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第二十九話

病院が近づくと手を離し、いつものテンションの愛に戻る。


「結さん。おはようございます。」


開店準備をして2時に店を開ける。最近は暑くてたまらなく、提供する紅茶もアイス仕様になっている。最初の方針とは変わり、セルフサービスのようになっていて誰でも飲むことができるようになっている。アイス仕様にしてから減りが早くなって1日に何回も入れ替える。人は増えたのだが、増えた人が愛なので結果的に、自分しか入れることができないので少し大変。


店をしめる片付け後に、


「愛。少しだけ待ってくれるかな?」


「わかったけどなるはやでね。」


「わかってるよ。」


さくらのことが心配でこうして仕事終わりに必ず行くようにしている。それを愛もわかっていて、必ず待っていてくれる。


時間はもうすでに6時を越しているがさくらの病室の前には下を向いた隼人がいた。毎日ではないが結構な頻度で閉店後隼人と会う。一応まだ中学生だから保護者が心配していないか気になる。ただ今日はさくらの保護者の方がいた。家族ぐるみで交流があるらしいので隼人の保護者には隼人がここにいることはおそらく耳に入っているだろう。


「渡邉先生。わざわざありがとうがございます。」


さくらのお母さんが話しかけてくる。


「いいえ。さくらは大事な生徒ですから。このくらい当然です。さくらの体調はどうですか?」


「峠は越えたみたいなんですがまだなんとも言えない状況らしくて。今朝、意識が戻りまして、これから面談ができるみたいなので先生もどうですか?さくらも喜ぶと思います。」


下を向いている隼人を見る。少しだけ手が震えていた。


「いいえ。自分は大丈夫です。さくらは自分より隼人と話したいことがあると思うので。その大切な時間を奪いたくないですし、自分も入ってしまうと時間が増えて、さくらの体にも負担をかけてしまうかもしれないので。」


「良いのかよ?」


隼人が自分に話しかけてくる。


「良いさ。俺のことなんか気にしなくて。それに最後ってわけじゃないからな。さくらが治ったらたくさん話すさ。そんなことよりそんな顔でさくらと会うなよ。せっかく大切な人と話せるんだから元気付けてやらないと。」


「わかってるよ。」


「なら良かった。では自分はこれで失礼します。」


さくらの保護者に一礼して自分はその場から離れた。さくらと話さなかったのは隼人や保護者の方に気を使ったというのは半分正解で、もう半分はもうすでにさくらとはあの時話した。自分の言葉もさくらの言葉もお互いに届いていたから。


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