ゲルヒエンさんを慰めよう
昼も過ぎて晩に近くなり、日が目に見えて西に傾いている。
ゲルヒエンさんが眠ってしまったので勉強は中止して、家事の手伝いをした。
そして時間が経ち、夜に近くなる。
教会員見習いの仕事の家事として、食事も作ることになる。
以前は3人で順にしていたようだが、私も加えて4人で回すことになるとのこと。
そこでその前準備として、私に器具や食器類がどこにあるのか教えながら夕食を調理をしてくれた。
リビングに戻ってみんなで食事をとる。
そしてお風呂に入って、寝ることになるのだ。
きっと今日もマリーさんのところだろう。そう思っていた。
しかしお風呂に入る前に、ゲルヒエンさんに呼び止められた。
「あ、あのっ。」
なんですか?と振り向く。そこにはお風呂を出たあとであることだけが原因でないだろうほど頬を上気させて、緊張した面持ちのゲルヒエンさんがいた。
「あ、あとで私の部屋に来てくれませんか!」
夜に呼び出しとはどういうことだろう。しかし断る理由も特にないので、了解の返事を返す。
ゲルヒエンさんはほっとした様子で、一言礼を言って戻っていった。
さてお風呂を出て、ゲルヒエンさんの部屋に入る。
奥には机があり、さほど広いとは言えない部屋だ。
ゲルヒエンさんは机でなくこちらに向かって椅子に座っている。
まずはゲルヒエンさんが重い口を開いた。
「あ、あの。私のこと、き、嫌いですか?」
「え?」
「そ、そうですよね。あんな自分勝手じゃそうですよね......。」
まだ昼のことを気にしていたらしい。むしろ謝りたいのはこっちなのだが。
「そんなことありません。私、ゲルヒエンさんのこと好きですよ。」
「え、えっ」
ゲルヒエンさんが予想外のことにうろたえはじめる。
「でも、お世辞で言っているだけですよね?」
「そんなことありません。ゲルヒエンさんのこと好きですよ。」
一歩、二歩とゲルヒエンさんの方に近づく。
うろたえたゲルヒエンさんは椅子を立って私から離れようとする。私に嫌われていると思っているゲルヒエンさんには、こうも好き好きと言ってくる私は不気味に見えるのだろう。
ずんずんと進んでいくと、ゲルヒエンさんを私が追い詰める格好になる。ゲルヒエンさんはついにはつまづいて尻もちをついてしまった。
何か言おうとするが、良心のために私を突き放すようなことは言ってこない。
少ししゃがんで、怯えるゲルヒエンさんを抱きとめる。
「捕まえました。さあ、存分に私に愛されてください。」
髪を梳き、頭を撫でる。
ゲルヒエンさんは恐怖と混乱からか目が潤んでいた。しかし私を退けようとはしなかった。彼女はそれほどまで遠慮がちな人なのだ。
「本当に、私のこと嫌っていないのですか?」
この期に及んでまだその意識は残っているらしい。口を耳に近づけて、囁くように答える。
「はい。私は人を嫌いませんから。それに、ゲルヒエンさんのことは特に好きですよ。」
ゲルヒエンさんは耳を真っ赤にして、言葉ともならない声を口から漏らすのだった。
ある程度ゲルヒエンさんが落ち着いたところで手を離す。さて、私も部屋に帰らなくては。
しかし、帰ろうとする私の袖をつかむものがいた。
振り向いてみると俯いたゲルヒエンさんの火照った頬が見えた。
「あ、あの......私ってあんなにはっきり『好き』だなんて、マリーさんにも言われたことがなくて、その......。」
幾分か逡巡したのち、顔をあげて言う。
「私も、セーレさんのこと......好きですよ。」
そう言って少し間があったのち、恥ずかしがったゲルヒエンさんに押し出されるようにして部屋から出された。
マリーさんの部屋に戻って就寝すると同時にゲームを終了する。今日は休みであるから、ゲーム内で夜が終わるまで何か別のことをして、もう一度ログインしようかと思う。
そこでゲームの交流サイトを開いていた。
巡回し始めて、すぐに目に飛び込んできたのは『レイナ』というプレイヤーの話だった。何を隠そう、姉さんのことなのだが、かなり進んでいるようだ。
もはや比類なきレベルに到達しているらしい。実際姉さんは今はニートだし、ゲームはすごく得意だけどこんなに有名になるとはなあ。
ほかにも色々と回っていった。攻略に関するものも、可愛いキャラクターに関するものも。
そんなことをしていたら時間になったのでゲームを再開させる。しっかしこの動かない生活続けたら絶対太るし体力落ちる。




