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模擬戦


 歓迎会まであと二日、となったある日。

 いつものように広場で瀬奈たちの鍛錬をしているときのこと。

 今日は珍しくいつものメンツとはまた別の人物が、ここを訪れていた。


「なに?ここの警備兵との模擬戦?」


「ええ。英雄様がたがよろしければ、ですが……」


 俺の目の前にいるのは、金属製の鎧を身につけた大柄な男だった。

 このクソ暑い中、こんな装備を身につけるのは余程の緊急時か、そうでなければ公式の、例えば要人の前に出るような時だ。

 後ろを振り返って、未だに鍛錬中の瀬奈たちに目を向ける。

 かしこまる必要があるとすれば、こいつらの存在を気にしたためか。


「…………なんで俺に聞くんだ?あいつらに直接聞けばいいだろうに」


「ユージーン様が英雄様がたに戦闘のイロハをお教えしてらっしゃると聞いて、それならば筋を通さなければ不義理となると考えまして」


「名目上は俺はただの一般人だ。そこまで気を使う必要はない」


「いいえ!まさか先の襲撃の一件を見てあなた様をあなどる輩などおりますまい!名目が英雄になってないだけで、我らにとっては尊敬に値すると思っております」


「大仰な……。取り敢えずあいつらに聞いてくる。返答はそれからで構わないか?」


「はい。勿論です」


 ったく。すっかり窓口か保護者のポジションじゃねぇか。面倒な役回りだ。

 兵士の話をまとめながら、瀬奈たちの方へと歩いていく。

 常にはない闖入者に興味を惹かれていたのか、瀬奈たちはひとり残らずこちらを見ていた。隅っこのほうで大人しくしていたルイ達も寄ってくる。


「ハイ集合ー。皆さんにはこれから殺し合いをしてもらいます」


「ッ!?」


「また古いネタを持ち出してからに……」


「あ、ネタ!?冗談だったんですか!?」


「まぁな。緊張はほぐれただろうから本題行くぞ」


 明らかに肩に力が入っていたので軽いジャブだ。

 先程の兵士の話を噛み砕きながら話していく。


 曰く、襲撃事件で落ち込んだ士気を発揚させるために、名高い英雄に視察に来て欲しいこと。

 その際に是非に手合わせをしてもらいたいこと。

 かなり装飾過剰なことばが使われていたので、かなり削って率直に言うとこういうことだ。


「恐らく探り4割、言葉の通り士気高揚のためが5割くらいだな」


「残りの1割は?」


「あわよくば取り込んでおきたい、とかの雑味を総合して1割だな」


「雑味って……」


 さすがにそこまで細かいところは知らん。

 さて、肝心の手合わせだが、俺としては受けても良いんじゃないかと思ってる。

 俺の手ほどきだけじゃなく、ちゃんとした正規の剣筋を見ておいたほうがいいという判断だ。

 だが、探りと言ったようにこちらの情報も漏れ出す可能性がある。

 まぁスパイどもからチョクチョク情報は行ってるだろうから、そこまで警戒する事じゃないが。


「判断はお前らに任せる。行くとなれば俺も一緒についていく」


「うーん……視察というか、そういうのは歓迎しますけど……」


「セナっちやロベルトはまだしも、ウチやヨッシーは微妙なところやな」


「負けるとがっかりされるだろうからな……。『俺たちより弱いのが英雄か』なんてな」


 ああ、そういう心配もあるな。

 連中の抱いてる幻想を打ち砕くために、一度はやっておいても良いと思うんだが。


「私は一度相手をしておきたいのですが」


「俺も。いつも同じくセナちゃん相手だと偏っていくからな」


「ウチは……パスやな。ガッチガチのヤローと組手する気はないで。ウチの珠のお肌に傷がついてまうやろ」


「球のおバカ……」


「なんや言いたいことでもあるん!?」


 別に……。


「僕も遠慮しておきます。人と打ち合うほどの実力がついてないだろうし」


 瀬奈・ロベルトが参加で、こなみ・田中が不参加か。

 まるっきり武闘派・非武闘派で別れたな。なるべく参加してもらいたかったんだが。

 半分は参加するから良しとするか。向こうさんもそれで納得するだろうし。


「ではそういう内容で返答してくる。視察自体は参加するか?」


 頷かれたのでこれで最終決定だ。

 律儀に直立不動で待っている兵士の元へと戻り、出席する旨を伝えた。

 他にも、かしまし娘ども4人を連れて行ってもいいか聞くと、思ったよりも色よい返事が返って来た。

 どうやらルイやチャルナの活躍が俺と同様に伝わっているらしい。龍の腕を切り落としたとして人気があるとか。

 ミーハーな連中め……。




 指定された時間になると兵士が部屋まで迎えに来た。

 汗の始末などを済ませた全員と、ぞろぞろと連れ立って後についていく。

 望翠殿そばのいつも使っているところでやるのかと思っていたが、そうではないらしい。

 外に出てしばらく碧湖に沿って北に向かって歩く。

 この辺まで来ると望翠殿の敷地とは言えないが、俺やルイたちが居るなら不足の事態にも対処できるだろう。

 なにより人目に付く。

 陰謀を企てるような奴が迂闊な真似はしないだろう。


 しばらくすると砦のような場所が見えてきた。

 望翠殿のように、他の建物と違って石造りの頑丈そうな建物だ。例の白いやつではない。

 ん……?屋上に何か見えるな。アレは…………巨大な設置型の弓矢のように見える。それと大砲が何門か空に向けられているのが確認できた。

 弩砲バリスタか。本来なら攻城兵器のソレを、しかも街道ではなく湖の方角に向けているのはどういう理由なんだ?


「アレが気になりますか?」


「ん?ああ。ちょっとな」


 俺の視線に気づいた、というわけではないだろうが、兵士がこちらを振り返って訪ねてくる。そもそも俺たちに先行している兵士が、俺の視線に気づく訳が無い。

 というか微妙にドヤ顔で顔がテカっている。

 瀬奈たちに良いところを見せたくてタイミングを伺っていたのか?


「アレは対炎龍用の設置砲台です。100年に一度、眠りから覚める炎龍に対抗するために制作されました」


「対炎龍用?俺たちが戦った時にはそんなもの見た覚えがないが……」


 考えてみれば来ると分かっている災厄に対処していないわけないか。

 だが、望翠殿まで降りてきた時には、ほぼ人力でとしていたはずだ。


「そこを突かれると痛いのですが……あんな状況でしたからね。砲手も魔物の対処におわれていたでしょうし。望翠殿あそこは最終防衛ラインの内側にありますが、やすやすと侵入されてしまいました」


「そんなんで大丈夫なのか」


「対炎龍用の兵器とは言え、討伐するためのものではなく追い払うためのものですからね。内側に入り込まれると対処は困難になります」


 そんなものか。

 まぁ、あの時の望翠殿には各国の王族がいたし、命中精度が大雑把な大型兵器を向けるわけにはいかないか。


「こいつが使えりゃ、俺もいくらか楽だったんだがなぁ……」


「あんなもんを向ける相手と戦ってたん?エンリュウってもしかして……」


「想像のとおり、馬鹿でかい空飛ぶ火トカゲだよ」


「おお、ドラゴン……!」


「いいね。ファンタジー」


「馬鹿でかい……って、どのくらいのですか……?」


「全長30メートルはあったな」


「「「「………………」」」」


 瀬奈たち召喚組が一斉に押し黙る。

 呑気に感心してられるのは、あくまで自分に被害がこない時だけだ。

 ビル10階建て以上の大きさがある化物に襲われたい奇特な奴は、この中には居ないようだった。




 石造りの砦の中はヒヤリとした空気が漂って――――いない。

 クソ暑い熱気と酸っぱい汗の臭いが充満している。

 剣道部の防具を思い出す饐えた匂いがするな……。


「奥で選抜メンバーが待っていますので、ロベルト様、セナ様は左の控えの方で戦いの用意を。その他の皆様は真っ直ぐ奥の鍛練場へ」


「俺はこのままでいい」


「私もです。重量が増すとスピードに影響が出るかもしれませんから」


 瀬奈はそう言うが、念の為に買ってこさせた簡素な革鎧を身につけさせている。ヘッドギアっぽい頭装備も一緒だ。

 いくらなんでも普段着で戦わせるわけにはいかないからな。


「では、皆様一緒にこちらへ」


 見るからにそういう装備だったので、兵士も慣例的に聞いてきただけだろう。

 無骨な装飾のない扉に手をかけると、ちょっと勿体ぶってから押し開いた。


「総員集合ぉッ!!整列!点呼始めッ!」


 俺たちを案内してきた兵士は入っていきなり怒号を上げる。

 その声に場内にいた筋骨隆々な兵士達が集まってくる。

 部隊長か、それ以上の役職の者だったのか。確かに平の兵士にVIPとの交渉・案内を任せるには力不足すぎる。


 ――――逆に言えば、この『20にもなっていないガキの集団』がVIPに見られているということで。


「………………」


 分かっていながらも違和感を覚える。

 いくら伝承にうたわれる英雄とは言え……そんなものはカビの生えたお伽噺に過ぎない。そのはずだ。


 だが……目の前に整然と並ぶ屈強な男たちはそうは考えてはいない。

 本気でこちらをそれなりの実力者として扱っている。

 俺だけでなく、戦闘用の装備を身に纏った瀬奈たちだけでもなく――――なんの力もない、田中のことまでもだ。

 スパイどもを通じて、田中の実力はもうバレているはずだ。

 それでも、である。


 この世界では英雄は信仰の対象である。

 そんな常識ことはすでに分かりきっている。

 だというのに…………なんだ?この不快な違和感は……?




「――――第9班35名、点呼終わりッ!」


「計190名、総員、気をつけぇッ!」


 俺の思考が逸れているあいだに整列が終わったようだ。…………と、視線を上げて別のことに気づく。

 鍛練場にずらりと並んだ男たちは、妙なところがあった。

 獣人や竜人、ドワーフがいるのはまだ分かる。夏の大陸の他種族の多さは今更だ。

 だが――――


「な、なぁユージーンさん?なんでこの人たち、バラバラの鎧・・・・・・を着とるんや?」


 そう。ヤケに多い人族の鎧が……統一されていない。

 なんというかまるで連合軍のような寄せ集め感がある。

 ――ん?連合軍?


「…………ひとつ聞きたいんだが、俺は『ここの警備兵』と聞いたんだが」


「はい。『ここの警備に“協力”してくれている』各国の兵士の皆さんです」


「…………ちッ……」


 ハメられた、というにはあまりにも稚拙。

 そもそも、昨日まで警備兵の中に別の大陸の兵士がいたことはない。

 明らかな屁理屈ウソだ。こっちから抗議すれば、すぐにでもこの集まりは無かったことにできるはず。


 だが、ソレをすれば果たしてどうなるのか。

 『魔人の協力者疑惑』のある俺が、『英雄』と『他国の者』との接触を阻んでいる、という見方をされる。


 この際、それが事実かどうかは関係ない。

 なにせここには、『証人』がたくさんいる。

 他国の紐がついた、証人が、である。


「面倒な……意趣返しのつもりか」


「え?なにか言いました?」


「いや、なんでもない」


 ならば、当事者のこいつらに断ってもらうか、と思ったが……こいつらに断る理由がない。

 スパイどもにすら気づいていない連中が、ココに居る兵士たちの狙いを見抜けるとは思えない。

 兵士たちは、瀬奈とロベルトの戦力を推し量るために、試合をしたいのだ。それと、俺への嫌がらせを兼ねている。


 いくらスパイどもが情報を流しているとは言え、歓迎会前に詳しい戦力データが流出するのは避けたい。

 この国の兵士くらいなら問題ないかと思って即行拒否しなかったのだが、甘かったとしか言えない。

 だが、表立って拒否する方法もないのなら致し方ない。


「流石に全員を相手にしろなんて言わないよな?」


「はい、それは重々承知しております。英雄様がたの疲れのでない範囲でいいのでお願いします」


「そうか。――――だが、ちぃとばかり人数が多すぎるようだな。できれば『各国の協力者』の皆さんと戦えれば、それに越したことはないだろう」


「え?は、はぁ……それはそうですが……」


「ここまでお越しいただいて、手ぶらで帰すわけにはいかないもんなァ?」


「はい」


「模擬戦に出るやつのリストはあるか?」


「ええと……、こちらに」


 ふむ……各国の隊の中からひとりふたり選出されて、その上で順番が定められている。瀬奈たちが疲れてしまったら、あとの連中は戦えない事になる。

 全員で……20人ちょいか。


「俺も参加しよう」


「え……?」


「だから俺も参加すると言っているんだ。それとも何か?まさか英雄様に指導している、この、俺じゃ不満だとでも言うのか?」


「い、いいえ!まさか!…………で、ですが、わざわざユージーン様のお手を煩わせるわけには……」


「さっきも言ったが他国の皆様を手ぶらで帰らせるような真似、させるわけにはいかないんだろ?遠慮しなくてもいいって」


「………………………………………………。はい……」


 これでよし。

 これで瀬奈たちに当たる人数が制限できる。あくまで『訓練』という向こうの提案に沿った形なら、表立って問題にもできないだろう。

 後は俺の頑張り次第か。





「ぐあッ!?」


「次ッ!どうした!かかってこい!」


「くッ……!うるおおぉぉぉぉぉぉぉッ!」


「遅ぇッ!」


 鈍器にまで切れ味を落として精製した剣で、赤い騎士の意識を刈り取ると、その身体が床に落ちる前に別の騎士が突っ込んでくる。

 体を低くかがめたところに俺の膝蹴りが側頭部にヒットする。

 一発で意識をなくすまでには至らないが、それでも戦意を削ぐことはできたのか、これ以上はこちらに攻撃してくることはなかった。


「馬鹿な……!?我らがこうも容易くやられるなど……!」


「いくら武器精製の魔法とは言え、ここまで戦力差が生まれるわけが……ッ!」


「これでラストッ!!」


「ぎッ!?」


「かはッ!」


 隅っこでグダグダ言ってる二人組をまとめて薙ぐ。

 これで俺の担当分はおしまいだ。

 足元には今まで戦っていた騎士が15・6人ほど、ズラリと這いつくばっている。

 技量的には俺以上の者ばかりだったが、身体機能上昇(大)で無理矢理に押し切らせてもらった。


「こっちはこれで終いだ。問題は向こうだが……」


 視線を流すと壁際に並んでいた見学の連中がビクリと体をすくませた。

 代表以外はこうして見学に回っていたのだが、これで牽制になっただろうか。


「無茶が過ぎるのです……。代表ということは実力者が勢ぞろいしていたはずなのです……」


「ま、とは言ってもユージーンだからねー。ルイちゃんも呆れてるだけで驚いてはいないでしょ?」


「うにゃふー」


「チャルナさんは余裕過ぎてあくびしてますよ」


 かしまし娘どもはなんか言ってるが、ひとまずは無視だ。


「………………」


「………………」


「……どうした?」


 田中とこなみが放心中だ。

 ぽかんと口を開けて目を丸く見開いている。


「…………いや、いやいやいやいや!あ、ありえへんやろ!?格ゲーでもあるまいし、一人で十人相手にするなんてできる訳あらへん……!」


「しただろ?今、目の前で」


「それがありえへんっちゅうねん!」


「凄まじい動きでした……BSバトル・シュミレーションのトーナメント決勝でも通用しますよ」


 いまいち田中の賞賛は分からん。

 さて、瀬奈とロベルトはどうなったかね。




「ふッ……!美少女の剣士スパダッチーノとかならまだしも、 むくつけき野郎ウォーモは勘弁願いたいねッ!」


「ぬッ……!」


 ロベルトの神器……明らかに巨大な打撃武器の範囲外で警戒していた兵士の身体が宙に浮く。

 攻撃されて吹き飛ばされた、というわけはない。

 逆だ。ロベルトに引き寄せられて・・・・・・・いく。


「くッ!?魔法か?」


「残念。違うんだなー。答えの出ない問答は、夢の中でやってくれ、よッと!」


 中を滑るように飛ばされた騎士にロベルトの神器が食い込む。

 そのまま声もなく地面に叩きつけられた。

 一応手加減はしているようだが……あれはしばらく打撲で苦しむな。


「ならば……!」


 離れていても引き寄せられるくらいなら、と、残った騎士の一人が突っ込んでいく。

 が、その右足が途中で不自然に跳ね上がった。


「おわッ!?」


 そのまま体勢を崩して倒れる騎士。

 不自然に上がった足だけは高い位置にあるが、そこに何らかの力が加わっているのだろう。

 そして不可視の怪物に捕まったかのように、ズルズルと地面を引きずられていった。


「はい、いらっしゃーい」


「あ……」


 突きつけられた棍棒を見て、騎士の方は敗北を悟ったらしい。

 抵抗するのを止めて剣を離し、両手を上げて降参のポーズをとった。


 あれがロベルトの『アトラクション』……引力だ。

 どこまで力が及ぶのか、どれほどの力が使えるのか、精密な力の行使は可能なのか……。

 そこらへんはロベルトの成長によっても変わってくるのだろうが、今のところは鎧を纏った成人男性くらいは余裕で動かせるようだ。

 見たところ中々使いこなせているようだし、戦力的には申し分ない。


「はぁ……これ、女の子に使ったら俺のところに女子が殺到するんだよな……。つかちゃダメかな……?」


「…………」


 駄目だこいつ。早くなんとかしないと。





 色ボケ男はさておいて、瀬奈の方は……。

 なんだ。すでに終わっているのか。


「目に見えないほどの速さ……紛れもなく英雄の力だ……!」


「なんと美しい……!あの艶やかな黒髪、ブラックオニキスを引き伸ばしたようだ」


「いいや、黒真珠のほうが艶がある。なんとも不思議な容貌だ。戦っている最中のお姿を捉えられなかった己の目が憎い……」


 地面に膝をついている連中が口々に誉めそやしている。

 妙なところでファンを増やしているな、瀬奈は。

 話の内容からして『アクセラレーター』を使ったようだ。

 できれば手の内は明かしたくなかったが……まぁ、時間の問題だったか。


「お疲れ様でした。ユージーンさん」


「おう。どうだった瀬奈の方は?」


「有意義な時間でした」


 なんとなく満足そうな顔なので、それなりに得るものはあったようだ。

 なら、あとはここを去っても良いだろう。


「すまんな。手ほどきでもできれば良かったんだが、見ての通り粗忽者でな。戦意のある者も居なくなったようだし、これで帰らせてもらう」


「は、はい!お疲れ様でした!」


『ありがとうございましたッ!!』


 思いっきり皮肉って謝ってみせると、顔を引きつらせた兵士が返答する。

 それが聞こえていたのか、壁際の待機班も一斉に敬礼の姿勢をとった。

 国ごとに違う、バラバラの形式の敬礼に見送られながら、部屋をあとにした。


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