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1日の終わり

「いらっしゃい。1名様?」


「ああ。うん。1名だ」


 そこには少し幼いが将来は綺麗になるであろう美少女が店番をしていた。ハッチや門番…歩いている人を見て思ったが顔の作りは日本人じゃない。


 どちらかというと欧米人に近い。肌の色などは十人十色だが目の前の女の子は肌が白く綺麗なブルーの瞳をしていた。それに綺麗な金髪をポニーテールにしている。可憐だ。


「どれくらい宿泊の予定なの?」


「と、とりあえず1週間くらいで考えてるんだが…」


 見とれすぎていて引かれたりしていないか?という焦りからどもってしまった。こんな綺麗な子がいたら見つめてしまうのは当然だろう。



 異世界に来て良かった。



 本当にそう思えた。現実…っていうかもう死んでしまったわけだがそこでは俺にこんな出会いなどなかったであろう。目の前に愛くるしい美少女がいる。まるで2次元の世界からとぢ出してきてくれたようなそんな美少女だ。


 どうして俺を最初に助けてくれたのがむさいおっさんじゃなくてこんな美少女じゃなかったんだろう。まぁハッチには感謝はしているが。


「君はここは初めて?使い方とか分かる?説明したほうが良い?」


「よろしく」



 声も可憐だ。何もかもが可憐だ。うん。素晴らしい。この世界は魔物とかいて怖いが女性に関してはぐうの音が出ないほど素晴らしい。あちらの世界とは比べ物にならないほど。


「それじゃとりあえず簡単に説明しちゃうねー。一応ここは朝夜はご飯出るからね。1階のそこのドアを開けたとこが食堂になってるから。ッ朝食は6時~10時。夕食は18時~22時という感じになっているから食べたかったら食堂に来る事。来なかったら来なかったで問題なし。後はここはお風呂とかはないけどお湯は貸し出してるよー。タオルとかその他は自分で用意すること。お湯は桶で渡すシステムだから。1回だけは無料だけどそれ以上求めるならガルが必要になるって感じ。大丈夫?」



 それなりに簡潔に説明してくれたがこの宿には風呂が無いらしい。それは厄介だ。できることならお風呂には入りたい。だが我儘をいう事は出来ないだろう。とりあえずここは桶だけでももらって…タオルがないか。これは明日にでも仕入れるとしてとりあえず今日は寝よう。可愛い美少女を見ることができたんだ。今日は良い夢を見ることができるかもしれない。


「了解。それじゃ1週間でよろしく。お代は?」


「ありがとうございます。1日大銅貨4枚。合計で銀貨2枚と大銅貨8枚だよ」


「分かった。銀貨3枚で頼む」


「はいはい。それじゃおつりが大銅貨2枚だね。部屋は2階に上がって右の廊下の一番奥。これが鍵ね!はい」


「ありがとう。何か分からないこととかあったら聞くと思うが頼む」


「何でも聞いて。あっ!あとここに記帳して欲しいんだけど文字とか書ける?書けないなら私が代筆するから」


「悪い。文字はちょっと良く分からないから代筆お願いできるか?」


「良いよ。名前は?」


「ケイでよろしく」


「了解~ケイね!そういえばケイは何の職業なの?その格好じゃ冒険者って感じには見えないんだけど…?」



 そう。俺は無職。現代でも無職になったところで死んだわけだがこの世界に来ても無職とは…



 生きるために俺は本当これからどうするんだろうか。本当良い事はあっても現実を見ると憂鬱な気分ではきそうになる。



「えっと…ここに来たばかりだからな。何も職にはついてない。明日に冒険者ギルドに登録しに行くところなんだよ」


 嘘は言ってない。嘘は。


「ふーん。なーんか訳アリって感じだね(笑)まぁ追求しないでおくよ。明日頑張ってね。ギルドは朝の8時からはやってるからそれ以降に行くと良いよ」



 あぁ。きっとこの子はもう俺の中でアイドルだ。日本に居たころのアイドルなんかの10倍可愛い。もう可愛い。この子のフィギュア欲しい。


「ありがとう。それじゃ明日それ以降にギルド行くようにしてみるよ」


「そうしたら良いよー。あっ!まだギリギリ夕食食べること出来ると思うけど食べる?」


「いただけると嬉しい。大丈夫か?」


 可愛い。心配してくれてるのか。本当良い子だな。



「それじゃパパに伝えておくねー。夜は基本的に魚か肉か選べるんだけどこの時間だと魚しか残ってないけど良い?」


「大丈夫。君も大変だな。この時間までお手伝いするなんて」


「あぁ?今なんつった?」



 ん?あれ?何このさっきまでと違った低い声。この可愛い子から聞こえたような気がしたんだが…いや違うな。俺の気のせいだ。


「いや、君みたいな小さい子がこんな時間までお手伝いなんて凄いなって思ってな」


「あぁ?お前泊めさせないぞ?どの口が言ってんだ?あぁ?」



 おかしい。いや、間違いなくこの子から聞こえる。世紀末の世界で使うような言葉遣い。そして低い声。大人でもびびってしまうような低い威厳のありそうな声。一体どうしてしまったんだ!いや、この子に何があったんだ!?


「えっと…さっきまで話ししていた子はどこにいったんだろう?君…だよな?」



 そう俺が話ししていたのは確かに目の前の子。どうしてだ?どうしてこうなった?!なにがあったんだ?



「お前さ~私がいくつに見えるか言ってみ?」


「えっと13?いや15歳くらいか?」



 お腹にめりこむような痛み。実際めり込んでいるんだろうか。目の前の可愛い女の子が鋭いパンチで俺のお腹を殴っている。いてぇ


「ってーーーー。何すんだ!しつけがなってねーぞ!何いきなり年齢言っただけで殴るんだよ!」


「お前が失礼なんだろうが!私が13歳?ふざけんな。私はもう立派な大人だ。25歳だ!!出てるよな?大人の色気ってのが?見えないのか?お前!!」


「…は?いや…お前どう見ても可愛い女の子で大人の女なんて見えないんだが…」


「可愛いって…///。そんな正直に言われても困るだろうが…って大人の女に見えない?どの目でみてどの口で物語ってんだ?あぁ?」



 怖い。さっきまでの優しくて可愛らしい美少女じゃない。自分の理想などを勝手に想像したとは言え…これは酷い。酷すぎる。こんな風に悪態をつかれるとは思わなかった。若く見られるのは良いことだろうに。



「悪かった。許してくれ。そんなつもりで言ったわけじゃないんだ。怒らないでくれ」


「チッ。まぁ良い。次から気をつけるんだな」



 舌打ちって…見た目は美少女!中身はおっさんってレベルだな。


「とりあえず食堂に直ぐ行っても大丈夫か?よく考えたら俺全然飯食べてないから腹減ってんだよな」


「構わないよ。中に入ったら魚でよろしくーって言えば持ってきてくれるから」


「ああ。ありがとう」



 ふぅ。何とか嵐は鎮めることが出来たようだ。あの子の前で年齢とかそういう話はしないでおこう。本当面倒なことになりそうだ。



 食堂に入ると席は10席くらいか?大きな机があってそこに席があり全員同じテーブルで食べるという形式らしい。まぁこの宿屋自体大きくないから仕方ないだろうな。


「魚でお願いできますか?」


 少し大きな声を出すとキッチンの方からのそっと大きな男が顔を出した。スキンヘッドの大きな男。たくましい腕。ハッチと良い…この世界の人間は全員ボディビルダーかというくらい鍛えられている気がする。俺の気のせいでないのであれば。



「客か?こんな時間に珍しいな。今ならまだ肉も余っているがどうする?魚で良いか?」


「あっ!それじゃ肉でお願いします」


 魚よりも肉。やっぱり男ならがっつりと肉を食べたい。なんだか人生で一番運動というか色々な経験をしたからお腹もかなり空いてるみたいだ。これから先何があるか分からないから食べれるときに何でも食べたほうが良いだろう。


「分かった。ちょっと待ってな」


「ありがとうございます」


 ほんの少し待ったら飯が出てきた。かなり量が多い。肉を煮込んだ料理なんだろうがかなり肉が大きい。俺にはかなり嬉しいがそれなりの量がある。ご飯と食べたいと思ったが残念ながらパン。


 この時代にお米というのがあるのかも分からない。基本的にパン食なのかもしれない。あぁ…きっといつか米を食べたくなるだろうな。


 それ以外にスープとサラダが付いてきているがこちらに関してはコーンスープっぽいのと普通にレタスやらたまねぎやらっぽいサラダ。きっと違う世界だから味も名前も違うのだろうけど。


「それじゃいただきます」


「ああ。食べたら皿などはそっちのとこに置いておいてもらう仕組みだから頼んだぞ」


「了解です!あっ…おたくのお子さんって本当に25歳なんですか?それでかなり怒られてしまったんですが…」


「お前はあいつに年齢の話ししちゃったのか?そいつぁ面倒だったろ。あいつは客に対してもその話したらキレちまうからな。追い出されなかっただけよかったじゃないか。次からはしないほうが良い。親の俺でもあいつの前じゃもう言わなくなっちまったからな」


「そうだったんですか。次からは気をつけるようにします」



「そうしてくれ。俺もとばっちりがきたら嫌だからな。それじゃ俺はキッチンの片づけがあるんでな。嫌いな物があるなら気にせず残してくれて構わないからな。じゃあゆっくりと食ってくれ」



 良いオッサンだ。こういう年の取り方をするのが男としては理想なんだろう。この世界のオッサンはみんな良いオッサンで助かる。


 肉は普通に柔らかくて美味しい。ワインか何か?で煮込んでいるのだろう。それなりにコクもあり美味しくいただける。サラダやスープも割りと美味い。


 普通の宿屋の飯にしては何の問題もないだろう。一番低いランクの宿屋だったらきっとこういうサービスもなかったのだろう。そう考えるとここを選択して正解だったな。



 美味しい美味しいと思いながら食べていたらあっという間に完食してしまった。明日も朝は絶対に食べるようにしよう。



「おじさん。美味しかったです。ありがとう」


「ああ。綺麗に食ったな。こんな風に全部食べてくれるとこっちも嬉しいよ。ありがとうな」


「はい。それじゃ部屋に戻るんで」


「ああ。特に綺麗でもないが寝る分には問題ない。ゆっくりと休んでいってくれ」


「おやすみなさい」


「ああ!おやすみ」



 それから自分の部屋に行く前に美少女が暇そうにいすに座っていたのでおやすみの挨拶をしたが無視されて地味に凹んだ。



 とりあえず今までのことを整理しようと思う。やっと一息つくことが出来た。俺のこれからの人生ということについてもう少し整理した方が良いだろう。


 まずは俺は違う世界に来た。俗に言う異世界に飛んじゃった~ってやつだろう。自称・神(笑)が本当の【神様】だったということで間違いないだろう。出来る事なら何とかコンタクトを取りたいとこだが普通に考えてそれは無理だろうな。


 日本に居て神と交信しているなんていうやつがいたら間違いなく電波だと言われて終わりだろうからな。こちらの世界はもう少し違うのかもしれないが厳しいと思っておいて良いだろう。


 あとはこの世界でどう生きていくか。日本での俺が死んだと神は言っていた以上あちらに戻るのは不可能。こっちの世界で生きていくしかない。


 生きていくためにはどうすれば良いのか?まずはお金を稼がないといけない。銀貨5枚持っていたとしてももう普通に使ったから後は…銀貨2枚と大銅貨2枚。これで明日ギルドに登録するお金を考えると…



 銀貨1枚と大銅貨2枚。



 正直これが向こうの世界のどれくらいの基準に属するのかが分からない。宿に1泊するのに大銅貨4枚。これを基準にするにしても高いのか安いのか…俺がこれから生活するうえで最低限この大銅貨4枚以上は稼がないといけない。そうじゃないと俺は泊まる場所がなくなってしまうことになる。



 最低基準と考えておくと日給大銅貨4枚以上というのは日本であればどれくらいになるんだろう。やっぱり不安だ。先のことを考えると不安になる。今の俺の体格でギルドというところで普通に仕事がもらえるんだろうか。



 こっちの世界の男たちはたいていごつかった。俺よりも背が高く体も頑丈。ウホッという男性が多いというイメージだ。そんな世界で俺がまともに働くことが出来るんだろうか。生きていくことが出来るならどんなことでもやるが出来る事なら汚いことはしたくないからな。



 とりあえず今後の生活は明日行くギルドに託されることになる。ゲームとかのイメージしかない俺としては討伐なんてものが出来るのか?というイメージはあるんだが何とかするしかないだろう。



 あとは…ステータスのポイント。これだけが俺にとって謎なんだよな。ハッチに関してはステータスにポイントがあるというのが分からない様子だった。ってことはこっちに転生してきた俺だけが分かるのかもしれない。



 それから何度もポイントを使う!ポイントを消費!など頭で思ってもステータスのところから何も変わることはなかった。むしろこのステータスというのも不思議な感覚だ。頭の中に映像として自分のステータスを見るなんて気持ち悪い意外の何者でもないな。



 色々なことを考えていくうちに眠くなってきた。ベッドは硬くその上にある布団?もただの布みたいなものだったけどないよりは良いだろう。いつか布団とか作れると良いな。



 そう思って長い長い1日が終わった。

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