敵はスイートポテト
腕時計で時間を確かめ、俺はため息を吐いた。
時計の針は7時45分をさしている。
7時には間に合うと思ってたんだけどな・・・。これは大遅刻だ。
いや、実を言うと、7時ちょっと前には部活は終わっていたんだ。
終わっていたんだけど、色々あって・・・。
その色々っつうのが戸締まり当番にあたっていた事だったり、調理部が手作りスイートポテトをお裾分けしに来た事だったり。
・・・ちきしょぉ、なんで俺スイートポテト好きなんだよっ。余ったスイートポテトをかけたジャンケンにまで参加してしまったではないかっっ。あぁくそっ。
んでもあのスイートポテトは美味しかった・・・。
ジャンケン、あの時チョキださなかったらもう一個食えたのに・・・。なんでチョキだしたんだ、なんでチョキだしたんだよ俺っ。んでもってどうして中澤はグーだったんだ。ジャンケンで勝った時のアイツのあんのニタニタ笑顔、すっげえムカつく。しかも野郎わざわざ俺の目の前で食いやがって。やっぱあん時竹刀で一発おみまいしてやれば良かった・・・。
でもまぁそのスイートポテトのせいで俺は尊を二時間近く待たせちまったことになるからな・・・。この機会にスイートポテト嫌いになるか、・・・いや無理だな。スイートポテトは無理だ。嫌いにはなれない。
因みに、決して俺は尊との約束を忘れてたわけじゃない。スイートポテトだって惜しい気
したが一口で頂かせてもらった。ジャンケンだって五分くらいで終わっていたし。
スイートポテトだけだったら俺は尊に二時間待たせずにすんだんだ。問題はスイートポテトじゃない。戸締まり当番だ。
当たり前の事だとは思うが、戸締まり当番は部員全員が帰るまで帰れない。普段はすぐ帰宅する良い子の剣道部員は、調理部がお裾分けに来た日は殆どの部員が遅くまで残る。
これは剣道部に限ったことじゃない。他の部活もそうだ。
それというのも、そのお裾分けにやってくる調理部の中に、学園一可愛いと人気な二年がいるからだ。名前は・・・ゆ、ゆ・・・ユキシロ?うん、確か雪城。下の名前は知らないし、興味もない。あ、断っておくがここは男子校。雪城はれっきとした男だ。
尊みたいな童顔とちがって少女みたいな容姿をした小柄な雪城は性格も明るくさっぱりしていて、学年問わず人気がありモテたりもしている。
男と付き合ってる俺が言えた事じゃねえが、・・・この学校はアレかホモが多いのか。それとも女に飢えてるとか?
っとっと、話を戻そう。
その人気な雪城が来るとみんな競って雪城に話し掛ける。んでそのまま話し込む。
雪城ファンの部員が部室で雪城と話し込むイコール戸締まり当番の俺はそれが終わるまで
帰れない。
図書室に行けない。おーのー・・・。
結局アイツら、30分も話し込みやがって。全く・・・傍迷惑な奴らだ。
って、そうこうしている間に8時になるっ!あぁくそっ。
無意味が嫌いゆうわりに、俺が一番無意味な時間をおくっているのではないか?
俺は八つ当たりしたい気分を抑え、静かに図書室の扉をあけた。