序章 10
「え、ケイくん。 冒険者に合格したの?」
「うん、父さんに見てもらってね」
丸太に座りながらつぐみは京里とそんな話をしていた。
それを聞いてつぐみは不安になっていた。
離れるのは寂しいし嫌だからだ。
龍星のときもそんな気持ちがあり、ある行動したら美桜さんに止められてなくなく諦めたのだ。
だが、今回はどうしてもついて行きたいという意思があった。
「ケイくん、あたしも」
「ダメだよ、つぐみはお留守番してないと。 お土産は買ってくるからさ」
期待をこめて見上げて言うがばっさりと断られた。
しょんぼりと頭をさげるつぐみに京里は苦笑を浮かべていた。
「お兄ちゃんもそうだったし、ケイくんならって思ったのに」
「そんなに拗ねないで」
不機嫌そうに言うつぐみに京里は困ったような様子で見ている。
髪を優しくなでてやる。
そんな会話をして別れることに、つぐみは家に帰るも不満顔であった。
「どうしたの、つぐみちゃん」
「あ、おかあさん。 あのね、ケイくんの旅についていきたいんだけど。
断られちゃった・・・・」
ソファーでうつ伏せで寝ていると美桜が近寄り、聞いてきたのでそう答える。
しょんぼりとした空気がそこで満ちている。
「それは仕方ないわ。 つぐみだってわかってるでしょ?」
「でも・・・」
優しく膝にのせて頭をなでる美桜に目をほそめながらうっとりしているつぐみ。
「男はたとえ険しくてもいくもんなのさ」
「・・・・・・お兄ちゃん、冒険するときもそういってた」
隣に座る龍星をじと目で見つめるつぐみに苦笑するのであった。
髪や頭をなでてもらい、おとなしくするつぐみ。
二人になでてもらうのが大好きだからこそであろう。
夜になると、つぐみは龍星のベッドに忍びこんでくっついて寝ていた。
それに優しい目で見ながら頭をなでる。
かわいいパジャマを着ているつぐみはなぜか似合う
ちなみにそろえるのは龍星と美桜さんだ。
「おやすみ、つぐみ」
「おやすみなさい、おにいちゃん」
そう声をかけながら眠りはじめる。
ぎゅーと腕に抱き着いて眠るつぐみはとてもすこかそうである。
今朝、龍星が目をさますと寝ているつぐみの頭を優しくなでていた。
「こんなに甘えん坊なのも仕方ないかね」
苦笑しながら抱き起してあくびしながら、部屋を出て階段を下りていく。
つぐみはすやすやと気持ちよさそうに寝ているようだ。
長い髪はゆらゆらと揺れている。
「あら、つぐちゃん。 かわいいわね~」
リビングに入ると笑顔で出迎える美桜は龍星から受け取り、ふろ場へと向かった。
「冒険いけるのー!?」
「つぐちゃん、そんなに走り回らないの!」
ふろ場から飛び出たつぐみをぱっと抱き上げる美桜。
みゅーみゅーと鳴きながらじたばたとする。
「冒険に行きたいんだろ? なら、奇麗にしなくちゃな」
龍星にそういわれてなでられるとおとなしくなり、お風呂場へと連行されるさまはまさしくドナドナである。
それからしばらくしてふろ場から出てきたのはつぐみである。
かわいらしい恰好がとても似合っているようだ。
「お兄ちゃんと冒険♪お姉ちゃんと冒険♪ しろちゃんと冒険♪ きりちゃんと冒険♪らいおにーちゃんと冒険♪」
うきうきしているのが龍星にも美桜にもみてとれる。
こころなしかポニーテールが揺れている。
「そんなにうれしいか?」
「うん!」
龍星に問われて笑顔でうなずくつぐみ。
「つぐちゃん、来たよ~♪」
「きりちゃん!」
ひしっと抱きしめあう二人はほんとうに仲睦まじい。
黒髪のロングヘアーの少女が時雨希林というつぐみの親友だ。
とても仲がよくカノジョの感情はアホ毛でわかるほどである。
「・・・・・(わたしもわたしも~♪)」
「わたしもですの♪」
そう言いながら芹香と白姫もつぐみを抱きしめる。
同じく塗ればね色の黒髪のポニーテールの少女は瀬川芹香というつぐみの親友である。
もう一人は榊白姫といい、芹香たちの妹分である。
「やれやれ、結局こうなるのか」
「まあ、仕方ないだろ。 勝手に出て旅でもされたら困るしな」
雷のあきれたようすに龍星は苦笑する。
身長180cmくらいの髪は黒で前髪だけ赤く染めているザンギリ型のショートヘアの青年——彼が時雨雷という。つぐみたちのいっこ上である。