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地方の動乱、中央の陰謀 ~命の価値②~

お待たせしました後編です(*´∀`*)

いままでのお話


ブランジュ王国の絶世の美女アデルハイドは政治にも口出しする才色兼備のお姫様。

隣国から来たフランツは男でありながら美女のような容姿でしかも姫に姿が似ていた。

フランツは姫の影武者にされてしまい、厳しい訓練を経て姫としてデビュー。


友を失ったフランツは失意の中、対立の続く南の地へ行かされ、

不用意に町中へ出たフランツは奴隷商人ドルナンドに拐われてしまう。

同じ奴隷のエルーシアは姫に対する反乱を企てていた。奴隷か姫か、どちらかしか助からない状況に悩むフランツ・・・。






フランツはドレスをボロの上から着る。


「ドルナンド、ちょっと手伝ってもらっていい?コルセットは私ひとりで締められないわ」


「フランシェだったか、貴様逃げる訳ではあるまいな」

ドルナンドはいぶかしがりながらも剣を置いてフランツのコルセットをキツく締めた。

しかし締めたはいいが留め方が分からなかった。


「おい貴様、どう留めるんだ」


「言う通りにやって!」

フランツはわざと結び目がすぐほつれるように指示し、やり方が分からないドルナンドは否応が無しにすぐほつれる留め方をするしかなかった。


「さぁ、屋根伝いに行って要塞の門で叫ぶのだ!」


「待って!ドルナンド、この格好で屋根を走ったら目立つでしょ!目立たないで行けるように身を隠せるもの・・・ローブみたいなものはないの?」


「注文の多いやつだ!・・・うぅむ・・・仕方ないこれを着ろ!ほらいくぞ」

ドルナンドは自分の着ていた上着をフランツに投げた。


ドルナンドの身長に合わせて作られているから、フランツが羽織ればローブのように身を包めた。


フランツは暗い室内を通り抜け屋根に上がり辺りを見回す。


シャトージャンヌ要塞の内部は夕日で染められていた。


要塞の中心に目を向ければ旧世代の城、今となっては単なる行政庁を兼ねる歴史的建造物となっている内城、旧シャトージャンヌ城が見える。高さだけは立派な白亜の塔の連なりだ。


煙は要塞内の街のあちこちで上がっていたがどうやらまだ内城からはあがっていないようだ。


内城の正面城門にはアデルハイド姫の意匠と国の意匠を象った旗が二本なびいている。姫が健在な証拠だ。


一方でカストルーニャ軍を寄せ付けなかった街を囲む低く幅広な新式の星型要塞城壁の各門には反乱軍の青の旗が揚がっている。


大軍と大砲でもびくともしなかった城壁は内部からの民衆のクワや火縄銃の力で陥落していた。


もっとも、この要塞の最高司令官を含め、管理を任されているトップ3人の大貴族は兵隊を率いて首都へ向かっているし、姫は親衛隊を除いて戦闘部隊と言えるものは連れていない。

さらに親衛隊長のデローネル侯は留守と事件調査を言い渡されて首都にいる。


外城壁の各砲台からは煙が上がっている。


多方、要塞の留守を言い渡された数少ない現地の兵では巨大な要塞を活かせず、民衆の反乱を認めるやすぐに星型城壁の大砲を自爆させた上で外の要塞城壁を放棄、内城に立てこもったのだろう。


二人は屋根をかがみながら進み、城壁へ着くとドルナンドは短銃を後ろからちらつかせ、フランツは反乱勢力から見えやすい星型城壁西門の頂上に登るよう指示された。


本格的に武装した反乱勢力は1000人程度しかおらず、あとはその場の勢いで参加したりした農民達なので、星型城壁に旗が立てられた後は誰もいなくなっていた。


外から敵が来ることはないので当然と言えば当然だ。


外側の要塞城壁と旧城を結ぶ連絡通路は2箇所。いずれも爆破されて塞がれていている。


火縄銃や棒のようなものしか無い反乱勢力はいくら旧式城壁といえど簡単に突破できないとみえて、両者旧城の壁を挟んで膠着状態だった。


旧城にも大砲が備わっていたが、民衆に向けて空砲を撃つ以外仕事をしていない。もし大砲の実弾撃とうものなら、親アデルハイド派の市民も敵に回すだろう。


しかしいつまでもこうしては居られない。カストルーニャ系住人を中心に近隣の村や街からも反乱への参加者が時間を増すごとに増えていっているからだ。


ドルナンドは後ろから隠れて短銃をフランツに向けていた。フランツは上着を脱ぎ大きく息を吸うと市街地に向けて叫んだ。


「私こそアデルハイドである!私を討ちたい者はかかって来るが良い!!」

西日の逆光を背にフランツは叫んだ。その効果もあってか神々しさに怒声が一旦やんだが、数秒してまた怒声が復活した。


「お前ら北の人間のせいで、私達の生活はめちゃくちゃだ!」「奴隷小屋を公認するアデルハイドを捕らえて世を正させろ!」「国に税と娘を取られた私にはもう何も失うものはない!命を捨てても司令官を抹殺する!」


意外にも国王を非難するものは居なかった。現代を生きる人には理解しがたいことだが王と国は別であり、国や司令官、王族は非難しても国王は別格なのだ。


とはいえ、ブランジュ王側からすれば王の代理で赴任している司令官に歯向かうのは王に歯向かうのと同義であった。


叫びの後、内城から民衆が勢いよくフランツの方へ叫びながら走ってきた。


反乱の指令役は静止を指示したが、民衆を止められなかった。軍隊の礼儀では敵司令官や貴族王族には敵方であっても銃で狙わない習わしだが、民衆にはそんなこと関係なく、銃弾や矢のようなものが数発飛んできた。


アデルハイドに扮したフランツに向けて散発的に何かが飛んでくるが城壁上まで届かない。多方の人間は銃や弓を仕舞って城壁へ向けて走ってくる。


あくまでアデルハイド姫を殺さず人質にするつもりのようだ。


フランツは後方へ駆け出し西門の中に潜り込んだ。ドルナンドは既に居ない。


外城壁の下の通用扉が突破され要塞塔の階段を駆け上がってくる音が聞こえる。


フランツは近くにあった大砲の残骸を城壁上に上がるための塔の扉の前に置いた。


ドンドン!と扉を叩く音が聞こえる。扉越しに「おい木槌をもってこい!」という声も聞こえる。


フランツは下に降りるのを諦め城壁の上を真横から夕日に照らされながら走った。


内城と外城壁を結ぶ崩壊した連絡通路へ!崩壊して通れないとか敵がいるかもしれないなんてことは何も考えていなかった。とにかく内城へ近づこうとした。


外城壁は高さは7mほどと低めだが、幅は12mほどある。城壁が低いのは上から大砲で狙いやすくするため、かつ敵の大砲から当たりにくく当たっても崩れにくくする為だ。


幅12mもあるから端っこを走れば城壁下にいる民衆から死角となり姿が見られることはなかった。


なおも夕日を左手に見ながらフランツは走る。ボロの奴隷用の靴が裂け始める。


すると目の前にひとりの人影が現れた。防御塔の横に隠れていたようだ。


フランツが身構えるとその人物はフランツめがけて走ってきた。姿をよく見ると平民服を着た姫の従者エレミエだ。


「まさかと思ったけど、やはりフランツでしたか。なんのつもりですか」


「エ、エレミエさま。話すと長くなります。とにかくこれでアデルハイド殿下から反乱軍を引き離すことができました」


「あなた、馬鹿者ね。追われてる者がアデルハイド様がおわす内城に来てどうするの」


フランツはその時はっとなった。何も考えず城を目指してしまった。なんということだ。


「早くその服をよこしなさい。そしてフランツ、お前は城へ行きなさい」


「えっ。どういうことですか」


「私が身代わりになる。お前は殿下の身代わりという大事な任務があるのよ。捕らえられるわけにはいきません。それに私は殿下がお帰りになるまでお前のお目付け役を言い渡されていることを忘れたのですか。私はお前を守れと殿下に言い渡されています。命令に背くことは恥!下級とは言え、私は貴族の誇りがあります」


「エレミエさま・・・私、いえ僕はとんでもないことをしてしまいました」


「聞いている暇はありません。早くしなさい。他の塔からも既に反乱勢力が登り始めています」


フランツはあえてゆるく締めているコルセットを片手でほどくとボロ着になった。代わりにエレミエの服を羽織るようにして着てからドルナンドの上着をその上から羽織った。


エレミエはコルセットも締めずドレスを適当に着込んでスカートの下の部分を走りやすくするよう引き裂いた。


「よく聞くの。私は脱出経路を探す命を受けていますから、どのみち城には戻れません。私のことは気にせず城を目指しなさい。内城壁から少し左、赤い屋根の4階建ての建物が見えるでしょう。あの建物には平民に化けた親衛隊員がいます。シャトージャンヌ旧城時代に作られた秘密通路があるからそこから城の中に入りなさい。合言葉はエリジウム!」


近くの塔から怒声が響き、大きくなってきている。


「それとこれを持っていきなさい。話せば長いから・・・とにかくアデルハイド殿下に見せれば分かります」


エレミエは胸につけていた赤青の石がはめられたネックレスを半分に割り、青色部分だけをフランツに手渡した。


エレミエはフランツを突き飛ばし、その勢いでフランツは防御塔の死角に転げ落ちた。


エレミエは走り出し、ほぼ同時に塔から上がってきた反乱勢力数十人がエレミエの後を追って消えていった。


フランツは再び誰もいなくなった防御塔から地上へ降り、一路赤い屋根の4階建ての建物へ走った。


汚れた平民服にボロ靴、男物の上着をフードのようにして被っていたが、平時ならとにかく、火の粉と怒声が絡み合う地上では同じような格好で逃げ惑う一般市民も多く、誰も気に留める様子は無かった。


赤屋根の建物へ入ると外の喧騒もかすかに聞こえる程度で、嘘のように静かだ。薄暗いリビングにはひと組の男女が机を挟んで向き合って座ってる。


反乱勢力に入られたと思われたのか、単純に驚いたのか、二人は身構えた。男の手には明からに短銃かナイフか武器が後ろ手に握られている。


「だ、誰だね君は」

座っていた男が問う。


「エ、エリジウム」

フランツが答える。


男は振り向かず、何も尋ねず動作一つもせずこう言った。

「地下のワインセラー、暖炉の真下あたりだ」


フランツは地下室に降りて、1階の暖炉があったあたりの真下を調べるとホコリが払われ最近開けたと思われる蓋がある。それを開けると石の階段が現れた。


フランツは勢いよく階段を降りていく。


城では反乱軍よりも驚異となる味方が待っているとも知らずに。



つづく


読んでくださりありがとうございました!


敵に友が居て味方に敵が潜むこの物語。

次回から敵よりも手強い味方とのいろいろな戦いが待っています。

果たしてこの先どうなっていくのか!乞うご期待!


次のUPも比較的すぐできると思います。

とか言って2週間近く空いてしまったのが前回でした( `・ω・) ウーム…難しい。


こ、今回こそはちゃんとUPを目指そう(*´∀`*)

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