第29話
「ん、万里。 腕に文様が刻まれているぞ」
「んお、本当だ」
赤羽に言われて気づく万里。
袖をまくると肩まで文様が刻まれており、なにか意味深な気がした。
『そら龍紋やね』
「龍紋? なんだそれ」
ユウギのセリフに万里が問いかける。
すると富士也も気になるのかユウギを見た。
『龍紋は契約どしたモンと交わどした証なんやよ』
にこにこと笑いながら万里の腕に触れるユウギ。
それを聞いて、なるほどっと納得する二人。
「え、契約って言っても卵を受け取って名前つけて」
「もしかして、それ自体が」
二人がおそるおそるとそう聞くと彼女は笑顔を見せる。
『御主人、生まれたときすごく喜んでくれたよね。 うれしかったな~♪』
『私も私も!』
カールとエルはどこか楽しそうに笑いあっているようだ。
「確か、他人が持つとかなり重いらしいな」
「え、そうなんですか?」
離れまいとひしっと赤羽にしがみついている鈴。
きょとん、とした顔で見つめている。
「万里の話でもそうでしたね」
「じゃあ、渡そうとしてもはじかれるんじゃないか? 諦めて受け入れろ」
日菜は思い出した様子で言うと海里は万里の肩をぽん、とたたいてそういった。
「それより、キミはここにいた方が安全だと思うのだが。 なぜそれが嫌なんだ?」
「異世界に憧れた口か?」
「異世界に憧れた気持ちはなくはないですけど。 赤羽さんたちと一緒に旅をして知識を得たいんです。
なにもしらずにここにいるなんて嫌です!」
赤羽と万里が鈴を見て言うと彼女はまっすぐ見つめる。
彼女の意思はもじどおり石のように固いようだ。
「とりあえず、ギルドんクエストに行きまひょか」
「そうだな、行こうか」
深紅は笑みを見せ、炎心はうなずいて歩き出す。
赤羽がため息をついてちらりと鈴をみるとついて行きますというオーラをとばしていた。
彼もあるいみ苦労性なのかもしれない。
『お肉~♪お肉~♪』
「どうして性別が女なんだよ」
喜びながら万里にしがみつくカールに困った顔をしながら歩く。
ユウギはべしべしと肩をたたいて頑張れと励ましているようだ。
草原にたどり着くと、そこには巨大なカエルが飛び跳ねていた。
「あ、あれ本当に食べれるんですか」
「ああ、すじがあるが美味いそうだ」
日菜の嫌そうな声に海里はたんたんと答えて、槍を構える。
「すごい…………大きいです」
「その言い方、なんか言っていいのかわからないセリフだな」
鈴が呆然とした様子で言うと赤羽は二振りの剣をもちながら、言う。
「まあ、なんとかなるだろ」
『私も頑張るもん!』
お気楽に言う富士也とやる気を見せるエル。
「やらないと食費がやばいことになるし。 やるか」
『御主人、早く早く!』
『さーて、はんなりいきまひょ』
急かすカールとこぶしを鳴らすユウギ。
それに続いて槍を持ち、地面を蹴る万里たちだった。