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1.怪しいお酒に注意 前編

前編は以前投稿した話と同じものです。


「ミアさん、頼まれてたもの手に入りましたよ」 富貴江(ふきえ)が1ℓほど入りそうな陶器の瓶をミアに手渡した。


「わぁ、有難うございます。流石は富貴恵さん、こんなに早く手に入るなんて!」 いつもクールなミアが頬を上気させて喜んでいる。


「昨日、三の兄上と一の姉上がいらっしゃったから、持ってきて頂いたのよ。交換の時期だったから、丁度良かったわ」



 富貴恵の家族が離れに逗留しているのだ。 幸羽もご挨拶をしたのだが、二人とも品のいい方たちで、いかにも「神様!」という雰囲気ではなかったのでホッとした。 

 気さくに話しかけてくれ、手土産のお菓子まで頂いて返って恐縮したくらいだった。 

 ちなみに、富貴恵の異母兄姉である御二人はご夫婦だ。 元の世界の神様事情は知らないが、こちらの神様は同母の子供同士でも、力と相性が合えば婚姻可能なんだとか。


「それ、なんですか?」 また何か不思議な物だろうかと、幸羽(ゆきは)は興味を惹かれて尋ねる。


「御神酒よ。この間、新酒に換えたから、これは一年間祝詞を上げた前の物なの」


「たっぷり祈りが込められているのよ。中々、手に入らないのよ! ホントに富貴恵さんに感謝だわ!」 嬉々としてミアが答える。


「後は…… 厳命堂に催促しなきゃね」 


 へぇー、そんなものがあるのかと、口元に指を当てて思案しているミアを眺めていると、のっそりと二日酔いの朗が起きてきた。


「はぁー、幸羽、茶をくれ。渋いやつな」 頭を抑えながら呻く。


「朗さん、飲みすぎ! どの位飲んだんですか? 」 

お望み通り濃いお茶を煎れてやりながら、幸羽は苦笑する。 


 この館の住人は皆、酒豪と呼んでいいくらい酒が強い。 それが二日酔いって、昔前に流行った

「どんだけ~」とかいうフレーズが、頭をよぎる。


「うーん、締めに呑んだ、ウイスキーの焼酎割が良くなかったかもな」

 渋茶をすすりながら言う男に目を見開く。


「はぁ? なんでそんなもんで割るんですか! 」


「割もんが切れたんだよ。取りに行くのが面倒だったから、歩の飲んでたやつで割ったんだよ。味はそう悪くなかったぜ」


「お酒をお酒で割るって…… でも一応カクテルになるから、いいのかしら…… 」

 眉をひそめながら、酒について無知な幸羽は首を傾げる。


「ほっときなさいよ。自己責任ってやつでしょ」 

笑うミアを横目で睨んだ朗が、ミアの持つ瓶に目を止めた。


「オイ、それって、まさか例のあれか? 」

 目をむいて食いつく朗にミアは鼻で笑って、見せびらかす様に目の前で瓶を揺らす。


「ふふ~ん、いいでしょう? 富貴恵さんが手に入れてくれたのよ」


「ホントかよ、なぁ、俺にも一口飲ませろよ」 


「もう、何言ってるんですか、二日酔いの人が!」 ミアにすがる朗に、幸羽は呆れてしまう。


「迎え酒ってのがあるんだよ。 それに此奴は特別なんだ。なあ、ミア、意地悪すんなよ」

 幸羽に言い訳をして、首を振るミアになおも強請る。


「あら、あら」 富貴恵はどちらの味方もせず微笑んで見ている。


「別に意地悪してるんじゃないわよ。これは種酒にするの。だからダメなの」


「種酒?」


「そう、これに色々な物を漬け込んで精酒(せき)を作るのよ。今飲んじゃうわけにはいかないの。わかった?」 

 幸羽に教えながら、ミアは最後の方は、朗に言い肩をすくめた。


「んじゃ、できたら飲ませろよ」 諦め悪く念を押しされて、ミアは困った顔をする。


「う~ん、飲ませてあげたいけど、それも無理なのよね。作るのは女性用の精酒なのよ。だから、悪いわね、朗」


「なんだと、そうなのか? それじゃなきゃダメなのかよ。はー、なんだよ、しょうがねーな」

 がっくりと肩を落とした朗を、そんなに大騒ぎするような酒なのかと、幸羽は興味深々で瓶を見つめた。


「んで、何作るんだかしらねぇが、中身はどうすんだ?」

 諦めて、冷めたお茶を飲み始めた朗の湯飲みに、幸羽は熱い茶を継ぎ足してやる。


「厳命堂に頼んであるから、そろそろ集まるでしょう」


 精酒(せき)とやらは薬用酒のような酒らしい。 だが、薬屋に依頼するような物なら、材料はたぶん変な物に違いない。ということは、できるお酒も怪しい酒になるはずだ。 

 

 うん、もし勧められても絶対飲まないようにしよう。 幸羽は密かに決心した。



夕方、一月ぶりに薬屋が戻ってきた。ミアに何やら怪しげな包みを渡している。


「あと、一角獣ユニコーンの角は僕の管轄外。他を当たって」 ぶっきらぼうに言い捨てる。


「あら、そうなの。じゃあ、レオンハルトね。 だけど、この間マチルダになったばっかりよね」    形のいい眉を顰める。


 女の宝石屋だと不都合があるのだろうか、イヤ、その前に一角獣がいるのか。

 幸羽がこっそり感動していると、朗が揶揄う。


「何だ、幸羽。 面白いことでもあったか? ひとりでニヤニヤしたりして」


「えっ、ああ、いえ、こっちには不思議な生き物が多いんだなって、思って。 一角獣ユニコーンには私とかでも会えますか? 」

 好奇心いっぱいで幸羽が答えると、慌てて歩が口を挟む。


「ええっ、ダメだよ、危ないだろう。 結構、獰猛な獣なんだよ。 でも、まぁ、幸羽ちゃんなら平気かな? 」 


「別の意味で危険だね。奴の嫁になりたいなら別だけど」

 ボソッという薬屋に、どういう意味かと幸羽は首を傾げた。


 皆の説明によると、この世界の一角獣ユニコーンは野生の獣で、かなり獰猛らしい。 その角は個体が持つ生命力が具現化したもので、加工次第で宝石にも薬にもなるんだとか。


但し、個体が死ぬと角は消えてしまう為採取が難しい。

通説通り、乙女しか寄せ付けないため、乙女がキスを捧げて角を譲って貰うしか、手に入れる方法がないらしい。


 おまけに、好みの乙女だった場合は、嫁にするため攫われる危険があるのだとか。

嫁にされると臭いがついて、一角獣ユニコーン臭い女になってしまう。


 それは一種のフェロモンなので男性にモテるようになるため、あえて攫われたがる乙女もいるそうだ。

どんな臭いなんだろう?



 まさか、一角獣がセクハラ行為をする誘拐犯だなんて…… 。

今まで抱いていたイメージが崩れて、すごくイヤな生き物に思えてきた幸羽は、聞かなきゃ良かったと少し後悔した。



 ちなみに、男の宝石屋の方が良いのは、協力してくれる女の子を丸め込むのに都合がいいからだそうだ。

 ミアさんは意外と黒い? 内心慄いた幸羽だった。









外出自粛で図書館は閉館しているし、本屋にもBo○○○ffにも行けず悲しい日々を過ごしています。

今ではネット小説が心のオアシスです。

同様の方いるんじゃないかと思います。 よ、読む物が足りない……


なので、自分も拙いお話ですが投稿してみました。短いですが活字の足しになればいいのですが。



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