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前世日常

「ゴハン〜、プリィーズ!」


「ゴハン〜、ナァウ!」


 小学生の弟と、幼稚園を卒業したばかりの妹が、遊びながらメシの催促をしてくる。

 最近のお気に入りは某特撮ヒーローものだった。

 今しがた放送が終わったばかりで、テンションが上がっているようだ。やれやれ、これから朝飯だというのに。


「エクスプロージョォーン」


「「あああ!燃えたあああああ!」」


 爆発する魔法の声真似をすると、大騒ぎする。

 まったく、騒がしいな。思わず苦笑してしまう。



 学校では生真面目、石頭、と評されるボクでも、親しいやつには冗談のひとつも言う。面白いかどうかは別だけどね。


「ほら、メシだよメシ。さっさと食べないと次のが来ちゃうよ」


 そう言ってよそったご飯を差し出すと、二人共大慌てで食い始める。


 今日は時間も材料もないので、簡単に作った味噌汁と野菜炒めだ。親の仕事が朝早かったり、夜遅かったりでボクが作ることも多い。

 大体がざっぱに切ったり炒めたりするだけの粗末なものだけど。



 この時間帯にテレビを見ながらメシを食うのもすっかり当たり前になった。以前は興味なかったアニメを見るようになったのは図書室で話をする友人たちの影響かな。


 本好きのボクは人と話す時間があるなら一文字でも読む方が良い、と考えていた時期があって、大学に進んだ後も図書室に入り浸りだった。


 そこで同じ講義をとっている人がいて、何度か話をするうちに遊びに行くような仲になった。

 いわゆるオタク、と呼ばれる種類の人たちだった。



 あいつらの布教活動によって同類になったが、やはり活字から離れることはなかったな。「活字中毒」などと揶揄されていたのもいい思い出。


「そろそろボクは出かけるよ?」


「はーい行ってらっしゃーい」


「気ぃつけろよー。にーちゃん」


「二人もね。火は使うなよ?」


「「はーい。」」


 2人を残して家を出る。

 年の離れた兄弟を残していくことには抵抗があるけど、少し離れる分には問題ないだろう。講義があるわけではなく呼び出しを受けただけだし。



 電車に揺られながら、これからのことを考える。

 今日呼び出してきたのはあまり縁がないグループの女子だった。大学に遊びに来ています、みたいな感じが印象に残っていて苦手だ。

 自分と全く違う、というのもあるが、こちらを見下し、笑いものにしていると、噂で聞いていたからだ。


 しかし前日の講義の後、大事な話があると言われて人気のない備品置き場に呼び出されていた。



 これはもしかすると・・・、などといかにも青少年的な考えがわく。

 「グループのみんなはああ言ってるけど実は…………」みたいな。


 ボクだって若い男だ。例え枯れきってると言われようが、相手が苦手なタイプだろうが、誰ともつきあったことがなかろうが、若い男だ。

 ないとは思いつつもこんな妄想をする程度には欲もある。

 まぁどうせなにか頼みごとだろうけどね。パン買って来い、的な。



 男としては平均的な身長、顔立ちがガラスに映っている。逆に特徴ないのかも。

 妄想に引きずられたのか足が軽くなっているような気がする。ボクは挙動不審にならないように気を張りながら、開いた電車の扉から歩き出した。

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