第38話
「お兄ちゃん、フジくん。 ちょっと練習に付き合って」
食堂で食事をしているとつぐみがそう言ってきた。
それに目を見開く二人。
まあ、それも無理もないだろう。
彼女は争いは嫌うが、それでも仲間や大切な人のためなら動く。
それはかたくなに強固となっている。
やりすぎると龍星のおしりぺんぺんにあうからほどほどにだが。
「練習って危ないことしないよね」
「うん、大丈夫」
京里の言葉につぐみは笑顔で答える。
ルイセとポワの毛並みをブラシッグしつつシルトもきれいにしてあげていた。
「いつのまにか仲間が増えていることに驚きはしたが練習とはな」
『すごいね~』
万里も驚いているようでカールはもぐもぐと食事をしながら言う。
「不思議なおじいさん、ですか」
「万里といい、変なところも迷い込むことがあるな」
日菜がつぶやき、陽は万里とつぐみを見ていた。
それから、大きな一目のつかない場所で富士弥と龍星はそこに立つと。
「じゃあ、お兄ちゃん。 フジくん、いくよ~!」
「いくにゃー!」
「ガウウ《私だって!》」
《火球》
つぐみがそういうとポワとルイセを突撃させ、シルトに火球を放たせる。
とっさによけようとするが足元にいつのまにつたがあり、動けない。
そして追い打ちにツタがしなるようにして叩き込む。
とっさに腕で防御するがダメージはなかった。
「うん、初めてにしてはこんな感じかな」
どうやら寸止めしたようだ。
まあ、彼女が本気で攻撃するわけないのだが。
「さっきのはなんだ?」
「なんか、ルイセとポワが突撃してきてシルトが火球を放ったが」
驚きを隠せないでいる富士也と龍星。
「うん、この書を読んで習得したの。 これならルイセたちだけに攻撃させずに援護もできるかなって思って」
自分より長い柄の杖を握りながら笑うつぐみ。
「動きを止めたのはそれか」
「いきなりで驚いたぞ」
『マスター、大丈夫!』
龍星と富士也は納得し、エルはすごい勢いで富士也の鳩尾にタックルし、後ろにもんどりうった。
まあ、エルが心配するくらいだったのだろう。
「エルちゃん、ごめんね。 ちょっと調整もしたかったから」
『ううん、マスターのメタ発言も原因だし。 気にしてないよ?』
苦笑しながら謝罪するとエルは振り返って笑顔を見せる。
「おーい、富士也。 大丈夫か~」
「泡ふいてるな」
万里と陽は富士也に声をかけていたが痙攣している彼を眺めていた。
「いや、救護しましょうよ」
「そうだよ、まったくもう!」
日菜と芹香は富士也を起こしてリカバーをかけると、意識を取り戻す富士也であった。
「カールはあんなことしないようにな」
『はーい』
万里に言われ手をあげて元気よく返事をするカール。
「日菜としてはカールといるのが気に食わないんじゃないか?」
「…………はぁ、ほんとーーーーーーに鈍感ですね。 陽は」
ちら、とその様子を見ていた陽に言われてじと目で見る日菜。
それを不思議そうな様子で眺める陽であった。
「なにかおかしなこと言ったか?」
「十分言ってると思うよ」
陽の疑問に京里もあきれているようである。