幼き日
拷問など、多々グロテスクな描写が有りますので、そういった表現が苦手な方は読むのをお止めになるか、十分に注意した上でお読み下さい。
❶
待って、置いて行かないで。
もう、あんなことはしないから。
小さな手を必死に伸ばし、縋り付こうとしても両親は振り返らない。
幼い妹を腕に抱く時にだけ見せる、あの嬉しそうな、喜びに満ちた顔を『私』にも見せて欲しい。
全ては笑顔の為。
『私』にも、あの笑顔を見せて欲しいだけなのに。
どうして見せてくれないのだろう。
振り返りもせずに歩き去って行く両親の背中を見つめながら、不意にある考えが浮かんだ。
もう一生、両親は『私』に笑顔を見せない。
父と母は『私』を捨てたのだから。
『私』は両親の元へと駆け出した。
手には隠し持っていた短剣を握って。
最初は父からだ。
女より男の方が力が強いということは、この身をもって知っている。
二人に気付かれないように父の歩くスピードを見計らって、切られると必ず歩けなくなる足の腱をスパッと切った。
「ぎゃあ!!」
父は悲鳴を上げ、その場に倒れ込んだ。
這い蹲って逃げようとしていた。
「ひィッ!お、お願い、止めてちょうだいっ!悪かったわ、お願いだから殺さないでぇぇえぇえッ!!」
母は腰を抜かして、『私』を見上げて懇願した。
もう遅いのだ。
何もかも。
母を無視し、『私』は父の上に馬乗りになった。
腕を高く上げ、左胸…心臓に思いっきり、短剣を振り
降ろす。
ズブブ…と父の心臓に短剣が深く突き刺さった。
父は口と刺された場所から大量の血を流し、ハッ…ハッ…と荒い息を吐きながら、ゆっくりと死んだ。
それを見た母が大きく目を見開いて「嫌ぁぁぁあっ!!」と絶叫したかと思うと、手近にある石を拾い上げ、こちらに投げ付けてきた。
大抵はハズレ、ほんの少し掠るだけだったが、最後に投げてきた石がこめかみに当たった。
小さな痛みを伴い、ツツーッと血が流れた。
それを軽く拭い、父の体から短剣を引き抜いて、母と向き合った。
憎悪に染まった瞳で睨まれ、本来なら美しい筈であろう母の顔は、醜く歪んでいた。
「お前を死してもなお、呪ってやる。お前さえ生まれて来なければ…私達は幸せだった!!絶対に許さない…許さない許さない許さない許さない許さない…」
母の喉を躊躇いも無く、切った。
ドサリ…と母の体が地面に沈んだ。
母と父の血で汚れた地面に『私』の顔が映る。
真っ赤に染まった自分の顔は、ただただ無表情だった。
『笑顔』はもう、永遠に消えた。
初心者で至らぬ事ばかりですが、どうぞよしなにお願い致します。