地方の動乱、中央の陰謀 ~攻城戦~
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今回は普段より1.5倍くらいの長さになっています(*´∀`*)
いままでのお話
ブランジュ王国の絶世の美女アデルハイドは政治にも口出しする才色兼備のお姫様。隣国から来たフランツは男でありながら美女のような容姿でしかも姫に姿が似ていた。フランツは姫の影武者にされてしまい、厳しい訓練を経て姫としてデビューしてしまった。
事件を経て友を失ったフランツは失意の中、対立の続く南の地へ行かされ、
不用意に町中へ出たフランツは奴隷商人ドルナンドに拐われてしまう。そこで友となった奴隷のエルーシア達は反乱を起こし姫を襲う。憎悪の塊ドルナンドは姫側勢力・・・だがフランツが助かるにはエルーシアを裏切り姫を救うしかない。心の葛藤と反乱軍がフランツを襲う。
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湿った薄暗い地下通路をしばらく進むと光が見え、侵入防止用の柵が上がっている地下墳墓のような狭い空間に出てた。
何事もなく素通りし、さらに曲がりくねった道と階段を3つほど越えると丸石で作られた内城の通路らしき場所に出た。
するといきなり後ろから男一人に羽交い絞めにされ前からは二人に剣を突きつけられた。
「お、おい何者だ」
「私は・・・エレミエ様の代わりにアデルハイド殿下に報告に上がった者だ。あんたたちその手をどけなさい」
顔を隠し、女の声。明らかに怪しい身なりだったが、フランツの静かながら威厳がこもった声に軍服姿の3人は一瞬戸惑う。
フランツも言葉の勢いとは裏腹に内心どうなるかと思っていた。
「な、なればエレミエ様の使者殿、合言葉を・・・」
「エリジウム!今は緊急事態なのよ!分かってるでしょ?あなた達、私はこの格好で城内をうろつけば怪しまれます。無用な足止めはもう結構!私を殿下の元へ案内しなさい!」
「え・・・ハッ!た、直ちに」
3人は立派な身なりとは対照的に、勢いに蹴倒されて顔を見合わせている。
青の軍服に白のシャツとズボン、シャコー帽というなりだ。そのうち2人は下士官のサーベルを帯びている。金縁やボタンの様子から3人とも姫の親衛隊員ではなく、要塞守備兵のようだ。
「おい、俺たちは二人でこの方を案内する。お前はこの扉を守れ」
「え、でも、でも私めはただのカマド番でございますよ隊長。武器も要塞に置いてきてしまい手元にありません」
「カマドの番が出来るなら扉の番くらいできるだろ。誰も通らないから安心しろって」
「たった今通ったじゃないですかぁ・・・」
「ずべこべ言わず兵隊なら命令を守れ!」
そう言うと下士官二人はフランツに付き添って姫のいる部屋へ小走りで向かった。
下士官二人に先導されているので男性物の服を頭から被るというとても怪しい格好でも誰もフランツを引き止めはしない。
マスケット銃を手にした兵隊が数人単位で走り過ぎて行く。普段なら下士官に向かって立ち止まって敬礼するべきだが、今は誰もがそのまま走り去っていく。
ドゴォォォ・・・ンと民衆に向けた空砲が頼りなく鳴る。
かつてここが要塞になる前、伯爵城だった頃は謁見の間だった大きな部屋 -今は会議室となっている- に3人が走り込む。
「止まれ!何者だ」
扉を守る兵2人に誰何され、マスケット銃で扉を遮られる。門を守る兵は姫の親衛隊員のようだ。
「私はエレミエ様の使者、殿下に“あなたに直接3日前に要塞に残るように言われ、姿を消してしまった者”が参上したとお伝えして!」
「それはどういう意味だ?それに今は重要な会議中つきどの道、会うことはまかりならん」
親衛隊員が言う。
「これは暗号みたいなもの!あなたは殿下にそのまま伝えればいいの!早くして!緊急の用事なんだから、何かあったらあなた責任とる!?」
「・・・今殿下にお伝えする。しばし待たれよ」
隊員のひとりは扉を開け、素早く閉めるとしばらく出て来なかった。
扉は厚く大きく、中の声は例え怒声であっても外に聞こえない。謁見の間は秘密の上奏を受ける際にも使えるように外に声が漏れない仕組みになっていて会議室にはもってこいだったが気を利かせたその構造は今のフランツにとってイライラを募らせるだけだ。
(早くしないか!)
とても長い2分が経ち、扉が開き親衛隊員が出て来るなり「どうぞお通りください使者さま」とフランツに告げる。
フランツは聞くと同時に扉の中へ入る。
扉が閉まり、親衛隊員二人が気をつけの姿勢を取り、再び扉の前で直立不動のまま動かなくなった。
後に残された下士官らはぶつぶつ話し始めた。
「お、俺たち、どうする」
「どうするって・・・戻るだろ」
「あんな扉、誰も来ないって」
「ついさっき来ただろ・・・いいから戻って、それから別命があれば部隊を率いて戦おう」
「誰を率いるんだ。俺の小隊はカマド番を残して全員行方不明だ」
「それならまだマシだよ、俺の部隊は全員所在がわかるんだよ・・・。あいつら反乱始まってすぐ持ち場を捨てて今は反乱軍に加わってるんだ」
扉の前で二人の下士官はうなだれるようにして去って行った。
謁見の間に入るとアデルハイド姫を囲んで高官と思われる人らが数人座っているのが見えた。
姫のほかはリンデ侯以外、フランツと面識が無い者たちだ。
ボロボロのナリで頭を上着で隠したフランツを見て皆ポカーンと口を開けている。姫だけは表面上、何もなかったかのように冷静だ。
「あれは気にしないで続けなさいリンデ侯」
姫のひとことでリンデ侯は姿勢を正して言った。
「ハッ!あー・・・会議を中断してすまない。それで、なんだったかな、そう、要塞の現地軍の指揮権についてだが、領主、要塞司令官、派遣軍司令官の3人が各々軍を率いて首都へ向かって不在だ。あいつらは事もあろうにアデルハイド殿下の危機よりも自らの出世のために王宮行事に出ようとしている
そこでだ、そうなるとだな、我々のような殿下付きの者以外だと身分の序列的にはオルナン殿が一番上なんだが・・・」
オルナンと言われた男が答える。彼は聖職者の服を着ている。高僧のようだ。
「確かに私は子爵でありますが、それ以前に神に命を捧げる聖職の道を歩む者でして、戦いに関わることは遠慮させていただきたい」
「そうは言うがオルナン殿、他にいないのだ」
「とはいえ教会には決まりがあります。破ればそれこそ神にも民衆にも向ける顔が無い。そこでご提案なのですが、私と共に救済小屋を経営しておりますドルナンドという者がおります。彼は最近ではありますが男爵の地位を得ました。この地に長く住み、兵を運用したこともございます。彼ならば・・・適任かと思われますが。もっとも、もっともですよ、殿下がカストルーニャ人を採用しないとなれば別です。彼はカストルーニャ人なのです」
「オルナンの提案はもっともだ。しかしそこに外部からの報告者が居る。報告を聞いてからでも遅くはない」
アデルハイド姫が返す。
「し、しかし殿下!今は急いで決めなければ」
「オルナン、こういう時だからこそ、焦ってはだめ。まずそのドルナンドとやらをこの城に連れて来るのよ。決めても本人が居なければ意味がないの。リンデと協力して彼を秘密の通路からここに通しなさい」
「それでは彼を要塞兵たちの指揮官に任命するので?」
リンデは心配そうに問う。
「決定ではない。さっきも言ったわ。まず報告を聞いてから。今はただ連れてくるだけ。さぁ連れて来なさい」
それから姫は外野と化していたフランツに顔を向けて言った。
「お前、報告を聞くから私と奥の部屋に来なさい」
アデルハイド姫は主座の裏にある昔の伯爵の私区画の部屋へ入り、フランツも続いた。
部屋は戦いが嘘と思えるほど、と言ってもたまに鳴る大砲の音が微かには聞こえるが、それ以外は物音ひとつなかった。
昔の城らしくごつい作りで最近流行りの白壁ではなく石の壁で床も石だった。今は事務所に使われているのか、無造作に書類や箱が並ぶ。
「フードくらい取りなさい」
姫はフランツに背を向け窓のほうを向いて言う。
フランツは急いでフードのようにして被っていたドルナンドの服を脱いで言う。
「あの・・・なんて言ったらいいか」
「エレミエは?彼女はどうした」
姫はそっと言う。
「エレミエ様は・・・その」
「いいから。ありのまま言いなさい」
「脱出路を探しに城と反対の方向へ走っていかれました」
「・・・そう」
姫は淡々と答えながらも手を強く握りその手は震えていた。
「他には何をしていた?見聞きしたこと全て報告しなさい」
フランツは奴隷商人に拐われたこと、ドルナンドの救済小屋が実は奴隷小屋であること、反乱勢力の状況、外の様子ありとあらゆることを全て伝えた。
「あと・・・殿下、エレミエ様からこれを承っております。殿下に渡せば全て分かるとのことです」
フランツは青の欠けたネックレスを姫に差し出した。
「・・・分かった。良く分かったわ。大変有用な情報だった。下がっていなさい」
「あの、そのネックレスはどういう意味が・・・」
知る必要は無いという返事が来るものと思ってダメ元で聞いてみたが、予想外にも姫は答えた。
「青は任務続行可能、赤は無理だから逃げ道が欲しいという知らせ。私と彼女のみ通じる一度切りの暗号よ。本当は別の部下が回収するつもりだったんだけど、行方不明のようね」
フランツは意外すぎて逆に聞いてしまった。
「なんで僕なんかに話してくれたんですか」と。
「伝令は信頼のおける者にしか任せない。エレミエがお前を信頼しているなら私も信頼する。持ってきた暗号くらい知る権利は認めましょう」
「あ、あの。殿下、僕もあの会議に参加させていただけませんか!」
フランツは勢い余って言った。
「何を言ってるの?これ以上はあなたに参加する資格はありません」
「差し出がましいと思っています!でも、あまりにもこの一連の出来事はタイミングが良すぎます。何か、何かあると思うんです」
フランツは食い下がった。
「それは分かってるわ。ガスパールの件、お前から報告があってからすぐにこの反乱。しかも要塞の責任者たちに急に宮廷から呼び出しがあった・・・連続で事件が起きてる。どんな鈍感な人間でも分かること。でもそれでお前が会議に出る意味が分からないわ」
「僕は、殿下の影武者で、それに、それにエレミエ様やガスパール伯様だって僕のせいで・・・あの方々もお救いしたいし、えっと・・・殿下への陰謀を一番知っているのも僕だと思うんです・・・この会議で何か陰謀の糸口が掴めるんです」
フランツは勢いと緊張から言葉が回らず、意味不明なことを喋っていると自分でも気がついていた。でもそんなことお構いなしに勢いに任せた。
「私の影武者なのにガスパールやエレミエを気にするのね」
「あ・・・いえごめんなさい、すいませんあぁ・・・」
フランツはとにかく謝るので精一杯。
「少しは心も私らしくなったってわけね。全体のためには一部の犠牲は厭わないって思われてるけど、私だって家臣を想う心はあるの。今はお前以外に全てを知っている者もいないだろうし・・・わかった発言は認めませんが一部始終は見てもよい」
アデルハイド姫は扉の外に居た親衛隊に何やら指示をして元の部屋へと戻っていった。
親衛隊が扉をノックしたのち、フランツに女官の服とフード付きのマントを持ってきた。
フランツは着替えてフードをかぶり、部屋に戻った。
部屋に戻るとフランツの正体を知っているリンデ侯が睨みつけてきた。
姫はリンデを制して言った。
「この者は私付きの女官で会議を記録したりしている。今まで偵察に出ていたところ、命からがら戻ってきたのです。そうでしたねリンデ?、まずは彼女の英雄的行為を称えましょう」
列席一同、起立してフランツに拍手を送った。衛兵は全員外に控えているので、この広い部屋には8人しかいない。
まばらな拍手は謁見の間をこだまして乾いた音を返す。
「そのローブのようなものは、入って来たときも顔を隠しておったが、取ることはできんのかね」
要塞の高官らしき人物が言う。
「みなさん一同、信頼をしていますが万が一ということもあります。彼女は重要な情報を管理しますので申し訳ありませんが誰かを特定できないよう
配慮しております。ご了解いただけるかしら」
「失礼いたしました!」
高官は深々と頭を下げた。
フランツは控えの間のど真ん中に不似合いなほどポツンとある会議卓の少し外側に立った。
「殿下、会議再開の前に要塞現地軍指揮官にドルナンド男爵を任命するか否かを決めて頂きたい」
オルナンが言う。
ドルナンドが机に座らず入口の前に跪いている。頑丈な身体なのが不幸にも幸いして出血の量にしては軽傷だったようだ。
逆に真新しい傷が英雄のような風貌を醸し出している。
「私の責任において、ドルナンド男爵を臨時に要塞守備隊司令官とします。指揮範囲は要塞守備隊および守城兵器。我が親衛隊と要塞外の兵は敷範囲外とする。反乱鎮圧後、任を解くとする」
姫は堂々とした声で言った。
驚いたのはフランツとリンデだ。二人は気の合わない同士だが、この時だけは目を見合わせて二人共(なぜ?)と思った。
特にフランツはドルナンドの本性を伝えただけに裏切られた気になった。リンデもドルナンドの悪い噂を聞いているのか訝しむ顔つきになる。
一方のオルナンは口元だけニンマリしている。
「ドルナンドよ、会議に加わるがよい」
姫はそう言って席を進めた。
「さ、さて最高司令官が決まったところで、状況の整理と対策をだな・・・各々、現状を報告せよ」
リンデは結構顔や言葉に出やすい性質なのか明らかにドルナンドを歓迎していない。
「殿下の親衛隊で行方不明者が12人のみ、首都に同行しなかった要塞守備隊約500人のうち、現在この城で守備しているのは僅かに120人です。ほとんどは戦闘開始前に逃亡。城に立て篭ってからの負傷は12人、死亡は今のところありません」
アデルハイドの親衛隊の将官が代わりに答える。フランツもこの人物の名前は知らなかったが、親衛隊長が首都に居て不在なため、一応この人物が
親衛隊指揮官のようだ。
「市民軍に向けては空砲と威嚇射撃のみを行っており、市民側の損害もほぼ皆無と思われます」
別の高齢な高官が答える。
「なぜ発砲しない!この瀬戸際に!」
オルナンが叫ぶ。
「市民に発砲すれば反対する口実を与えます。この城は旧式の城壁といえど、相手に大砲がなければむしろ背が高いだけ新式城壁より有利です。立て篭って居れば突破されることはありません」
親衛隊指揮官が返答する。
オルナンは知識の無さを指摘されたのが気に食わなかったのか憮然として座る。
「しかし、それでは対策を立てようがない。反乱の人数は増えているのですぞ・・・王国軍は首都に集合しておるのでしょう・・・どうなのです援軍はあるのですか殿下」
オルナンは座りながら言う。
「それについては私が答えましょう。国王陛下は各地の軍を首都に集めています。どうやら東部国境でなんらかの外国軍が終結しているとのことで
国境が安定している南部諸州からも招集命令が下ったようです」
親衛隊指揮官が答えた。
「まて、そんなすぐ軍が編成できるか!いくら常時守備体制がある要塞の軍隊といえども大規模な遠征軍を編成するには時間が必要だ」
オルナンが狼狽し始めている。
「いえ、それが東部国境が不穏ということで、1ヶ月ほど前からいつでも行動できるようにと要塞幹部宛にテルミドール侯を通して通達があったようです」
「バカな!私はそんなこと知らぬ」
オルナンは顔がもう真っ赤だ。
「聖界に属するあなたは、俗界の戦争には関与しないのでしょう。さっきそうあなたは発言されましたよ」
リンデ侯が口を挟んで言うと、オルナンはリンデを睨みつけて黙った。
「この場でそのような口喧嘩している時間はありません。ドルナンド男爵、現状伝えられることはこれくらいです」
姫が発言すると皆姫に注目し、張り詰めた空気が戻る。
「ブランジュ王国国王の娘、アデルハイドとしてドルナンドに命令します。我が親衛隊と協力しつつ要塞守備隊をまとめ、現状を維持しなさい。絶対に市民に向けて発砲しないこと、はしごが掛けられたら落とすように。大砲は空砲を用いなさい」
今度はドルナンドとオルナンが唖然とした。オルナンに至っては目がひん剥いている。
まさか殿下自ら、具体的な命令をしてくるとは思わなかったのだ。これがアデルハイドか、本当になんでも顔を突っ込むのかと。
「要塞を守れ」と抽象的な命令を期待していたドルナンドは渋い顔を一瞬だがした。
その命令を口実に大砲で徹底的に市民軍を蹴散らし、ついでに反対派の家にも砲弾を“誤射”させようと思っていた。
しかし命令とあれば守らねばならない。それに守備隊約100人に対して
指揮外の姫親衛隊約100人が監視してくる。
不慣れな要塞での指揮官は必要だったが、身勝手に行動しないよう手も打った。ドルナンドは命令に縛られた指揮人形と化した。
とはいえ、命令を守り城を守り通せば姫から栄誉を貰えるだろう。
ドルナンドは「命に代えてご命令を全ういたします!」と言い、出て行った。
「な、なぜ消極的な方法を取るのです!このままでは何も好転いたしませんぞ!」
オルナンが立ち上がり叫ぶ。
「相当恐れているようですねオルナン。そんな市民が怖いのですか?」
姫は続けて言う。
「この要塞は北部の軍隊が駐屯していました。家族も当然北部の、どちらかといえば私達を支持する人たちです。今要塞に押しかけているのは、外の村々から来た南部の人たちとカストルーニャ人たちです。城が落ちないと分かれば成り行きを見守る要塞住人たちも次第に反乱軍を鬱陶しく思い始めるでしょう。士気が下がったところで『王国軍が引き返して来た』とでも叫べば四散するでしょう」
オルナンは舌を巻いた。自分にとっては不都合なことだが、こう言われてしまえば「反対派の家に砲弾を撃ち込むべきです」と間違っても言えない。
「私は奥へ行って私の家臣団に話をしてくる。城の時計で2時に再度ここに集合せよ」
そう言うと姫はリンデとフランツを従えて奥へと向かった。
外は暗闇に炎の赤が反射して見るだけなら綺麗に空を染め上げている。
リンデは奥へ行くなり姫の前にいきなり跪いて言った。
「なぜです!なぜドルナンドなんかを要塞司令官にしたのですか!あいつに良い噂はありません!」
「・・・リンデ、私がやることには意味がある・・・それでは不満か?」
「いえ」
リンデが退こうとした瞬間、フランツが真横から叫ぶ。
「僕もリンデ様と同じく、反対です!僕の報告を信用なさらないのですか!」
普段のリンデなら「身分の違いをわきまえろ」とか「貴様に発言権などない」とつっばねるのだが、今回は目的が一致しているからか跪いたまま何も言わず、ただフランツを軽く睨んだだけだった。
「リンデ、不満なんだな?」
「はい殿下!不満です!彼は殿下の為になりません!」
「・・・よろしい、そこまでお前が言うなら説明してやる」
姫は部屋に入っていく。たぶん付いてこいということだろう。
フランツもちゃっかりリンデの後に付いていったが、リンデは追っ払いもせず無言で、まるでフランツが見えないかのごとく振舞った。
部屋の扉を閉めると姫は机に片手を付き、疲れきった表情でこちらを見て口を開く。
つづく
読んでくださりありがとうございます!
以下駄文でございます。
以前も書いたようにブランジュ王国のモチーフはフランスです。作中の「南部人」というのも南フランスのガスコン達をモチーフにしていますが、気性が荒い(と言われている)以外、かなりオリジナル設定で脚色されています。
ここまで読んでお気づきの方もいらっしゃると思いますが、作中の登場人物ガスパール伯爵はこのガスコンからです。名づけはかなり適当感あるように思われそうですが、結構愛着あるキャラです。