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異世界環境

 今回から説明が長いのがしばらく続きます。


申し訳ないですが、ご了承ください。

 結局ドアノブに手が届かないため、外に出ることが叶わず、四苦八苦してる間に日々は過ぎていった。

 連れ出された先の家で、某牢獄ブレイク映画並の大脱走を繰り広げたため、新人のメイドを付けられて監視が強化されたり。

 厳つい親父殿がオロオロして、見つかって連れ戻された瞬間飛びついてきて、親バカっぷりを発揮したり。

 メイド(マダム)に手を出した親父殿を、完全武装した母上様がムチで張り倒したり。



 そんなこんな日々を過ごしていくうちに、俺は5歳になっていた。



 ついにドアノブに手が届くほどの高さにまで成長した。この時には問題なく意思の疎通をできるほどに言葉を学んでいた。

たまに呂律が回らなくなったり、どもったりするがまぁ許容範囲内だろう。

 この世界に落ちたとき、改造されたおかげか言語は理解できた。しかし、自分から言葉を発しようとすると、うまく喋れない、という事態になった。

 単語一つ一つに意味が理解でき、交わされる会話を違和感なく解読できても、自分からは意味のあることを喋れなかったのである。

 どうにも文法や会話の組立が行えない。おかげで一から学ばなければならなかった。

 あのクソ野郎。適当なことをしやがって。会話できたとしても赤ん坊の頃は「ダァ」「アー」くらいしか言えなかっただろうがな。

 会話から文法や構成を聞き取って分析して、なんとかなった。


 会話できるようになってからは文字を習った。異世界なので当然日本語ではない。アルファベットを崩したような文字だった。

 家族は忙しいらしく、俺はメイドに文字を習った。一応中身は大人なので、グングン上達し、兄二人よりも早く文字をマスターできた。

 字が読めないと本が読めないからな。死に物狂いで勉強したわー。おかげで書斎の本を渡された時、「俺にも読めるッ!読めるぞォォォォォォォォォォ!」と声を上げてしまい担当メイドに怯えられた。

 やめてくれ。そんな得体のしれないものを見る目でこっちの様子を伺うな!しょうがないだろ5年も読書立ちしてたんだぞ!?今ならどんな駄作小説でも聖書のように扱うねッ!

という精神状態なんだよ!察しろよ!




 この5年で転生した俺を取り巻く環境も大分理解した。

 俺がいる場所はフォーリーブス大陸、という場所らしい。なんでも四つ葉のように東西南北にそれぞれ大陸があることからこの名前がついたようだ。

 これはその4つの大陸の総称で、各大陸にはちゃんと名前がある。


 北は冬の「ホレフ」


 東は春の「アビブ」


 南は夏の「カイツ」


 西は秋の「スタブ」


 他にも大陸はあるが割愛しよう。俺がいるのは春のアビブだ。年中を通して温暖な気候で動植物が多い。

 各大陸には国家が2つから多くても5つほどあるらしい。春の大陸は3つ。この国々は各大陸の覇者を狙い続けていて、戦争がたまに起こる。

 一番最近では10年ほど前に隣国トルドイと、その向こうの国プラータが資源の奪い合いを理由に戦争していた。

 この国も隙をついて資源の奪取を試みたり、軍事同盟を組んで圧力を加えたり、えげつないことをしていたようだ。結局どの国も力を削ぎ落とされ、

 これ以上は害にしかならず、と判断されて停戦した。

 もともと10も20もひしめいていた国々が吸収、消滅、分裂を繰り返し、今はこの三ヵ国になった。土地は敵を倒せばある、といっても大陸の中だ。限りはある。

 人の使える土地はさらに。資源も研究・開発する余裕があれば、物資として前線に送られた。技術の向上、新規の開発が重要視されていなかったのである。

 戦況を打開するためにそれらが必要だ、となった時には、もう国としての体力は衰えていた。国家存続も危ぶまれ、その結果として停戦がなされた。




 俺がいるのはこの国アルフメートの貴族ダリア公爵家だ。このダリア家、初代アルフメート王家が国を起こした時から騎士として活躍しており、家宝の剣は血によって黒く染まるほどの猛威をふるった、とか。戦場で大きな手柄を立てた際、称号「ブラック・ダリア」と共にダリア家の名を貰い、王国内の一部を割譲され、公爵として叙勲された。公爵は基本的に小国の王や諸侯、王族の称号である。つまり、「アルフメート国」内の「ダリア国」とも言うべき状態になっていて、大きな発言力を持っている。



 いやまぁツッコミどころ満載だが。血で錆びてんじゃねーのその家宝、とか国とか言っても搾取されてんじゃねーのか、とか。

 ちなみにこの国では家名に花の名前が多い。花はこの春の国では身近で他の大陸と差を明確にできるから、らしい。南のカイツではバナナさんとか居るのか?

「ブラックダリア」の称号はそんな春の国としての特色と、先祖の武勇が組み合わさった称号だ。



 んで現在の当主が父、ドルフ・ダリア公爵。戦場では「血涙のドルフ」と呼ばれ敵国からは悪魔のように恐れられた。なんでも血の涙を流しながら武器を振るい、近寄るものを切り裂きながら敵陣に突入したという。だが俺から見たらただの親バカにしか見えなかったが。筋骨隆々、身長2m近くの筋肉ダルマである。


 母はユーミィ・アマリリス。髪の長い、穏やかな人、というのが第一印象だが、昔は名の知れた魔法使いだったらしい。

 詳しくは知らないが、以前父をムチで追い詰めていた腕は素人目にもなかなかのものだった。今は引退して息子たちの成長を見守っている。


 兄二人はガレフとメイア。上の兄は9歳のガレフ。父に似て・・・太い。ガッシリとした体格で学校のガキ大将のような位置にいるらしい。

 性格は単純で喧嘩っぱやく元気に満ち溢れている。

 次兄のメイアはスラッとした長身で今年学校に入学したばかりの7歳だ。早くも人気があるらしい。顔はイケメン。性格はやっぱり活発。

 単純ではなく搦手も使って欲しいものを手に入れる狡猾さもあってある意味手に負えない。

 なんていうか、父親の血が濃すぎないか?この家系。ガレフの見た目とかメイアの性格とか。


 そんな家に5年前に生まれたのが三男のユージーン。つまり俺。あだ名がユージなので確実にあのひし形の野郎が何かしたんだろう。

 赤ん坊の時から好奇心が旺盛で本好き、というのが俺のダリア家内の評価だった。

 そんな俺付きのメイドが一人いる。屋敷内にひしめくメイドさんマダムみたいに50超えとかじゃなく20代だ。しかしこれをしてはダメ、あれはダメ、と小うるさいやつだ。

 子供に対して言ってることとしては正しくても、こちとら中身はお前と同い年タメなんだよ。まったく。

 今もそうだ。ガミガミと同じことを繰り返し――――


「聞いていますか坊ちゃん!?あれほど勝手に部屋から出てはいけないと言って―――」

 ああそうだよ。説教中だよ。現実逃避したくて現状確認してたんだっつーの。

俺は自分の赤みがかった薄い金髪をかき分けて、頭をボリボリと掻いた。

 あ、ちなみに俺を使用人達が陰で呼ぶときは頭に「問題児の」とか「手がかかる」というありがたい言葉がつくそうだ。

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