第17話 龍星・芹香・つぐみ・京里
龍星たちはとある店に来ていた。
一見普通の店なのだが、なにかが違う別世界につながっているようなそんな感覚があった。
なかなかつぐみが中に入ろうとしないので芹香がつぐみを抱き上げて龍星の懐にいれた。
するとはにゃ~んと言いながらつぐみが垂れた。
なんというかぷち化したような感じである。
「さすが龍星さん、僕にできないことをやってのけるね」
「つぐちゃんはりゅうくんのことお兄ちゃんだと慕っているからね~♪」
「つぐみのお母さん・・・・はるかさんが忙しいときは母さんが面倒みていたこともあるしな」
店に入りながら京里と芹香と龍星は会話をする。
子狼状態でてふてふとついていくルイセはめずらしいのか店内を見ている。
「へ~、めずらしいね? ヴァルキュリアの聖色をもってるなんて?
魔獣使いもしくはビーストマスター・・・・従魔の担い手という子でも十分めずらしいけど」
と、ここで声が聞こえてきたので視線を探しているとドワーフの少女がそこにはいた。
褐色の肌に金色の髪をもち、碧と赤のオッドアイをもつどこか不思議な子だった。
身長はつぐみより低いと思われるだろう。
でも、どこかつぐみと似通っているような面影もある。
「ここの店主か?」
「そうだよ。 おにーさん、わたしがここの店主なのさ。
錬金術でいろいろ作成してあげるよ? 武器とか獣魔の卵とか従魔にできる素養もち方ならスライムかゴーレムかコボルトかな?」
龍星の問いにドワーフの少女はにこにこと笑いながら答える。
ドワーフは妖精族同様に手先が器用で有名である。
もちろん錬金術なども。
「スライムだったら代金どのくらいかかる?」
京里の問いにドワーフの少女は首をかしげながら。
「そうだね、5,600エルムくらいかな」
「じゃあ、はい」
芹香が代金をだとすドワーフの少女は受け取り、まいどあり~と、愛嬌たっぷりに笑って奥にひっこんでいくとスライムの核となる丸いものをもってきて目の前に置いて。
エプロンから注射器を取り出すと・・・・。
「じゃあ、その子を血をもらうね」
「あ、はい」
腕を出すつぐみに注射器をさし、血をとるとありがとうね?と笑顔で言ってから手の平にスライムの核を乗せて血をかける。
すると金色に光りだす核とともにじわじわスライムが作成されだす。
すぐに光は消えて、白いスライムが誕生した中の核は金色なので異常というか稀にみえることだろう。
だが、ドワーフの少女はまるでわかっていたかのように笑みを浮かべていた。
「はい、この子があなたの従魔だよ」
「あ、ぷるぷるしててかわいい」
ドワーフの少女から受け取り、ぷにぷにしているつぐみ。
《主、名をもらいたい》
「ふみゃ!? え、えっと」
ぷるぷると揺れているだけだが、つぐみには聞こえているのだ。
それに若干驚きながらも悩むつぐみ。
「わあ、かわいいね」
「そうだな、つぐみを守ってくれそうだな」
「龍星さんがいれば大丈夫な気もするけど」
芹香は笑顔でスライムを見ており、うんうんと頷いている龍星とそれを見て苦笑する京里。
「じゃ、じゃあ・・・・シルト。 あなたの名前はシルトだよ」
《シルト・・・・盾。 うれしくおもう》
飛び跳ねるスライムにつぐみは笑顔を浮かべていた。
気に入ってくれたのはよほどうれしいのだろう。
「契約完了と名前認証も完了したね、これから大変だと思うけど頑張ってね」
「は、はい! ありがとうございました!」
ドワーフの少女に頭を下げるつぐみ、ルイセも真似するように頭をさげている。
龍星と芹香と京里も続いて頭を下げてから店を出た。
「・・・・・そっか~。 あの子がそうなんだ」
と、意味深なことを彼女が呟いていたことも知らない。
そのまま宿に戻り、つぐみはルイセとシルトと芹香と一緒にお風呂に向かい、龍星と京里も一緒にお風呂へと向かった。
「つぐちゃんの背中奇麗だね~。 この文様は生まれたときからあったんだっけ?
足首にもあるよね?」
「うん、生まれたときからあるよ? なんかね無意識に使い方もわかっちゃうんだけど、それを千里さんとお母さんと美桜さんにいったら自分たちやお兄ちゃんたちの前以外にはけして使わないようにって言われちゃった」
芹香はつぐみの背中を洗いながら言うとつぐみはルイセとシルトを洗いながら返事をする。
不思議そうに首をかしげているのがよくわかる。
背中には白色の羽根がくるぶしにも白色の羽根らしき紋章があった。
そんな会話をしているころ・・・男風呂では。
「ヴァルキュリアってヴァルキリーとかワルキューレともいいますよね」
「ああ、つぐみはなぜかその恩恵があるんだそうだ」
京里が体を洗いながら言うと龍星はうなずいて体を洗いながら答える。
つぐみの出生にはいろいろとあるというのもあるからだろう。