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番外編 レイモンドの父親



 グレイヒューズ家には、一人息子のレイモンドがいる。


 レイモンドは小さい頃から大人びた子供で、他の同年代の者達と比べると非常に落ち着いた性格だった。


 その影響で、手のかからない子供としてついつい放置してしまいがちになってしまう。


 気を付けてはいるものの、当主である私にはやらばければならない事が山ほどあったため、ついつい息子と接する時間が削れてしまう。


 おそらくその行動が悪循環を生みだし、レイモンドの大人びた人格を形成してしまったのだろう。


 昔の自分の行動を悔やんでも悔やみきれない。


 そんな罪悪感があるためか、レイモンドの誕生日には必ず妻と相談し、多くのプレゼントを買い与えた事もあったが、当の本人は喜ばなかった。


「お金がもったいないので、そんなにくれなくても大丈夫ですから」


 大人びた顔でやんわりと拒絶されてしまったのは、辛い思い出だ。


 そんなレイモンドが一定の年齢になったため、学校に通わせる必要が出てきた。


 名前のある家に生まれた子供達は、特別な例を除いて学び舎で同年代に者達と勉学に励む義務がある。


 いずれは上に立つ者として多くの人を支える存在となるのだから、教育に力を入れたいというのがこの国の方針だからだ。


 しかし、レイモンドが学校になじめるか心配であった。


 聞き分けの良いレイモンドは大人受けが良いが、同年代の子供達からはよく思われない事もある。


 子供というものは大人の意向を無視して時に冒険し、時に規則を破りと破天荒な行動に出るものだ。


 だから大人の事情をくみ取り、こちらの意に沿うように気を遣うことのあるレイモンドがどのような扱いを受けるか心配でしょうがなかった。


 しかし、そんな悩みは杞憂だったようだ。


 学校に通うようになってから、レイモンドの年相応な面を多く見るようになった。


 特にクラスメイト達との関係が良い変化を促したようだ。


 同じ学び舎に通う生徒達と切磋琢磨し、時に衝突し、時に協力し合う事で、何かしら内面に影響を得たのだろう。


 年頃の少年のような顔で、日常を過ごす事が多くなった。


 そんなレイモンドは学園では特にエリナという少女と親しくしているようで、友達らしき存在ができた事に胸をなでおろしているが、また別の心配も頭をよぎる。


 件の少女とレイモンドは何やら家族ごっこなるものをしているようで、私達の接し方が悪かったのかと思ってしまうのだ。


 親として足りない私達の代わりを同年代の少女に求めているのではないか、と。


 だが、これも思いすごしだったようだ。


 この間、誕生日を迎えたレイモンドにプレゼントを贈ったら、真面目に感謝されてしまった。


「この年まで育ててくれてありがとうござます」


 なんて他人行儀にお礼を言われるものだから驚いたが、最近親というものの苦労を知ったので、感謝の気持ちを言葉にしたかったのだと言う。 


 レイモンドが私達に対してどんな事を考えているのか今まで分からなかったから、その行動には報われた思いだ。


 エリナという少女がレイモンドとどういう関係なのかは知らないが、息子にとって悪い存在とならないのなら、しばらくは寛容な目で見守っていようと思う。



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