第十八話
会社に着くといつもよりお出迎えが多い。基本的に愛にとってはみんな友達。就職先も迷うことなく父さんの会社を選んだ。理由は、みんながいて、たのしそうだかららしい。愛の能力ならもっといっぱい選択肢があったとは思うが正直嬉しかった。
「愛、荷物は俺の部屋に置いてきて。」
「了解。今日はルイくんいるの?」
ルイとは会社で唯一いる自分の部下で、義理の弟みたいな。正式には弟ではないのだが。17歳で高校に通いながら自分の下で働いてくれている。父さんが頻繁に行っている孤児院に服をプレゼントする時の手伝いをしているときに出会った。その当時は不登校でテストの時だけ学校に行き、点数をとって帰ってくる。学校側としたら嫌な感じの生徒だったらしい。こんな感じだから当然友達もいなかった。施設の中でもずっとパソコンをいじっていた。そのときにルイがやっていたのが自作のゲームだった。それもかなりの完成度。例えるなら一般的に売られている1500円くらいのアプリゲーム以上のクオリティーだった。ルイは中学生でプログラミングを完璧に理解していた。自分がルイをこの会社に誘ったのは才能があったのもあるが、このままだと社会に潰されてしまうと感じたから。当時から大人への不信感が大きかったルイ。すぐ近くにいる大人、孤児院の人にも心を開いていなかった。これから生きていく中で、人と関わりを持たないことは不可能。周りを拒絶して自分だけの世界に完全に入ってしまっていた。入ってしまっているうちはいいが、ふと周りを見渡して誰もいないことに気づいてしまうと猛烈な孤独感が襲ってくる。孤独が何よりも辛いことを自分は知っている。しかも、今現在の日本ではある程度学歴が要求されて、さらに不登校の過去があるだけで不合格にしてくる学校や会社がある。そんな価値観が凝り固まって柔軟性のない社会でこの子がうまく生きていけるとは到底思えない。そのときうちにプログラマーがいなかったこともあるので最初はちょうどいいなと思った。それから自分は大学終わりに毎日ルイに会いに行った。最初こそ逃げられたりしたが、自分のしつこさに疲れたのか話を聞いてくれるようになった。たわいないことから踏み込んだ議論まで、ルイとの時間は自分の中でだんだん特別なものになってきた。自分の過去についても話したし、真心や愛との関係も自然に話していた。どんな内容の話でも受け止めるように聞いてくれた。聞いていただけでなくルイ自身のことも話してくれるようになった。その時から自分の前で笑顔を見せてくれるようになった。毎日のように話していたら、ルイの方から自分を雇ってくれと要望があった。もちろん承諾して、孤児院にいることがよほど嫌だったのかルイは孤児院からうちの会社に宿を移した。とは言ってもその当時ルイはまだ中学生で正式に採用することはできなかったので、ひとまず自分の手伝いという名目で会社に住み込んだ。孤児院から中学生の段階で出て行ったことによって、手続きが色々とありルイは佐々木家の人間になった。でも、一緒に住むことは拒んでいた。1人の方が落ち着くし、今から家の中に入っていくのは勇気がいるそうだ。何度も説得したがひとまずルイの意見を尊重して別に暮らしている。家事はほとんど自分が教えたので料理も問題なくできる。というよりほとんどのことが見ただけでできていた。
「今日は、高校があるからいないよ。最近学校も暇で退屈なところじゃなくなってきているみたいだしね。」
ルイは今、父さんの知り合いの高校に通っている。不登校だった子も受け入れてくれるような普通科の私立高校で自分たちの母校でもある。
「そっか。久々に会いたかったな。」
「家族なんだからいつでも会えるさ。今度うちに連れていくから。」




