第11話【新居の相談】
森の中の地下にあるクレアの秘密基地で鎖に拘束されている俺は眠り姫な彼女が目覚めるのをひたすらに待っていた。
何時間過ぎたか分からない。
この秘密基地は時計も無いし、地下だから窓も無い。
なので日差しで時間が計れないのだ。
まだ、夜なのか朝なのかも分からなかった。
故に俺は鎖で拘束されたまま、ひたすらにクレアが目覚めるのを正座で待っていた。
俺は少し離れた場所から眠り姫を見詰めている。
クレアは寝顔も美しい。
まあ、たまには美人の手で拘束されての放置プレイも悪くないかな。
ドキドキな放置プレイ──。
ただ、それだけが救いだった。
「ううん……」
『おっ!?』
やっと森の眠れる美女が目覚めたぞ。
「もう少し寝よ……」
二度寝したぁぁあああ!?
「やっぱり起きるか、お腹も空いた……」
ああ、良かった。
起きてくれるようだな。
『おはよう、クレア』
また二度寝されたら堪らないから、まだ眠たそうな眼を擦るクレアに俺は寝起きの挨拶を掛けた。
「あら、アナベル、おはよう。もう起きてたのか?」
『俺は睡眠無効スキルのせいで寝ないから』
「ああ~、そうだったな。ところでその格好は何事だ。何故に鎖で縛られている?」
『お前が拘束したんだろ!!』
「そうなのか、覚えていないし、私にはそんな趣味はないぞ?」
『覚えてないのかよ!?』
「まったく記憶にない」
『それよりも、拘束プレイの趣味はないのかよ!?』
「ない」
『もしかして、放置プレイの趣味もないのか!?』
「ない」
『ひでぇぇえええ!!』
あんまりだ!
俺はクレアがそう言う趣味の人格かと思って耐えていたのにさ!!
クソ、寝ぼけているのかな!?
『とにかくだ、ほどいてくれ!』
「分かったわ」
俺は数時間ぶりに拘束を解かれた。
クレアは俺の鎖を解くと水瓶で顔を洗う。
その姿を俺は背後から眺めていた。
ああ、プリティーなお尻だな。
『なあ、クレア。もう朝なのか?』
「ああ、朝だ」
『何故に分かる。外も見ないでさ?』
「普通は分かるだろ?」
『普通は分からんぞ』
『そんなものか?』
「そんなものだ」
ダークエルフって体内時計が超正確なのか?
まあ、いいか……。
俺とクレアは秘密基地を出て外の空気を吸いに行く。
「んん~ん、新鮮な空気だな。気持ちいい」
朝日を浴びるクレアは背筋を伸ばしながら深呼吸していた。
俺も真似る。
だが──。
『あっ、俺、息してねぇ……』
「まあ、ゴーレムだからな」
唐突に俺の脳裏にアナウンスが流れる。
【呼吸無効が追加されました】
おい、今さ、思い出したかのようにスキルを追加したよね!?
作者が忘れてたな!
ぬぬ~、まあ、いいか……。
ちっちゃい事は気にしない、ワカチコワカチコ~。
それより──。
『なあ、クレア。これからどうするの?』
「まずは朝ごはんかな」
『ちゃうちゃう』
「んん、なんだ?」
『これからのことだ。ここに住むのかってことだ?』
「ああ、そっちの話しか」
『どうするんだ?』
「別の家に住むぞ。ここはあくまでもマリアンヌ様の館から貴重な書物を避難させて置いただけの隠れ家だからな」
『じゃあ、どこに住むんだよ?』
「もう少し森の奥に進むと、洞窟があるから、そこに家を建てるぞ」
『洞窟に家か?』
「ああ、そうだ。家を建てたら、ここの荷物も移動させる」
『これから家を建てるのか?』
「そうだ」
『お前は家を建てられるのか?』
「建築方法は本で読んだ。だからなんとかなるだろう。この秘密基地も私一人で作ったからな。まあ、家が完成するまで荷物はここに隠して置くがな」
『これから家を建てるのかよ。しかも建築の素人なのに……』
「指示は出すから、力仕事はゴーレムの貴様に任せるぞ」
『俺も作るのかよ……』
「当然だろ。お前も一緒に暮らすのだから、手伝うのは至極当然だ」
『えっ、俺も一緒に暮らしていいのか!?』
「勿論だ。この秘密基地は二人で暮らすには狭いだろ。家が完成したら、傀儡学の勉強だ。貴様にマリアンヌ様が築いた傀儡魔法をみっちり伝授する」
ゴーレムとか傀儡魔法とかはどうでもいい。
このオッパイと一緒に暮らせるなら願ったりだ。
年中胸も尻も眺め放題じゃあねえか。
そんな楽園生活は大歓迎だぞ。
「だから広い家を作るのだ」
『やった~、同棲生活だぁー♡』
なんかすげぇ~テンションが上がってきたぞ。
「とりあえす朝食を済ませたら洞窟を下見しに行くぞ」
『ああ、分かったぜ!!』
俺は親指を立ててテンションの高さを表現した。
そんな俺を無視してクレアは食材を取りに秘密基地に戻って行った。
俺も金魚の糞のように美尻を追いかける。
そしてクレアはバックパックを漁りながら俺に訊いて来た。
「貴様は、何も食べないよな?」
『あっ、そうだね……』
口も無いし、腹も減ってない。
何より俺は餓死無効だ。
クレアはコーンの粉末をお湯で溶かすと黒いパンを齧りながらスープを啜る。
朝食を食べる間もクレアは本を読んでいた。
『本を読みながら飯とは行儀が悪いぞ』
昔俺は飯を食いながら漫画を見ていたら親父にネリチャギを脳天に落とされたものだ。
クレアは本を読んだまま答える。
「建築の予習だ」
『なるほど。それは大切だ』
そして俺たちはクレアが朝食を済ませると秘密基地を出て洞窟を見に行った。
クレアの話だと件の洞窟は、秘密基地から歩いて30分ぐらいのところにあるようだ。
森の中を先頭で進むクレアが唐突に片膝を落とした。
何やら地面を探るように凝視している。
『どうした、クレア?』
クレアは周囲の地面を見渡しながら言う。
『最近洞窟の様子を見には行ってなかったのだが、どうやらコボルトが住み着いて居るようだな」
『コボルトって、頭が犬の亜種だよな。何故にコボルトが居るって分かるんだ?』
「この辺にまで足跡が残っている」
『足跡か~』
「ゴブリン同様に雑魚だが、何せちょくちょく現れる。いつの間にか洞窟に住み着いたのだろう」
『じゃあ、蹴散らしちゃおうぜ』
モンスターを狩ればボーナスポイントが獲得できる。
それは願ったりである。
「問題は、少し数が多いな」
『何匹ぐらい居るんだよ?』
「足跡だけではハッキリとは言えないが、推測するに10匹以上は居そうだぞ」
『10匹以上か……。俺たち二人で戦えば勝てないのか?』
「10匹ぐらいなら行けるな。だが、20匹以上だとつらくなるぞ」
『じゃあ、作戦をキッチリと立てようぜ!』
俺は親指を立てながら微笑んだ。
だが、俺には表情は無い。
その事に俺は気付いていなかった。
心中で満面の笑みを気取る。




