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異世界転生

 次に目を覚ました俺を迎えたのは――カイゼルヒゲのおっさんだった。普通の人間の十倍くらいの。

 泣いた。俺は泣いたね。久しぶりに声を上げて泣いた。

 いきなりいかついオッサンが視界いっぱいに映ったら泣きたくもなる。

 反射的に手を振り上げて―――気づく。

 ちっさ。なんだこの手。ちっさ!声も「ふえぇ」とかになってる。

 そういえば転生って言ってたな。ようやくあいつとの会話を思い出す。

 怪物倒せ、って話だったからそのままの体で転生するのかと思っていた。しかし転生と言ったら生まれ変わりだもんな。赤ん坊からスタートか。



「おやおや、あなたのお顔が怖いから泣いちゃったじゃないですか。ふふ。」


「いや待てっ。泣くな。どうして泣く!?言いたいことがあるならはっきり言え!」



 寝起きにお前の顔見たからだよ!と言いたくなったが口から出たのは「ふえぇ」だった。

 周りを見ると目に映ったのは、たおやかに微笑む髪の長い品の良さそうな女性。彼女がこの体の母親だろうか。ベットから身を起こし、困ったように手を頬にあてている。

 次にメイドさん。ただしご高齢。どうみても「ばあや」と呼びたくなる容姿だ。そんで困惑した視線は母親と同じくこちらを向いていた。

 んで恐らく困った人であるのは目の前にいるカイゼル髭。恐らく父親であろうがっしりとした体格の男性だ。

 見るからに泣き喚く赤ん坊(俺)を持て余してオロオロしていた。俺も俺で感情のメーターが振り切れたように泣いていた。

 頭では冷静なんだがなぁ。というわけでもう少し困っててくれパパン。






 さて、どうしたものか。

 今は夜。近くにメイドさん・・・というか女中さん?みたいな女の人がいる。あの婆さんではない。

 こちらがおとなしく眠っていると思って部屋から一旦出て行った。しばらくは戻ってこないことを祈る。

 部屋の中は落ちてきた時も見たように西洋建築らしい内装になっていた。詳しくはわからん。

 なんとか鑑定団とかに出てきそうなものが置いてある。あの花瓶とか少しお高めだ。たぶん。

 あのクソカタカナは忌々しいが、こうして転生したからにはこの体で生きていかねばなるまい。

 さしあたって状況確認だ。



・死んで転生して今は赤ん坊。

・手持ちは「異世界転生ノススメ」。あとはこのガラガラ。

・将来12体の化物と戦わなくてはならない。

・普通の人に比べて魔力量が増加。魔法も強化されているらしい。

・スキル【鑑定眼の御手】【剣豪の系譜】【妖精眼の射手】を持っている。

・家族は父母、兄2人を確認済み。メイドさん多数。

・一応言葉は通じる。



 目が覚めたあと、小生意気そうな子供が部屋に来ていた。あれが俺の兄達らしい。他にもいるかもしれないが今んとここんなもんか。

 「ススメ」については念じながら手を握ると、手の甲から生えてきた。慌てて押し戻したが。

 魔法については確認のしようがないな。使い方もわからんし。

 あとは・・スキルか。どう使うんだコレ?とりあえず想像しやすい鑑定を使ってみるか。

 ガラガラを見つめながら心の中で鑑定と叫ぶ。

 ・・・・。何も起こらな―――ん?視界の端に文字が浮かぶ。

 これは呪文か?頭の中で読み上げても何も変わらない。フム。声に出して読んでみるか。

 鑑定ッ!

「ダーッ!」

 ・・・・。赤ん坊だったよ俺・・・。

 言葉は理解できるが、自分から相手へは伝わらない。赤ん坊だから、という理由ならいいが、翻訳がかかっていないなら少し面倒なことになるな。


 声に反応したのかメイドさんが戻ってくる。現状何もできないのか。気分が落ち込む。

 そのままメイドさんの綺麗な子守唄を聞きながら脱力していた。





 次の日。

 俺はなんとか動こうと試みたが、生まれたばかりの体はまだ筋肉が弱く、ハイハイもできないらしかった。

 ますます暇になる。隙を見て「ススメ」を呼び出したが、あまりの重さに押しつぶされた。

 慌てて消したが危なかった。気を付けないとシャレにならないな。

 後々そういえば「ススメ」は白紙だった、というのを思い出してひとり凹んでいた。

 手元に本があったら開く自分の習性が恨めしい。




 結局俺はひまを持て余したまま半年以上を過ごすことになる。

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