第10話 旅立ち
早朝の榊家にて・・・。
「お兄ちゃん、髪やって!」
「はいはい」
とてとて歩いてきて椅子に座っている龍星の膝の上にぴょこんと乗ると、龍星はくすりと笑い彼女の髪に櫛をとおす。
足をぱたぱたと上下に動かしているあたりご機嫌なのがわかる。
黒いリボンをつけてアホ毛をうかしてポニーテールにする龍星。
我ながら自慢げにうんうんと頷いている。
ちなみに龍星に髪をしてもらうのがつぐみの日課なのだとか。
「わふ~♪」
「毛並みをきれいにしなくちゃね」
芹香に毛並みの手入れのブラッシングを受けて気持ちよさそうにしているルイセ。
やはり似たものどうしだ。
「あらあら、にぎやかね~」
そう言いながらチビ龍とチビ狐の手入れをしてあげている美桜さんがいた。
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それから時間が過ぎて門の前に全員が集合する。
「じゃあ、行ってくる」
「お土産楽しみに待っててね」
「「行ってきます」」
「わふ~《頑張るよ~!》」
龍星・芹香・つぐみ・京里とルイセで旅に出ることになった。
え、狐と龍は?龍星の懐で寝ていますとも。
つぐみ同様に龍星の懐にはいるのが好きなようである。
やはり主に似るのかもしれない。
ちなみにつぐみはルイセの背中に乗っております。
つぐみが乗れるくらい大きくなっているので問題はなかったり。
「気をつけてね!」
「頑張って~!」
「土産楽しみにしてるね~!」
「いってらっしゃいですの~!」
と、瑠奈・希・瑠美・白姫が手をぶんぶんとふっている。
手をふりかえしながらつぐみたちは門を通り出ていくのであった。
「つぐみ、今日もかわいいね」
「はみゅ////」
つぐみを見てほめる京里に対して顔を赤らめるつぐみ。
こうしてほめられるにはなかなかなれないつぐみなのであった。
「・・・・・『だんだんりゅうくんみたいになってる?』」
「そうか? 京里だからそうなるんじゃねーか」
その様子を見ていた龍星は芹香を肩に乗せて歩きながら言うと芹香はうーにゅと悩みはじめた。
猫みたいな彼女は結構人気なのだが、龍星の彼女ということで悔し泣きするやつがいるとか。
「そういえば、秀久に言ったのか?」
「・・・・『うん、きちんとみなもちゃんを守ることと三食食べることと体を大事にすることとかいろいろ言い含めてきたよ』」
龍星のといに芹香は笑顔で彼女の弟分の秀久のことを話す。
彼女にとっては大切な義弟みたいな存在だ、だからこそ心配も絶えないのである。
そんな道中の中ゴブリンの大群がくるのだが、ルイセの前足の鋭い爪の薙ぎ払いで胴体がぶちぎれるもの続出していく事態だったり、潰されたりするものがでてきてつぐみの顔色が悪くなっていくのであった。
まあ、冒険するには通らないといけない生き物の死なのだから仕方ないだろう。
「やはり、ルイセくらいだと」
「ああ、相手にならんな」
京里と龍星はその様子を見て苦笑を浮かべていた。
「ガウウウ!!《うりゃりゃ~!!》」
追いかけたり、顎でくわえて頬投げたりしているあたり遊んでいるようにも思える。
阿鼻叫喚な光景が現在進行形で行われているのでつぐみの顔色はますます悪くなっているようだ。
それみてごめんね、つぐみと謝っている京里がいた。