第1章
XX月XX日
システム:オールグリーン
ワタシがこうして日誌を書き始めたのは、一重に彼の勧めです。彼がワタシに記録しておくと良いと言っていたので。
ワタシの名はライラ。自律思考型AIです。今は彼のお傍で、秘書兼助手兼セキュリティのチェックを行っています。彼が行っている研究は、それなりに危険なもので、外部に情報が漏れてしまうようなことがあってはなりませんから。
白い髪に、黒い眼鏡をかけた彼は、幼い頃に出会った大切な人に会いに行く為に研究を続けています。ワタシの容姿もその大切な人に近づけたようですが、その人が一体どんな人物かは、いくら聞いても教えてくれませんでした。
彼はワタシに、自分の手伝いをさせながら同時に彼の所作や感情を観察させることによってよりよいAIを作り出そうとしているようです。現在ワタシは世間一般の常識と呼ばれるもの、そして単純な感情を理解することが出来ます。人間を支配する喜怒哀楽と、それに付随するいくつかの感情。それらをプログラムとして組み込まれています。その為、私は彼が抱く感情の一部を理解することが出来るのです。
さて、この日誌、どう名前をつけようか悩んでいたのですが、そうですね。彼を見てワタシは育つ。ワタシの観察日誌、と致しましょう。