第36話 グルーミングをしよう!
綾人のモフモフ好きを大いに表現ががが!!
あの後宿屋に入り、彼女たちを連れて混浴に入り、体も髪も毛並みも洗うと綾人は決めたのだ。
そんなわけで今は宿屋にいるのです。
「ふむ、ひとまず身だしなみだな!」
すちゃっとカバンからブラシを取り出す綾人。
どこかウキウキしているのがよくわかるというべきか。
「ほら、毛の手入れとかしないといけないだろ? だんじて俺が触りたいわけじゃない」
『そう言いながら目がらんらんと輝いてますにゃ』
ブラシを片手に言う綾人に黒い猫又の少女が近寄る。
ブラシを使い毛と髪の毛の手入れの同時にする綾人。
その手さばきはすごかった。
『ふにゃ~♪もっとなでてほしいにゃ~』
とろーりととろけた顔で甘える黒髪ロングの猫又少女。
髪も毛並みもつやつやであるが、頬が上気しているようだ。
いったいブラシをするだけでどうしてこうなるのだろうか……。
「次は私もお願いします」
フェザーオルクの少女はそう言って綾人に近寄る。
そして、こちらもまたとろけた顔で座り込んでしまっていた。
だから、グルーミングするだけでどうしてそうなるのだ。
ちなみにフェザーオルクの少女の髪色は銀色でツインテールに結われている。
そうやって奴隷だった少女たち全員が綾人の手により、毛も肌も髪もつやつやになったのは言うまでもない。
「ふう……。思う存分もふもふしたぜ」
なんかやり遂げた顔で額の汗をぬぐう綾人。
心なしか彼の肌もつやつやに思えるのは気のせいだと思いたい。
ちなみに奴隷の首輪は綾人が取り外した。
かなり強力だったのにそれすらも壊せる彼はすごいと言わざるおえない。
これもモフモフ信仰の愛するがゆえなのだろうか。
『御主人様、これからどうにゃさるんですにゃ?』
さきほどの猫又の少女がゆらゆらと鈴つきリボンをちりんちりんと揺らしながら問いかける。
黒髪はポニーテールにしているようだ。
どうやらあの一瞬で飾り付けもされていたようだ。
「そうだな。 服も見た方がいいだろうな、その恰好はあまりにもひどいし」
『そうですね、せっかく手入れしてもらったのにこの姿はちょっと』
綾人がそう言うとフェザーオルクの少女はうなずいた。
「とりあえず、ブラシはしたから次はお風呂な! 体を綺麗にしないとな」
『はーい!』
綾人に言われて賛成の声をあげる彼女たち。
あの時の警戒はいったいどこにいったのやら………。
そして混浴のお風呂でも、綾人は彼女たちのしっぽと耳と翼のもふもふを堪能していたとか。
すべて終わるととろけた顔で倒れている彼女たちがベッドの上にいた。
おそるべし、綾人もモフモフヒーリングパワー。
ぐう~。
『あ、あの御主人様。 おなかすきました』
ロップイヤーの耳とロップイヤーの大きなまんまるしっぽを動かして恥ずかしそうに声をかける。
「そうだな、そろそろ食事と行こうか」
彼女の言葉にうなずいてぞろそろと宿屋にある食堂に向かう。
「あれま、綺麗になったね。 まあ、あんたにかかればきれいになるか」
とおばちゃんが笑いながら言うとメニューを渡して注文書を片手に注文を聞く。
綾人が彼女らに興味があるものを選んで注文する。
しばらくして注文した食事が届くと彼女たちは美味しそうに食べだした。
おばちゃんはその様子をほほえましそうに見ている。
「ところで、綾人。 この子たちあんたの嫁さんになるのかい?」
「いや、それを決めるのは彼女らだろ。 いや、でも離しがたいし」
おばちゃんのからかいに真剣に悩む綾人をよそに助けられた彼女たちは綾人との結婚を夢みていた。
そのあとは服と装備を買いに向かう。
別に資金に困ってはいないので彼女たちの武具や服にまわしても大丈夫なのだ。
『御主人様、大好きにゃ!』
『ずるい、わたしも~!』
『にゃー、わたしも御主人様に抱き着きたいにゃ』
という会話の中で彼女たちにまとわりつかれて歩きにくい感じになっていく綾人であるが顔は幸せそうだ。
「おかーさん、あのお兄ちゃん変な顔してるよ」
「しっ、見てはいけません!」
子供づれの奥さんは綾人が見えないよう目隠しして離れていく。
「失礼な、モフモフの愛らしさを追求してなにが悪い」
ちなみに奴隷として捕まっていたので栄養不足だったのかそこいらにいる子供と同じ感じのようだ。
まあ、綾人と一緒に経験していけば成長するだろう。
『御主人様、どうかしたの?』
大きな狐耳とふさふさの狐しっぽの亜人《リン族》の女の子が綾人の手をつかんで首をかしげている。
手入れしてもらった毛なみはつやつやである。
『御主人様はどんな服が好き? それを着る!』
同じく狐耳と狐しっぽの獣人の女の子が綾人の背中にとびのって尋ねる。
いま、彼はパラダイスにいるだろう。




