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蠱毒  作者: 夏至崎洋天
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自己愛の化け物 ~誕生と成長~

勢いと思いつきだけで書いてみたのですが、結構楽しいですね。

 私はN。VX大学にいる冴えない大学生3年生だ。悩みがあるとすれば、私には特長がないと言ったところか。勉強や部活などでこれと言った成績を出したこともないし、かといってゲームで目立った成績を出したり再生数の高いチャンネルを持っていたりもしてない。何か難解で高尚な趣味を持ってる訳でもない、なんならこれと言った趣味もない。そういえば彼女とか親友と言う類も居ないので、恐らく私は1位だとか唯一性だとかいうものにつくづく縁が無いのだろう。強いていうなら、今のところ浪人も留年もせず人生を最短距離で生きているということくらいか。そんなの自慢にもならないが。


 さて、そんな私でも何かでかいことをしたい。とてもしたい。人生1発当てたいのである。私の周りの人間はこれを知って何を言っているんだと思うかもしれない。実際これを大学で話したら笑われたのだがーーまぁ普通の人間に話したので妥当な反応だろうーー。しかし私という人間を唯一無二の人間たらしめるためには、やはり何かを成し遂げなければならなかった。無謀とも思えたとしても私にはやる道しか残されてなかったのだ。


 そんな自分を変えるためにはどうするか?変えるなら自分の行動か環境だろう。そんなわけで先ずは筋トレをやってみた。2日だけ持った。次にプログラミングをやってみた。これは1週間持った。次は理想のキャラを演じた。これは1日と持たなかった。というか1時間でボロが出た。

 やはり環境なのだろう。自分を変える近道はやはり、環境を変えるべきなのだ。そうして、私は自分を高めるために意識の高そうな学生団体に入ることにしたのだった。

 この選択が間違いだったことに気づいたのはしばらくたってからだった……



 私は学生団体アイゾラ主催のイベントに参加した。イベントの内容は手元の10万円を増やす方法を考えてグループで話し合い、団体の人にフィードバックをもらうものだった。ビジコンをやったことのある人には馴染みがあるだろう。さて、そこで先ず感じたのはファッションが凡人とは違うのだ。みんながカッチリ決めている。まるでそこはクリエイティブな会社であるかのようだった。そのときの私は「当たりだ!」と思った。ここなら自分を高められると確信したのであった。

 そうそう、彼らは語彙力が高かった。彼らの会話には私の知らないような用語がポンポン出てきた。例えば、アジェンダやコミット、ペンディング等々、特にレッドオーシャンとブルーオーシャンとかは本当に分からなかった。そんな語句を彼らは普段の会話に上手く織り交ぜて使っていたのだ。彼らは私にとって非常に頭が良く、理知的に見えた。何より彼らは遥か高みにいながらに日々向上するために努力を怠らないのである。彼らがものすごく輝いて見えた。


 フィードバックの時間だ。結果として私のアイデアはグループで採用され、団員の人にもかなり誉められた。少し実現性が低かったようだが、団員には面白いと感じられたようだ。もしかして私には才能があるのだろうか。ここでなら輝けるのだろうか。


 そんなことを考えていると、団長に声をかけられた。

 「君には才能があるよ!是非うちに来て欲しいな」

 この団体には頭を下げてでも入ろうとしていたがまさか団長直々にオファーされるとは。私も捨てたものではないな。

 そして、私の答えはもちろん「Yes」だ。


 かくして私は学生団体アイゾラの一員となった。


--


 さて、入団から2カ月たった。非常に充実していると思う。私もこの素晴らしい団体の一員になれたのだ、充実していなければ困る。なんせ、月1万の会費を払っているのだ。

 ところで肝心の活動内容だが、基本は週1のミーティング。団員は何人かでグループを作ってプロジェクトを進める。ミーティングではその進捗報告と、団体の方針についての話し合いがメインだ。

 そうそう、私のプロジェクトは大学生の就職支援だ。面接練習をしたり、会社と学生のマッチングをしたり、あるいはこの団体で経験を積ませて強い人材を育成したりする。まさに社会に価値を与える素晴らしいプロジェクトだと思う。まだ2ヶ月なので成果は出ていないが、着実に目標に近づいていると思う。急がば回れ。大事を成すのに急いてはいけないのだ。

 私はこの2ヶ月本当に頑張っている。必ずいずれ結果は出る。何しろ月から金まで休みなくカフェでパソコンと向き合い続けているのだ。ここまで努力したのだからいずれ報われる筈だ。

 大学はどうしたのか?そんな疑問もあるだろう。しかし大学の授業ははっきり言って出席しなくても単位は取れるし、社会では役に立たないだろう。はっきり言って真面目に勉強しているやつは要領が悪いというか、無駄な事をしていると言わざるを得ない。要領良く、効率良く、両立するためには無駄を削らなければならない。がむしゃらに走るだけではゴールにはたどり着けないのだ。

 ところでなぜカフェで作業するのか?それは簡単だ。私と同じように革命を起こそうとしている人が周りにいるのだ。何より、店内がオシャレなのでモチベーション向上につながる。以前にも言ったが環境は大事なのである。

 しかしながら最近はそんな周囲のレベルも私に比べて低いと感じてきた。いや、私が成長したということなのだろう。いや、やっぱりそれにしてもレベルが低い。なんせ私の言ったことを全く理解出来ないようなのだ。何しろ彼らは語彙力が低すぎる、アジェンダの意味もわからないのだ。レッドオーシャンとかブルーオーシャンとかになるともうちんぷんかんぷんなのだろう。ひととおり私がしゃべると真っ赤になって的外れな指摘をしてくる。

 この間なんか「きみは言っていることが意味不明だね、分かりやすくしゃべれないのかい」とか言われた。私はそこまで難しい言葉を使ってないし、スライドも用意して分かりやすく説明した筈なのだが。アジェンダもスキームもわからないのか、かわいそうに。そんなことを口に出したら怒ったのかどこかへ去ってしまった。やれやれだ。表面だけ取り繕ってる意識高い系は実力が伴わない。だからマウンティングに興じる上に、マウンティング出来ないとなると顔を真っ赤にして訳のわからない言葉を並べてまくし立てるしか出来ないのだろう。

 そんな奴らを私が導いてやるのも最近の仕事なのだ。まぁ彼らが無能すぎるせいで成果は出せていないが。なんだかんだ実力の伴わない意識高い系しか居ないみたいだし、もうこのカフェも潮時かな。

 私のせいではないさ。何故なら団体の人は分かりやすいと言ってるからね。私が優秀なのは保証済みなのだよ。


--


 さらに2ヶ月たった。いまだに成果は出ていないが、間違いなく前進している。石の上にも三年。大事を成すには忍耐力も必要なのだ。

 大学の連中は最近授業に出ない私を心配しているようだった。しかし私は授業よりも大事なことを見つけたのだ。彼らにはわからないのだろうが。いや待て、彼らも知らないだけなのだろう、導いてやらねば。そうだ、それが私の使命なのだ!

 使命感に駆られて私は団体を紹介した。私のように成長出来る。こんなに素晴らしい団体、入らない選択は無いだろう。

 しかしながら彼らはバカなので入らなかった。それどころか私を否定してきたのだ!

 「そんなことをやっても意味ないよ」

 「どう考えても騙されてるよ、自分を見直したら」

 そんなことをほざいていた。まぁ所詮平凡にしか生きられぬバカの考えなのだろう。いずれ気づいてもそのときは遅い。仕方ない、彼らは救えないのだ。それにバカの相手をするだけ時間の無駄なのだ。導くのも大事な事だが、資質を見極めなくてはただのロスにしかならない。

 

 そういえば近々イベントがあったな、これはチャンスだ。イベントに行ってさらに視野を広げるのだ。そう、私は高みにいながらにして更なる高みへ行くための努力は惜しまないのだ。ついでに間違って残念な団体に入ってしまった人間を導いて救ってやるとするか。



 さて、イベントの日がやってきた。周りの人はやはりファッションだけはしっかり決めてきている。しかしながら表面だけカッコ良く見せている人間が大半なのだろう。せめて一人くらい私と高め合うにふさわしい人間がいるとよいのだが。まぁ主催者はベンチャー企業の社長らしい。少なくともその人と仲良くなればこのイベントは成功だろう。いや、違う。私はそれすらも踏み台にするのだ。間違ってはいけない、私は特別なのだ。いずれ頂点に立ち、人々を導く男なのだ。


 イベントの参加者だが、案の定、いや期待はずれと言って良いほどレベルが低かった。人間の質からして悪い。奴らは私にまずマウンティングを仕掛けてきたり、自分がいかにすごいか自慢をしてきた。勧誘してくるスパム人間がマシに思えてくる。まぁ結局最後は、全員まとめて私が論破して黙らせるのだ。そして私がしていることをそれっぽく説明してみせるだけで彼らは群がってきて私に媚びてきた。まぁ中身が無いような奴らだが、私の団体に入って少しはマシになるのだろう。せいぜい頑張って欲しいものだ。まぁ論破した後に泣き出すような女もいたがメンタルも弱いと来たらもう救いようがないな。いや、顔と身体は良いから私が使ってやっても良いが。

 論破して気分が良いかって?そんなことはない、気分は最悪だった。バカの分際で私に噛みついて来るなど論外なのだ。だがそれを救ってやるのが私の使命なのだ。手を抜くわけにはいかない。


 イベントの参加者にはうんざりしたので主催者の社長と話をすることにした。先ずは名刺交換だ。繋がりを持つことは大事である。そうそう、うんざりしたとは言ったが一応参加者の大半には名刺を渡してある。いざというときに使える人脈かも知れないしな。

 そしてビジネスの事や、活動の事について語り合った。やはり、会社を立ち上げて回しているだけあって話していることはまぁまともだ。しかしながら見る目は無さそうだな。私の素晴らしい経歴にも考え抜かれたビジネスプランにも興味が無いようだった。いや、見る目がないと言うよりかは私が素晴らしいので理解しきれなかったのだろうか?

 最後は私から逃げるように去っていった。きっと私が素晴らしいのでプライドを傷つけてしまったのだろう。


 今回もあまり収穫は無かったが私が優れていることは再認識できた。しかしこうなるとより成長するためにはより大きな舞台へ向かう必要がありそうだ。

 イベントが終わったあとはコーヒー片手にパソコンをいじるのであった。万能感と勝利の余韻に浸りながら……


初めてなので色々と良くわからないですが、気に入って頂けたら幸いです。

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