表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/198

リア充

今回は少し短めです。

 リア充――――『現実リアルの生活が充実した人たち』、の略である。地球の某インターネット巨大掲示板にて使用されたスラングで、インターネット上のコミュニティに入り浸る人々が、己の現実生活が充実していないことを自虐する言葉だ。転じて、友人や恋人がいる人を妬む時にも使われる。


 転生前の俺は友人はいたが恋人はいなかった。何をもって充実していると定義するかは人それぞれだが、俺は主に恋愛関係で使っていた。今まで誰とも付き合ったことがない俺からすれば街中のカップルを見ると羨ましく感じられた。


 この世界ではそのカップルにならないと大きな魔法は使えない。この事実は魔法を楽しみにしていた俺の心をズタボロにした。2日たった今でもベットの上から動く気にもなれずゴロゴロしている。何もやる気が起きない。(あまりに俺がおとなしいので屋敷内ではさぞかし平穏かと思ったが、何か企んでいるんじゃないかという噂が広まり、使用人のみならず家族まで怯えているらしい。失礼な。)


 ご先祖が情報を制限するわけだよ。こんなん知ってたら魔法使う気になれないもんな。いや、この感覚は転生してきた俺だけなので、もっと別の意味があるんだろうが。


 解決方法は誰かとそういう関係になること。人によっては簡単だろう。個人的に『恋人を作るのは得意』とか言うやつは人としてどうかと思うがな。

 そもそも望んでなれるならとっとと恋人を作っているわけで。しかし、以前の俺にはいないわけで。とにもかくにもそういったことに関しては絶望的だった。


「まさか異世界に来て恋人がいなくて挫折。なんてことになるとはな。」


 声に出してつぶやく。頭では作る努力をすればいいとわかってはいるが・・・。地球で俺が死ぬ原因となったあの女のことがちらつく。あいつに騙されてあんな思いをする羽目になったんだ。どうしても女性不信気味になるのは仕方がなかった。拳を握り締める。いまだにあの時の怒りは、収まらない。記憶にきつくフタをしても、ふとした瞬間にこうして顔を出す、死ぬときの激情。思い出しても不快になるだけだ。なるべく思い出さないようにしている。


 きっとこれがある以上、俺は恋人なんて作れないだろう。もしそいつに裏切られでもしたら・・。きっと心の柔らかい部分がズタズタになってもう二度と治らない。

 いや、自分は既に裏切られていたな。元友人の顔を思い出す。あいつはきっと脅されたんだ、と分かっていても。理解はしている。けど納得していない。できない。

 俺の家族にまで被害が及び、俺はこうして死んでいる。許せるはずがない。きっと今頃は自責の念に駆られているだろう。せいぜい苦しめ。


 

 どうにも心が荒んでしょうがない。一度気分転換になにか飲んでこよう。頭をふって立ち上がる。

 ん?近くにナタリアはいないようだ。仕方ない。直接自分でお湯を沸かしてくるか。


 そして俺はなんの気なしに台所の扉を開けて―――――抱き合う二人の人影を見た。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ