第3話
不定期です‼︎よろしくどうぞ‼︎
美琴の高校の校門に立っているのは、紛れもなくタソガレ探偵喫茶の店長……萩原有人だった。
その事実に美琴は、驚愕していた。
(………萩原さんって……高校生だったのっ⁉︎)
店長と言うくらいだから、てっきり成人済み……低くても大学生だと思っていた。
だから、ほぼ同年代だという事実に驚いたのだ。
「誰か待ってるのかな‼︎めっちゃイケメンだよね‼︎」
女子生徒達は浮かれ気味だし、こんな状況で彼に声をかけたら面倒ごとになる予感がした。
美琴は、裏門から逃げようかと考えたり……でも、今後、どうやって連絡を取るかとかを考えたりして動きが止まってしまう。
いや、それ以前に美琴に用があって来ているとは限らない。
他に誰かを待って………。
「田村さん、いる?」
だから、教室の入り口から声をかけられた美琴は反応に遅れてしまったのだ。
そこにいたのは余り目立たない感じの男子生徒。
確か同学年ではあるけど、接点はないはずだ。
彼は美琴に気づくと、みんなの前でとんでもないことをぶっちゃけた。
「あぁ、いたいた。オレ、ただの伝言係なんだけど……なんか、校門のところにいる男子、田村さんに用があるみたいだよ」
「…………え?」
『えぇっ⁉︎』
周りのクラスメート達が好奇心旺盛な視線を向けてくる。
美琴は頬を引きつらせながら、聞いた。
「えっと……なんで?」
「借りた傘を返したいのとお礼がしたいんだって。傘に名前があったのと、制服がうちの高校だったから……ここまで来たみたい」
「あぁ……ありがとう」
どうやら美琴に会いに来た理由として違和感がないモノをでっち上げたらしい。
そうしてくれた方が美琴としても動きやすい。
彼女は羨ましがるような視線を受けながら、荷物をとって教室を後にした。
*****
校門に近づくほど、みんなの視線が集まってくる。
寄りかかっていた有人は、美琴に気づくと……にっこりと柔らかな笑みを浮かべた。
周りにいた人達が黄色い歓声を上げて、聴覚が良くなっている美琴は若干身体を強張らせた。
「あぁ、田村さん」
「お待たせ、しました」
「ううん、突然来てごめんね?………ここは人が多いし、場所を変えようか」
あのぶっきらぼうな口調ではなく、優しい口調で言う有人に美琴は怪訝な顔をする。
彼はそんな美琴の顔に気づいて、耳元に唇を寄せた。
「そんな怪訝な顔すんな。人前でいい人ぶってるだけだから」
小さな声で言われたその喋り方は昨日と変わらなくて。
美琴はホッとして息を吐いた。
「あ、ちゃんと萩原さんだ」
「おい、疑ってたのかよ」
「だって……喋り方が気持ち悪くて……」
「ぷはっ‼︎気持ち悪いって……」
有人は小さく噴き出して、苦笑する。
その顔はなんだかとても自然で。
美琴も思わず小さく笑ってしまった。
「ほら、行くぞ」
有人は彼女の手を取って歩き出す。
後ろからまたもや悲鳴に近い声が上がっていたが、美琴は気にならなかった。
*****
二人がやって来たのはタソガレ探偵喫茶だった。
有人の後に続いて入ると、そこには昨日と変わらず人が悪そうな笑顔を浮かべる皇の姿。
彼は美琴と有人を見比べて、ニヤリと笑った。
「お帰りぃ〜。今噂のお二人さん」
「「は?」」
「気づいてなかったの?もう、君らの高校で噂になってるみたいだよ?」
皇曰く。
有人の高校では、謎のネットワークから親しくしている女子がいると拡散され。
美琴の高校では、彼女が名門高校の男子と親しくしていると同じようなネットワークで拡散されているとか。
有人はそれを聞いて怪訝な顔をした。
「なんだよ、そのネットワークって」
「女子ネットワークってヤツらしいよ。調子乗ってる奴とかいたら、そこに連絡して虐めるとかの」
「はぁっ⁉︎」
「だっていつも王子スマイルの有人が人間味溢れる笑い方なんてするからぁ〜。いやぁ、美琴ちゃんが虐められないか心配だね‼︎」
美琴はそれを聞いて顔面蒼白になる。
どうして今さっきのことなのに、皇がそれを知っているのか。
そんな美琴の疑問に答えるように、皇はすっごく腹が立つ感じのウィンクをした。
「式神を使ったからね」
「………しき…がみ……?」
「こいつ、陰陽道に通じる九尾の妖狐なんだよ。こいつが動いてくれたら今回の件も早く方がつくんだがな」
「あははっ、そんなつまらないことしないよ。有人が苦しむ様を見たいからね」
「このクソ狐……」
美琴は陰陽道とか九尾とか理解できない単語のオンパレードに困惑する。
そんな彼女の状況を察したのか、有人は大きく息を吐いて説明してくれた。
「改めて、ご挨拶を」
「………え?」
「俺は陰陽師の萩原有人。人と妖達の憩いの場を提供している喫茶店の店長だ。ちなみに探偵というのは前にも説明したように、妖絡みの問題を解決しているから……皇が勝手に俺を探偵と言うようになった感じだ」
「…………」
美琴は自分の頬を抓って、現実なのかを確かめる。
彼女のその行動に有人は呆れた顔をした。
「ばーか。それぐらい簡単に信じろよ。じゃなきゃお前の猫憑きも説明つかないだろ」
「……あ、そうですね……」
「昨日の今日じゃ急に店を休みにできないからな。明日は臨時休業にして色々調べるぞ」
「……ごめんなさい……」
美琴は、自分の依頼のためにお店を休ませることになり謝罪する。
しかし、有人はまた溜息を吐いた。
「引き受けたのは俺だ。謝るなよ」
「………はい…」
「それにこの店は惰性でやってるんだ。急に臨時休業にしても問題ない。流石に客の誰かに休むって言わないと文句を言われるから、今日は無理だったけどな」
有人は「着替えてくる」と残してバックヤードに消える。
残された美琴と皇は互いに話すことなく……気まずい沈黙が満ちた。
(………どうすれば…)
急に妖とか陰陽師とか言われて、動揺している美琴は納得してるんだからしてないんだかよく分からない状態になる。
そんな彼女に皇は微笑んだ。
「取り敢えず座りなよ。有人が来たらカフェオレ入れてくれると思うからさ」
「………あ…はい……」
カウンター席に座った美琴は自身を落ち着かせるために店内を見渡す。
アンティーク調の、落ち着いた喫茶店。
夕陽の黄金色に染まる様はどこか幻想的で。
なんだかこの空間にいるだけで落ち着く。
どれくらいかは分からないけれど……そこそこの時間が経った頃。
ほっ……吐息を吐いたところで、隣でクスッと笑い声が聞こえた。
「っ‼︎」
「あはは、ここが気にいったの?」
いつの間にか隣の席に皇が座っていて。
美琴はギョッとしながら、彼とは反対の席に一つズレる。
皇はその行動にキョトンとして……クスクスと楽しそうに笑った。
「君は有人と相性が良いみたいだねぇ」
「え?」
「だって……有人が人前であんな風に自然に笑ったの、ここ最近はなかったんだよ?」
皇はどこか遠くを見つめながら、優しく笑う。
「家を出て、あいつの跡を継いでこの店を始めても……あんな気の抜けた笑顔は浮かべてなかった。ずっーと顰めっ面か溜息を吐いてたんだよ」
「…………」
「だからね。有人を歳相応の笑顔にしてくれた君には感謝かな」
その笑顔はなんだか有人の親のようで。
美琴は何も考えずに言ってしまった。
「なんか……腹黒そうな人が良いこと言うと、気持ち悪いですね」
「…………へ?」
「ぶふっ‼︎」
ハッと振り返ると、そこにいたのはショートエプロンを片手に口を手で覆って笑いを堪えて……堪え切れていない有人の姿。
彼はぷるぷると(笑いで)震えながら、美琴と皇を見た。
「やっばい。真っ正面から本人に腹黒そうとか言うなんて……面白すぎる」
「…………あっ⁉︎」
「いや、確かに僕ってば自他共に認める腹黒だから気にしてないけど……美琴ちゃんって結構、本質見抜いてくるタイプだね?」
そんな風に言われても、何故かつい言葉に出てしまったのだ。
しかし、正面から腹黒そうって言うのはかなり失礼だ。
美琴は慌てて頭を下げようとするが、その前に有人がそれを遮った。
「こいつの腹黒は確かだから、謝んなくていい。というかお前、見る目あるよ」
「えっ⁉︎」
「こいつ、いい顔してるからみんな騙されるんだよなぁ……でも、お前は騙されなかった。いい観察眼だ。ご褒美に美味いカフェオレ入れてやる」
「えぇっ⁉︎」
有人はショートエプロンをつけながら、カウンター内に入ってカフェオレの準備を始める。
美琴は有人と皇を交互に見て……やっぱり彼に謝ろうとするが……。
「僕も謝んなくていいと思ってるよ?本当のことだし」
「でも、あんなこと言ってすみまー」
「それよりも。僕は人じゃないけど、人の本質見る人って珍しいよね。そーいう人間は重要だよ?」
そんなことを言われても、美琴は今までその人の本質を意識したりしていない。
こうやってこの人は嫌だな、とか好きだなって思いやすくなったのは……猫憑きになってからで……。
「そーいう人が有人の側にいれば良かったの……あ、そうか」
しかし、考えに没頭していた美琴は……楽しそうにニヤリと笑う皇の(黒い笑)顔を見て思考を止めた。
その笑顔に美琴は何故か嫌な(ような、そうじゃないような)予感がした。
「そーいう人がいなかったのなら、いるようにすればいいんだもんね」
「え?」
「決〜めた。美琴ちゃんが有人とずっと一緒にいるように、僕、画策するから。よろしくね?」
なんかよく分からないうちに、皇に有人の側にいるように画策されることになった美琴は絶句する。
「ん?どうした?」
カフェオレに入れるのに集中していたらしい有人は、話を聞いていなかったらしい。
美琴はどう答えればいいのかと困惑していたら……皇は彼に「なんでもないよ〜」と楽しそうに言いながら、バックヤードに逃げて行く。
「………マジでどうしたんだ?」
(………どう答えれば正解ですか……)
残された美琴はそう聞かれても何も言えず……出されたカフェオレを無言で飲んだ。