三題噺第34弾「海」「ヤカン」「バカな可能性」
ザザーン、ザザーン。
“海”から波が定期的に押し寄せる。
ザザーン、ザザーン。
それがやがてさざなみとなる。
ザザーン、ザザーン。
それがやがてつなみになる。
ザザーン、ザザーン。
人々は逃げ惑わない。そこに住宅地はないから。逃げ惑う人がいないから。つなみが起こったのは無人島だったから。
そんな無人島にも人はいた。
サーフィンをやりにきた人がいた。
つなみの上でかっこよくボードの上に乗る人がいた。
しかしそんなのは“バカな可能性”だった。
サーフィンをしていた人はあっけなく波にさらわれた。
“ヤカン”が音を立てている。
ピュー、カタカタカタと音を立てている。
沸騰した水の水蒸気がヤカンの蓋を押し出そうとしている。
どんなに押し出そうとしても重力には勝てなかった。
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