第三十六話
授業から1週間後。それから隼人からは全く連絡がなくなっていた。もちろん、隼人の両親からの連絡はない。何かトラブルがあれば連絡してくるはずだからその辺は安心している。しかし、連絡が来ないのも少し寂しい思いもある。さくらがいなくなっても自分の授業は継続して行われている。先日の授業が保護者に好評だったらしく、これからも引き続きお願いをされた。さくらが自分に新しい居場所を作ってくれた。いつも通りに授業の準備をしていると、
「早くしないと間に合わないよ。」
聞き覚えのあると久しぶりに聞いた生意気な口調が後ろから聞こえた。
「隼人か。久しぶりじゃないか。」
内心心配でならなかったがそれを全面に出すとカッコ悪いので少しスマした感じで答えた。
「心配してたんじゃないの?花屋に寄ったら愛さんがいってたよ。」
「あいつ余計なことを。ああ、そうだよ。心配してたさ。」
「そっか。」
隼人の目は笑顔だった。
「で、今日は俺に用事でもあるのかな?」
隼人の表情が変わる。姿勢を正して自分に向けて頭を下げる。
「お願いです。僕に勉強を教えてください。」
少し驚いたがさっきの表情からどういった経緯でお願いしたのかはある程度理解した。
「俺にか?」
「ダメかな?」
「いやダメではないけど、もっといい人材を知ってるからそいつの方がいいかなって。勉強といってもいろんな分野があるだろ。俺は基本的に社会科しか教えることができないし、英語なんて雰囲気で答えてきたから人に、教えることなんてできないぞ。俺にって言うこだわりがなければそいつのこと紹介してやってもいい。ただし条件付きでね。」
「その条件って?」
「今は言えないかな。どうだ、この話乗るか?」
「わかった。信用する。お願いします。紹介してください。」
「そっか。わかった。今度の土曜日は空いてるか?」
「何があっても必ず開けておく。」
「ならできればどちらかの親御さんときてくれ。集合場所は花屋でいいや。そこに11時に迎えにいくから。」
「わかった。よろしくお願いします。」
なにがあったのか、さくらの手紙には何が書いてあったのかは聞かない。隼人の中で何か変わったのが目に見えてわかる。それが確認できただけで嬉しかった。




