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ポイント

 ポイント。


 自分のステータスにだけ存在する。このポイントということについて自分なりに色々と調べていかないといけない。


 きっとこのポイントが上手く使うことでこれから先も【魔物】などにおびえることなく生きていく事が出来るような気がするからだ。


 一度死んで更にもう一度死ぬなんてのは本当にごめんだ。だからこそ何とかしてでも生き残りたい。


 その為に自分のポイントについて調べないといけない。寝る前にそう結論付けた。今はハッチに付いていき町へと向かっているところ。


 ハッチはいい奴だ。こんないい奴に前の世界でも会っていたらなと思ってしまう。


「聞きたいんですけど良いですか?町まであとどれくらいですか?」


「そういうかしこまったのは止めてくれ。なんだか気持ちわりぃ。普通に話ししてくれて構わないぜ」


「分かった。それじゃこれからそうする。ハッチ。町ってのはここから近いのか?」


「あと4時間近く歩いていけばたどり着くだろうさ。もう少しってところだな。永遠と草原と荒野が続くが気にすんな。もうそろそろすれば公道が見えてくる。馬車が通ってくれてラッキーがあれば乗せてもらえるかもしれないぜ」


 とりあえず後4時間は歩く可能性があると考えたほうが良さそうだ。現代ッ子である俺にとって4時間というのはそれなりの長さだ。間違いなく明日は筋肉痛だ。



「おい!魔物だ。下がってろ」


 急にハッチが大きな声を出した。魔物…そう言っていた!


「……」


 俺はハッチの言うとおり黙って下がって魔物が見ることが出来る位置に陣取る。


 見えた!


 ゴブリン?俺の元居た世界で見た魔物がそこにはいた。ゴブリン。最弱でありそこそこ知性のある生き物。雑魚キャラクターとして最も有名な魔物だ。



「ゴブリン?」


「なんだお前知ってるのか?ケイを助けたときにもゴブリンが近くにいたからそれで見たのかもな」


「こいつら強いんですか?」


「いんや、弱い。最弱だ。冒険者の初級クエストは良くこいつらの討伐にあたることになるだろうよ。採取とか以外でって意味でな。とりあえずぱぱっとやつけるからお前は下がってろ」


「分かりました」


 ハッチが使っている武器は大剣。自分の大きさくらいあろうかって大きな剣を振り回している。間違いなく俺が持つことは無理であろう武器だ。ハッチみたいな大柄な人物にこそ似合う武器だろう。それを軽々しくふるってゴブリン達を一層している。


 後で聞いた話によるとゴブリンは基本的に一人で行動する事はないらしい。基本集団行動を取るためあまりに多いときには熟練の冒険者でも逃げることが多いとか。



「さてと片付いたな。一応耳ははぎとっておくか」


「どうして死体を…」


「あぁ。お前は見慣れないだろうが討伐報酬を得るためにはこうやって証拠が必要になるんだよ。そのまま持っていくことなんて出来ないだろう?だから、こうやって剥ぎ取りして証明になるように持って行くってわけ。ゴブリンの場合だと基本的に右の耳を切り取って持っていくのが基本だ」


「ゴブリンって…なんだか人間みたいだな。血は…緑だけど」


「まぁな。俺も最初はこいつらを殺すのには抵抗があったけどな。仕事だ。仕方ない」


「そ、そうだな」



 その後も何度か俺達はゴブリンに遭遇してはハッチがなぎ倒してくれた。何度か遭遇したことで時間を少しとってしまったが何とか俺達は公道へとたどり着いた。


「ここが公道だ。ここまでくれば魔物とかに出会う可能性はぐっと低くなる。安心しろ」


「一安心ってことか。やっと一息つけるな」



「とりあえずこのまま歩いて今日中には町まで帰るぞ。思ったよりも時間掛かっちまったからな」


「大丈夫だ。まだ歩けるから何とかなると思う」



 自分でも驚きだが思った以上に疲れていない。ステータスでHPなどを確認してみたが歩いて疲れたりする程度ではHPには影響を与えないみたいだ。一つ賢くなった気分。



「それじゃ先に進むぞ!」


「了解」


 歩きながら何の疑問にも思っていなかったことを思い出した。良く考えてみたら俺はこの世界の言葉を話しすることが出来ている。


 日本語でないであろう言葉を理解して話をすることが出来ている。それが不思議だ。これも自称・神(笑)による何かの補正効果みたいなものなんだろうか?とりあえず言葉には不自由する事はない。


 それだけで今後の生活も少しは安心することが出来るだろう。もしも言葉が通じなかったら…


 きっと俺はのたれ死んで目の前のハッチのことも信頼することも出来なかっただろうな。


 そう思うと本当言葉ってのがどれだけ大切なのか分かる。


「ハッチ。聞きたいことがあるんだけど良いか?町に着くまでに色々と知っておきたいんだ」


「そうか。ケイは記憶がなくなっちまったんだよな。とりあえず俺の知っている情報なら何でも話ししてやる。気になることがあるなら何でも聞けよ」


「ありがとう。本当良いやつだな」


「うるせぇ。照れるだろうが」


「聞きたいことはまずこのお金。ポケットの布の中に入っていたんだが銀貨だよな?」


「ああ。その通りだ。それは銀貨だな。一文無しと思いきやお金は持ってたんだな。どれくらい持ってんだ?」


「銀貨が5枚だけ」


「銀貨が5枚か…とりあえずしばらくはそれで生活はすることが出来るだろう。助けておいて死なれたら気分悪いからな。一安心だ」


「そうなんだな。それでこのお金の単位ってなんていうんだ?」


「単位?あぁ。1ガルが1銅貨。それが10枚で大銅貨だ。大銅貨が10枚で銀貨1枚。銀貨が10枚で金貨が1枚。金貨が10枚で白金貨1枚。って計算だな。それだけ覚えてりゃ問題ねぇぞ」


 とりあえずこの世界にも日本と同様に国の通貨単位などが設定されていてそれに基づいて色々とモノを購入するという形か。


 何はともあれ物々交換などじゃなくてほっとするところだな。今の俺には何もないからそんなことになったら俺は野宿が確定だ。


「ありがとう。とりあえずこれで宿とかに泊まることが出来るよな?俺…身分証とかそういうのないんだが…」


「身分証か?俺はギルドカードを持っているからな。それが身分を表すことになる。お前も良かったら冒険者ギルドに登録すると良い。そうすればお前も冒険者だ!」


「誰でもなれるものなのか?俺みたいなこんぼうしか持っていないガリガリでも?」


「強い弱いは見た目じゃない。俺だってまだまだだ。上をみたら切りがねぇ」


「ハッチがか?それは凄いな。あんなにゴブリンをなぎ払っていたのに」


「あんなもん冒険者に入ってそれなりの年数のやつだったら余裕だぞ。お前も鍛えていけば何の問題もなく倒せるようになるさ」


「とりあえず冒険者ギルドに俺も登録する。町について場所とか教えてくれるか?」


「ああ。それくらい安いもんさ」


 それからも色々とハッチから教わった。この世界は本当に日本とは違う。


 まるっきり違う。


 俺は本当に違う世界にきたのだということを改めて実感させられてしまった。とりあえず前に進まないといけない。この世界で生きるためには何よりも知識が必要だ。それがこれから生きる糧になる。



「まだか?もうそろそろ日が暮れるけどやばいんじゃないか?」


「後30分もあれば着く。もう少し頑張れ」


「やっとか。本当長かった」



「とりえあえず宿探すか。俺は仲間が居るからそこに帰ることになるからお別れになっちまうからな。とりあえず宿探すところまでは付き合ってやるよ。そのついでにギルドの場所とかは教えておいてやる。そこからは自力で何とか頑張ってくれよ?」


「ありがとう。本当ハッチに出会うことが出来なかったら俺は間違いなく死んでたよ。この恩は必ず何かしらの形で返すからな」



「期待せずに待ってるよ」



 町に入るには通行許可証というのが必要になるらしい。これは基本的に誰でも取得可能。過去に犯罪などを犯した経歴などが確認されなければ発行されるものらしい。


 通行する門のところに門番がたっておりその人はスキルで相手の経歴などを確認することが出来るとのこと。もしかしたらポイントのことなどについても知っているかもしれない。


 そんな期待を抱きつつやっと町までたどり着いた。


「よう。ハッチ!遅かったな。もっと早いと思ってたが…ん?こいつは誰だ?」


「ああ。俺が助けてやったやつだ。道に迷ってて記憶をなくしちまったらしい。それで俺がここまで連れてきてやったんだよ」


「流石は【優しい狼】の名は伊達じゃないな」


「その呼び名は恥ずかしいから止めてくれ」


「とりあえず犯罪などの経歴がないか調べさせてもらうぞ」


「分かりました。調べてみてください」


「ん…問題なし。許可証を発行しよう。ハッチまた暇なときがあったら【暁の社】で会おう」


「ああ。それじゃまたな」


 何の問題もなく門を通過することが出来たものの【鑑定】のスキルを持っているという門番にポイントのことについて何も言われなかった。どうしてだ?このポイントってのは本当にどういうものなんだ?



「それじゃパパッと宿決めちまうか。とりあえず一番したのグレードの宿だと誰かと一緒に雑魚寝ってことになっちまうぜ。普通のグレードのところだと個室で止まれるがセキュリティなんて呼べるものはないな。かろうじて鍵は掛けられるくらいだ。後は最高級だとお前の金じゃ無理。ってことで普通か格安のどっちかってことになるがどれが良い?」


 誰かと一緒に寝るっていうのは今までの経験が無い上にありえない。日本という国がどれだけ安全な国だったのかというのが分かる。本当どうして俺がこんなとこに来る事になったんだよ。


「とりあえず…普通のところで頼む。何日かは泊まることが出来るんだよな?お金は…何とか稼げるように頑張るつもりだ」


「分かった。それじゃとりあえずお前がこれから泊まる宿は【子猫の宿り木】だ。歩いて直ぐそこだから着いて来い」



「何から何まで本当助かる」


「あとあそこの大きな建物が分かるか?」



 ハッチが指差したほうを見ると他の建物と比べてひときわ大きな建物があった。明らかに何かの場所であることはわかるがそれが何なのかは直ぐには分からなかった。


「あそこが冒険者ギルドだ。今はもう遅いから閉まってるからな。明日の朝に行けば問題ないだろう。登録するのに銀貨1枚かかるからな。そこは必要出費だと思っておけよ。宿代はどれくらいだったかは忘れた!」


「了解。今日は宿で休んで明日になったらギルドに登録しに行くようにするよ」


「ああ。そうしろ。おっと!ここだ」


「ここが【子猫の宿り木】?」



 目の前にある建物は他の建物より少し大きい普通の民家に見えたが入り口のところに看板があり【子猫の宿り木】と書かれていた。文字も日本語と同じ。おかしな話だが何の問題もなく読むことが出来ている。本当に不思議な話しだ。でも、まぁ問題なく文字も言葉も話しすることが出来ているということは生きていくために最低限のコミュニケーションはとることが出来るということなので安心だ。



「ありがとう。ここまでで良い。もう迷惑はかけられないからな。本当この恩は必ず返すよ。ハッチ」


「そんな気にすんなよ。まぁ今度飯か酒でも奢ってくれ。その為に頑張って稼ぐんだな。楽しみに待ってるぜ」


「ああ。そういえばハッチはどこに住んでいるんだ?この町なのか?」


「俺は住んでいる町というのは特にないが今はこの町を拠点にしてるって感じだな。俺のほかに仲間が3人。そいつらと色々と町を移動したりしてクエストをこなしてんだ」


「そうなのか。それじゃこの町もいずれは離れるんだよな?」


「ああ。そうなるが今すぐってわけじゃない。何かあったら相談にくれば良い。クエストで町を離れたりしているときは無理だがな」


「ありがとう。場所はどこなんだ?」


「正門を入って右側が住宅地になる。そこを歩いていくと緑の屋根があるのが俺達が借りている家だ。緑の屋根は他にないから直ぐにわかると思うぜ」


「了解。本当にありがとう。この恩は本当にいつか返させてもらうよ。感謝しても仕切れない」


「気にすんな。じゃあな!」


「ああ」



 ハッチとの別れて不安にはなるものの俺は少しドキドキしていた。だって、違う世界。違う場所。男なら興奮しても当然だろう?


 それにもしかしたらこういう異世界には【獣人】とかもいるかもしれない。今のところ時間が遅いせいか歩いている人もまばらで見かけてはいないが一度会ってみたい。


 そういう気持ちを胸に俺は【子猫の宿り木】のドアを開けた。

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