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魔法

 書斎に着いた俺は万感の想いで鍵を差し込んだ。ここの鍵も地球のシリンダー錠よりも単純だったため、なんとか開けようとして四苦八苦した思い出がある。釘やら工具やらでどうにかこうにか開けた瞬間に捕まって断念したが。

 中に足を踏み入れる。結構な数の蔵書だ。いつも勉強する時は、誰か別のやつに本を持ってきてもらっていたために俺自身が入るのは初めてだったりする。

 この世界の本の装丁は簡素で、幾多数多の本を見てきた俺には少し古臭く感じる。年季の入った紙のかもしだす匂い、酸化したインクの香り。たまらんね。このまま埋もれたい。

 さてさて、お目当ての本は、と。魔法関係の本を見ていく。・・・・あった。

これでいいだろう。

 『魔術初級編』。おあつらえ向きじゃないか。






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 【序文】 私は幼い頃から魔導の真髄、究極の真理を――――(次ッ!長ぇよ!著者の人物紹介だけで10ページも使ってんじゃねぇ!)


 【分類】 この世で確認されている魔法には種族により使えるものと使えないものがある。

      ここでは種族ごとの魔法の分類を紹介する。詳細については各ページ参照のこと。


 

   〈人類〉  最も数が多く最も神に愛され(略)。 

         感情をトリガーに魔力を引き出し、魔法陣に流すことによって行使できる魔法。

         一般的に魔力保有量は女性が、魔法構築速度は男性が優れる。



   〈ドワーフ〉己の得意分野のみに特化した特殊な魔法を使う。主に加工・鍛冶・細工・彫金など物作りに向いている。

         土いじりの(略)


   〈エルフ〉 トリガーを必要とせず、魔力の直接行使が可能である。魔力保有量にも優れ、魔法に特化している。

         風や水に関しては優秀な魔法が多く、逆に火に関しては乏しい。 


   〈妖精種〉 種族が多く、各種族ごとに違う魔法を使うため、未解明なものが多い。

         未開の原人のような(略)



   〈魔物〉  詠唱にも似た鳴き声を発し、魔法陣を展開して行使する。別名『咆吼魔法』

         下等な生物らしく(略)



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 結構ざっぱな分類だな。他にも種族としては〈獣人〉や〈竜人〉がいると聞いているが、彼らは何故載っていないんだろう。魔法を使えない、とか?もしくはこのうちのどれかにはいっているのだろうか?

 しかしこの本、著者の私的な感情が残る記述が多すぎて資料としてはよくないな。読みづらくてたまらない。エルフに対してそういった描写がないのは・・・単純に強いからなのか?どうやら魔法に特化した種族らしい。あとこいつは人間だ。人類の項目だけ批判じゃなく褒め称えている。ウゼェ。


 理解しがたいのはこの部分。感情をトリガーに?意味がわからない・・。ただ呪文を詠唱して技名を叫べば発動するもんだと思っていたが、これは一体・・・?

 とにかく読み進めることにしよう。






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【人類の魔法】 


 人類は悲しいことにあまり魔力を扱うのに適していない。自由自在に魔法を使うエルフは言うに及ばず、ほかの種族がやすやすとこなす『魔力開放』を行えず、魔法の運用に遅れをとってきた。大昔は一部の人間だけが行えたが、数は少なく、何かに使えることはなかった。

 あるとき、その中の一人が気づいた。感情を発露させたものが魔力をまとっていることに。彼は視覚を強化する魔法の使い手だった。感情と魔力の開放が密接に関係していることに注目した彼はそれ専用の魔法を作り、体系として整えた。それを学び、使えさえすれば誰でも魔法を行使できた。こうしてごく少数しか使えなかった魔法が人類種全てに使えるようになったのである。

 彼はその功績を称えられ、魔導王の名を与えられた。今、私たちが使っているのは彼が築き上げたものの上で発展してきた魔法なのである。




 私は何故、感情と魔力が連動しているのか疑問に思った。独自に調べた結果から以下の仮説を立てた。

  ・魔力は生命力から変化したもの。

  ・生命力に満ちた器(=肉体)から溢れたものが魔力になる。

  ・普段は器に封がされている。  ・その封のフタが動くのは強い感情が湧き上がったとき。


 

 無論、すべてを解明できたわけではない。論理的に穴があいている部分もある。しかし感情と魔力が密接に結びついているのは確かだ。

 封がしてあるのは恐らく、生命力が体外に出ていくのを防ぐためだと考えられる。だとすればそれにフタがついているのは・・・・。

いや、やめておこう。あまり不確かなことを書き残していくべきではない。


 生命力には限りがあり、その量は人それぞれだ。一般的には生まれてから徐々に高まり、ピークを過ぎると減少していく。故に高齢者は魔法を使えるものはいない。あふれるほどの生命力がなく、器の中に留まっているためだ。さらに言うならば人生の中で摩耗した精神からは、フタを動かすほどの感情が起こりにくい、という事情もある。

 ピークは10代〜20代。最も多感な時期で感情も高まりやすい。



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 途中、フラグかよ!と思うようなところがあったものの、システム自体は理解できた。しかし一応教本なのに日記みたいに書きかけがあるってのはどうなんだ。ゲームならこんな意味深なことを書いた日にはゾンビでバイオなハザードが起きるぞ。

 魔法のプロセス的には


・感情を高める→魔力発生→魔方陣構築→魔法陣に魔力流す→魔法発動


となっているようだ。


「ふむ。庭のあたりで試してみるか。・・・・・・ん?」


 早速練習しに行こうとする俺の目に気になる記述が目に入ってきた。


「魔法・・・・ツガイ?」

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