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第五話 へん☆しん レオセヴン

私の名前は優桐ななみ!

この春から大洋高校の1年生!

そんなどこにでもいる普通の女子高生……


……の、はずだったんだけど。

私には誰にも言えない秘密があるの。


入学式から一ヶ月。

ある程度、教室での立ち位置も決まって、

新しくできた友達とおしゃべりしながら、平和な女子高生ライフを満喫していると。


「ポンポン!ノイヅが出たポン!」


私のカバンについてるトラのマスコット"レオポン"が突然喋り出した。

「うわっ!ごめんね!ケータイが!!」

友達に言い訳しながらカバンをつかんで廊下に飛び出す。


人気のないところを探しながらレオポンと小声で会話をする。


「もう!学校では喋らないでって、いってるでしょ!」

「緊急事態だポン。それに休憩時間で周りも騒がしかったし大丈夫だポン」


そういう問題じゃないの!と、レオポンに文句をいいながら、空き教室に入ってカギをかける。


「さあ、いそいで変身するポン!」

「はいはい。わかってるわよ。」


何を隠そう、

この私、優桐ななみは、

変身して悪いヤツをやっつける美少女戦士なのだ!


レオポンから太陽の形をした宝石、

サンストーンを受け取ると、それを太陽にかざしてポーズをとる。


「プリティーぃ♡」

――ここでウィンク!


「キューティーぃ☆」

――手をハートの形にしてキメポーズ!


クルンとターンして……


……ベルトにサンストーンをセット!


金色の光に包まれた私の身体が急成長。

何処からともなく黄金の鎧が現れ、私の身体に装着されて行く。


最後に私の顔をフェイスマスクが覆い、後頭部からタテガミが伸びる。


マスクのボイスチェンジャーで、すっかり低くなった声で、俺は叫ぶ。


「チェンジ!レオセヴン!!」



「……さっきのポーズはなんだポン?」

「せめてもの抵抗だ」


そう、俺は魔法少女的なヤツを期待してたのに、

特撮ヒーローみたいな格好をさせられた上、

政府の特殊機関に雇われて、敵《ノイヅ》と戦っている。


「場所はわかるポン?」

レオポンに言われ、タテガミに神経を集中する。


「おそらく駅の方角だ」

俺にはノイヅを感知できる能力がある。


……が、今は"ノイヅがいる"と言われてから

集中してはじめて、大体の方角と距離がわかる程度だ。

レオポンいわく、もっと経験を積めば

変身していなくてもノイヅの気配を感知できるようになる……らしいが。


「じゃあ、さっそくゆらぎに入るポン」

ゆらぎ、それはこの世界に発生したほんの僅かな"ズレ"、所謂パラレルワールドだ。

ただし、そのズレ幅があまりに小さいためにこの世界とほとんど変わらぬ世界が広がっている。

唯一違うのは、そこに"意志のある生命"は存在しないという点。

人も、動物も、虫でさえもそこには存在しない。


……奴らを除けば。

数年前にゆらぎの中に突如として現れた、

人をゆらぎに引きずり込んで捕食する存在、ノイヅ。

奴らを倒せるのはゆらぎを自由に出入りでき、

レオセヴンに適性のある俺だけ……ということらしい。


ゆらぎに入った俺たちは屋根づたいで一直線に目的地を目指す。



「――いたぞ!あそこだ!」


少し高い建物の屋根の上に立つ俺たちから、少し離れた路地にノイヅを視認した。


「なんだ?これまでの奴らとは違うぞ……」

これまで俺が相手にしてきたノイヅは基本的にスライム状だったが、

このノイヅは、見たところ4足歩行のようで、

外見上は野犬のようにも狼のようにも見え、様々な動物の特徴を兼ね備えているようだった。


そしてなにより、

このノイヅは俺が本能的にノイヅを感じられるように、

奴も我々を感知できる能力があるようで、俺が奴を補足した瞬間、

奴もこちらに気づいて臨戦態勢をとっているのがわかる。


と、一足飛びで近くの屋根の上に飛び乗ってきた。

いままでの奴らならそのまま無策で突っ込んでくるところだが、

どうやらそこそこの知能があるらしく、お互い睨み合ってこう着状態に陥った。


――ただし、敵はジリジリとこちらに近づいてきている。


このままではこちらが不利だ。

「レオポン!ルナストーンをくれ!」


フォームチェンジするために、レオポンに叫ぶ。

この状況を打開する為にはリーチの長い光剣を使えるルナフォームになるしかない。

と、思ったのだが。


「今回はコレをつかうポン!」


カバンから外れて近くの空中を漂っていたレオポンは、

いつものルナストーンではなく、青色の円型の石を投げてよこした。


「こいつは?」

「それは、マーキュリーストーン。新しく完成したフォームストーンだポン!」


事前にテストぐらいさせろというものだが、言っている暇はない。


セヴンバックルの追加コネクタのカバーを開いて、

マーキュリーストーンをセット。


エネルギーバスをつなぎ、

サンストーンを回して連動回転させる。


ベルトからでた青い光が装甲の表面を伝って全身を覆う。


――すると、どういう理屈か、

全身の装甲が青みがかり、

心なしか丸みをおびた形状に変化した。


動きの止まった俺を見て、好機と思ったのか、

ノイヅが牙を剥き、喉元をめがけて飛びかかる。


咄嗟に左腕に食らいつかせ、右腕でパンチをお見舞いする……


……が、いつもと手応えが違う。

まったくパンチが効いていない。


「このフォーム、弱くなってないか!?」


噛み付かれている腕の装甲も

メキメキと音を立てていて、今にも噛み砕かれそうだ。


「マーキュリーフォームは全身から水を出せるポン!」


レオポンのその一言を聞いた瞬間、

マーキュリーフォームの使い方を理解した。


噛み付かれている腕から放射状に水を放出し、

ノイヅを引き剥がして、

右腕の下にあるノズルから圧縮した水流を飛ばしてノイヅを押し流す。


「水!!使えるじゃないか!!」


「正確には水ではなく大気中の水分に電流とストーン自身の持つエネルギーを加えて体積を増幅させ……」


「そういうのは今はいい!"水を操るフォーム"で充分だ!」

解説モードに入ったレオポンを遮って戦いに集中する。


このフォームはおそらく殆どのエネルギーを水を操ることに回している。

だから装甲が弱くなって、パンチ力も落ちているのだろう。

ならば、とるべき戦法はひとつ。


俺は指にあいたノズルから出した水を、

手のひらで小さく圧縮し、ノイヅに向かって立て続けに射出した。


当然、ノイヅはそれを避けようと動く。


だが、所詮は見た目通り獣程度の知能。

回避した後の着地点は予測しやすい。


着地のタイミングを見計らって本命の攻撃。

何重にも圧縮した水に回転をかけて打ち出す。


命中。


勢いよく吹き飛ぶノイヅ。

たかが水。だが、圧縮したそれは、凶器と化す。


相当なダメージを与えたはずだが、

他のノイズ同様、物理的ダメージにはそれなりの耐性があるらしく、

身を翻して、ふたたび喉笛を狙って飛びかかってきた。


「ガード!ウォーターフォール!!」


景気づけに今決めた技名を叫びながら、

目の前に下向きの水流壁を出現させ、

飛びかかってきたノイヅを地面に叩きつける。


キャインという犬科動物特有の鳴き声をあげ、地面に伏すノイヅ。

しかし、その風貌は地球上のどの動物よりも凶悪な顔をしていた。

距離をとって、唸り声をあげるノイヅ。


俺は、小さな水の球を無数に生成し、ノイヅめがけて、

ツブテのように降らせる。

それ一つ一つの威力は低いが、

広範囲に落ちる水球を避けようとすればするほど、ダメージを負う。


これまでの経験から、

ある程度ダメージを与えたノイヅは動きが鈍ってくる。

その状態の時に何らかの方法で、

外部から強大なエネルギーを与えてやることで奴らは消滅することが解っていた。


そして、


――その状態が「今」だ。


ノイヅの動きが鈍ったことを確認した俺は、

ベルトの中央にはまっているサンストーンの縁、

ギア状の部分に手をかけ、半回転させる。


手を離すと逆回転とともに

サンストーン・マーキュリーストーンのエネルギーが

最大出力で全身に放出される。


そのエネルギーを両腕に集め、一撃必殺の技を編み出す。


「いくぞ!ゴッド・ハンズ・トルネード!!」


腕の装甲の隙間に配置されたノズルから出る水流で、

何本もの竜巻をつくり、それらを束ねて巨大な竜巻を生み出す。


そして、

俺の腕から真っ直ぐに放たれた竜巻は

ノイヅを捕えると

空に向かって上昇し、


――爆散。


ノイヅは水しぶきと共に消え去った。


「――イコライズ完了だ」


ノイヅの消滅を確認した俺は

マーキュリーストーンとサンストーンを

セヴンバックルから外し、変身を解除する。



 「はぁ~。やっと終わったわね。」

ようやく暑くるしいスーツをぬげて、スッキリした。

誰もいないゆらぎの世界の空気がおいしい。


「あっ、こら、ゆらぎを出るまで変身解除しちゃダメだポン!」

キケンだ!とか、屋根づたいに帰れない!とかなんとかレオポンが言ってるけど、

危なくなったらまた変身したらいいし、どうせ帰っても授業だし、急ぐ必要ないよね。


「帰りは歩いて帰るからいいの!それに、公欠にしてくれるんでしょ?」

なにしろ私は政府のために働く特別公務員らしいからね。

命をかけて戦ってるんだもの。それぐらいしてもらわなきゃ。


まあそれはそうだけど……と、

なにやら不満そうなレオポンは放っておいてどんどん歩く。


「こっちのほうって一回もきたことないなぁ。あっちの路地から帰ってみよう!」

「そういうのは外の世界でやるポン!!」



……こうして、今日も世界の平和を守っちゃたのでした!まるっ!

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