


「そうです。いつも通りに愛の力を借りて、現場の緊張感を少し和らげてもらう予定です。自分ではそれはできませんから。」


「愛のことだけど来年うちに入って来たら、君の下につけるから。僕の下には真心がいるし、そろそろ仕事が増えすぎて首が回らなくなってくる頃だと思うから。」


「助かります。それも後々お願いしようとしていたことなので。」


「そうか。そろそろ終わりにするか。今日は家に帰るから。」


そう言うと父さんは自分に背中を向けて進んでいった。


「今日何か食べたいものは?」


「なんでもいいよ。まだ自分では作れないだろ。」


そう笑っていってしまった。


各部署に顔を出して本日の仕事はこれでおしまい。時刻は5時。真心の仕事を終わるまで待つ。30分後には、真心も終わり、真心の運転で帰った。途中スーパーに寄ってもらい、夕飯の買い物をした。家に帰る頃には6時を回っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ