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遊びの天才

このお話は、分かる人にはわかるけれど、当時のテレビ番組を知らない人にはさっぱりピーマンだと思います。

 人には様々な得手不得手があるものだが、夏美には次々と遊びを考え出す能力があった。

最近夏美たちの間で流行っているのは、テレビの中のものを自分たちでやってみることだ。


「怪獣王子」をする時にはお宮さんに行かなければならない。首長恐竜の代わりになる斜めに生えた松の大木があるからだ。それに松の枝のブーメランも境内の下に隠してある。夏美の見つけたブーメランはとてもよく飛ぶので、のぶちゃん達が羨ましがっている。「あーああー、ああああー。」恐竜を呼びながらブーメランを田んぼに向かって投げる。投げたり拾ったり、松の木に登ったり飛び降りたり、忙しく動き回る。


動き回るのに飽きると、今度はままごとだ。

葉っぱを丸めて松の葉のクシに挿して串焼きをする。地面に線を引いて即席の焼き台の出来上がりだ。

串を焼いているとのぶちゃんが真っすぐな棒を二本持って来てくれた。「ありがとう! いい考え!」本格的な焼き台が出来上がった。グレードアップである。

友ちゃんが松ぼっくりを拾い集めてケーキ屋さんをしている。

「ケンちゃん、ケーキくださいな。」

こう言って買い物にも行かなければならないし、自分の店の料理も作らなければならないので大忙しだ。


雨の日にはのぶちゃんちに行く。

のぶちゃんちはクリーニング屋さんなのでおじちゃんとおばちゃんが共働きで家にいない。家の中で五月蠅くしても怒る人がいないので好都合だ。

のぶちゃんちで一番活躍するのが縁側だ。ここはボーリング場に最適なのである。

「りりりりりつこさん、なーかーやーまりつこさん。」と言いながら本格的なフォームでプラスチックの玉を投げる。

「かきーん。ガラガラガラ。」ピンの倒れる音も自分たちでしなければならない。あいにくプラチックのおもちゃのボーリングピンだと音声で迫力を足してやらないと臨場感が味わえない。

ここでも三人で役割分担が決まっている。選手・記録者(実況アナも兼ねる)・設備(ピンを戻す、音響)の三つの役割だ。

この縁側で、手に汗握る戦いが何度繰り広げられてきたことか。


スケートが流行った時が困った。残念ながらここの縁側の滑りが悪かったからだ。

夏美がふと思いついて、のぶちゃんに小麦粉を縁側に()いてもらった。しかしイマイチ滑りが悪く、華麗なるフィギュアスケート選手にはなれなかった。

これは後で聞いたのだが、のぶちゃんは帰って来た親に見つかってこっぴどく叱られたらしい。小麦粉が板の間に入ってしまって暫くとれなかったそうだ。おばちゃん、ごめんなさい。


バレーボールが流行った時は、夏美の家のゴザ干しの竹竿が大活躍した。

「こずえ、行くわよっ。」ビーチボールで特訓である。上手くレシーブできないとうさぎ跳びの刑が待っている。みんな泥だらけになって回転レシーブをしていく。

ビーチボールの端っこを切るように叩くとボールが曲がって回転して落ちる。魔球サーブの誕生だ。この魔球サーブは、試合の流れを変えて私達に勝利をもたらしてくれる。

ジュンコちゃんが遊びに来た時には必ずバレーの遊びをしなければならない。何故って? 本物のジュンがいるのだ。ジュンは足が悪い真似が非常にうまかった。

そんなジュンを助けて試合に勝つのだっ。

「大丈夫、魔球があるからね。ジュンはそこに立っていてくれるだけでいいの。」

「ううん。私、まだアタックできるっ。」

さすがだ、ジュン。あなたは私達のヒーローよ。


ヒーローと言えばウルトラマンだ。

何人ものウルトラマンがいたが、遊びの中で活躍したのはウルトラマンエースである。なにせ二人で向かい合って走って来てジャンプして手を交差させないといけないのだ。

「北斗っ。」「南っ。」二人とも頑張れ。タイミングが狂うと変身できない。

これを上手くできるようになるために、何回もやり直しをしながら特訓した。特訓が好きな夏美である。


時には怪しい人をつけて行って事件を解決しなければならないことがある。

夏美の家から中備(ちゅうび)の駅が近かったので、列車で降り立った旅人たちの中で最も怪しい人がターゲットとなる。

少年探偵団用の水に溶かすと溶けてしまう紙に注意事項を書いて、水溜まりの中に入れながら犯人の尾行は続く。時には犯人が友達のお父さんだったこともあったが、探偵の勘を養うためには修行あるのみである。


少年探偵の皆と一緒に、中備市の北の方にあるお寺の裏山の展望台に遠足に行くこともあった。

探偵は現場百回、足腰を鍛えることは奨励しなければならない。リュックの中におやつも詰め込んで出発だ。初枝がついてこようとしたけれど、探偵のスピードについてこられないものはおいて行くことにする。

展望台の現場に着いてみると、そこは宇宙船シュピーゲル号の中だった。


「ほんにょごにょん。キャプテンウルトラ、キャプテンウルトラ、応答してください。」

「こちら宇宙船シュピーゲル号、宇宙人に気を付けるんだっ。」

手のような所から何かが飛び出してくると身体が溶けてしまう。


あまりに宇宙人の数が多いようだったらマグマ大使を呼んだ方がいいかもしれない。のぶちゃんが用意のいいことに笛を持って来ていた。

「ピコロコピー、ピコロコピー、マグマ大使ーーーっ。」

展望台から山に向かって大声で何度も呼ぶ。山の向こうからこだまが返って来た。


「マグマ大使ーーーーっ」


午後の光を背中に浴びて、山の向こうからマグマ大使が飛んでくる。

夏美たちの願いを叶えるために。地球を救うために。

このテーマだといくらでも続きが出て来るので、また今度。

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