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チャルナの結婚騒動

えー……。

当方、何故か……山の上に居ります。

きっとこれが投稿されている時には、山頂の寒空の下で初日の出を待ち望んでいるでしょう。

奇跡的に電波が届いていますが、これもいつまで持つか……。

人付き合いってのは難しいもんですね……。


 契約魔法をしてはっきり変わったのは常にチャルナの存在を感じ取れることだ。チャルナが胸の上で眠った時のように、離れていてもその鼓動が感じられる。

 意識を集中すれば、大体の方角と距離が分かる。もっと集中すれば大まかな気分さえ感じ取れた。

 契約が成立するか不安だったが、上手くいったようだ。



 あれから何度かキアラの魔法講義を受けたおかげで、契約魔法の基本的な原理といくつかの契約魔法を覚えることができた。

 魔法ツガイの男役の代わりに、魔獣を配したのが契約魔法使い……『ビーストテイマー』だ。

 その原理はマスターと魔獣の間に、両者を繋ぐ経路パスを構築。主人から魔力(生命力)を供給し、能力を強化したり、指向性を持たせて変化させたりする。

 強化はそのまま身体能力の強化魔法『ストレングス』。

 変化させる方は、属性を与えて付与することから、付与魔法『エンチャント』と呼ばれる。

 キアラが見本でやったのは属性を炎にして付与する『エンチャント・ファイア』だな。


 生命力の一部をマスターに依存する形になるので、凶悪な魔獣でも従うようになるという。

 それでもあまりに無茶な命令は拒否され、主人が力量の足りていない者だとすぐに殺されてしまうとか。生命量の依存度が低いと、こういったことが起こりうる。様々な制約のある関係だ。

 その辺はしつこく何度もキアラは注意してきた。格上の魔獣と契約しようとして死んでしまう魔法使いは割と多いようだ。




 さて、この関係。『逆らう危険性がない獣人と結べばイイトコ取りなのでは?』と考える者も、過去には出てきた。昔だと獣人というのは奴隷に身を落とす場合が多かったので、捨て駒のような扱いを受けることも少なくなかった。

 奴隷兵の力が上がれば、安いコストで多くの戦果を挙げられる。

 しかし、いくら魔法をかけても契約が結べなかったのだ。


『結局、なんで契約できないのかわからないのか?』


『仮説段階だといくつか上がってきているんですが……一番説得力があるのが、混じり合う・・・・・のを防ぐようになっているんだそうですぅ』


『混じり合う……?』


『はい。繋いだ経路パスを通じて、向こうとこちらの魂や精神が入り混じるのを、無意識下で拒否しているのではないか、と言われていますぅ。

 これが魔獣と行えるのはぁ、精神の在り方や、魂の器が人間のソレとは異なるからではないか、と』


 結局詳しいことは分かっていないらしいが、キアラの言う説が最も説得力がある。

 それが正しいと仮定した場合、俺とチャルナで契約が結べたのは、チャルナが元猫だからだろう。いくら人に変化できて、同じように考えられると言っても、どこか普通の人間とは異なるのか。

 ま、だからなんだと言われても、精々『契約できるようになってラッキー』くらいにしか思わないのだが。





 さてさて、件のチャルナだが、ちょっとばかり困ったことになっていた。こうして困惑するのは大抵俺なのだが、今回はちょっと違う。


 チャルナに結婚・・を申し込んできた者が現れたのだ。





「お、俺と結婚して夫婦めおとになってくれ!」


「う、うにゃ…………どうしようマスター……」


「………………」


 村の家屋の一室。

 髪を短く刈り上げた十代後半の猫獣人の少年が、チャルナに花束を持ってプロポーズしている。

 だが、チャルナ本人は困惑しきりでこちらに助けを求めてきていた。

 どうしようと言われてもなぁ…………。




 事の起こりは契約魔法の戦闘実験をしようと、次に立ち寄った猫獣人の村で近くの魔物を探していた時だった。

 護衛と気晴らしの散策を兼ねてレリューも居た。丁度湖に近い村だったので、レリューには人魚の姿に戻ってもらい、『輝石』でチャルナを人化させた。


 俺が試そうとしていたのは、人化した状態のチャルナが契約魔法を受け付けるかどうか。受け付けたとしても、どれほどの威力があるのか。

 それを確認するにはやはり実戦だろう、と考えた結果、適当な強さの魔物をチャルナにあてがってみる、という方法だった。


 用意も終わり、さぁ、実験開始……となったところで男の悲鳴が聞こえた。


『うにゃッ!あっち!』


『あ、オイコラ!待てチャルナ!』


 俺がそちらを確認するより早くチャルナが走って行ってしまう。たどり着いた先では、ブヨブヨした緑色の腐肉がネコミミの付いた少年を襲おうとしているところだった。

 アイツは確か攻撃する度に体から毒が吹き出す『溶解腐肉メルトゲル』という魔物だったはず。咄嗟にチャルナへ攻撃よりも保護に回るように指示を出す。

 遠隔攻撃の手段がないチャルナでは、あの魔物への対処が難しい。そこで出した指示だったが……これが良くなかったようだ。





 魔法弾で蜂の巣になった魔物からエーテルを回収した後、お礼がしたいという少年…………ロジャーの家に着くといきなり先の告白に繋がる。

 何を考えているんだこいつは?まだ出会って半日も経っていないんだぞ?

 しかも相手は年端もいかないチャルナだ。何がどうなってそうなったのか。ロジャーは興奮していて話ができないし、チャルナはチャルナでその体を俺の後ろに隠そうとして、失敗している。

 ええい!とにかく落ち着かせないと。


「おい、ちょっと落ち着けよ」


「チャルナちゃん!いきなりで悪いとは思っているけど、俺と結婚してほしいんだ!」


「こんな状況でそんな事突然言われても判断なんてできないだろうが!いいから時間を置いて――――」


「うるさい!これは俺と彼女の問題だ!子供は黙っていろ!」


「――――ほう…………」


 人の飼い猫ペットに手を出そうとしている盛りのついたオス猫風情が、この俺に向かって黙っていろ、だと?

 いい度胸しているじゃないか……!

 ゴキッ!


「ヒイィッ!?おっ、おっ、おっ、落ち着いちぇくださいユージーンさん……!?」


 指を鳴らす音に、回収しておいたレリューが怯える。

 それはともかくこのガキどうしてくれようか。


「にゃ、にゃう……マスター……この人何言ってるの……?」


「お前にイヤラシいことしたい、って言ってんだよ」


「おい!彼女に変なこと教えんな!」


「わかりやすく意訳してやったんだろが!人のもので発情してんじゃねぇ!」


「人のものだと!?お前は彼女の何なんだよ!?」


「飼い主だよ!」


「お前…………っ!彼女をモノ扱いしているのか!?やっぱりお前のようなも

のとは一緒に居させられん!俺と一緒に――――」


「させるかあああぁぁぁぁぁ!」


「うにゃー……どうしよう……」


「わ、私に聞かれてもぉー……」


次は21時に投稿予定です。

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