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ダンジョン作成記  作者: MS
第一章
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番外編エレナ

 ホムンクルスのエレナは己を創作して頂いた創造者様の前に跪き、顔を伏せていた。


「しばらくそのままで待て」

「はい、創造者様」


 創造者様がランタンを自ら持たれてゆっくりと離れて行かれる。


 光源がなくなった為、一寸先も見透せない闇の中でエレナは歓喜に包まれていた。

 何よりも尊い創造者様に創られたのだ、狂おしい程に望まれて!


 普通はそんな事は伝わらないのだが、彼女の外装に凝りに凝ったためか?


 創造者様の御命令がなかったら、床をゴロゴロと転がり回り、足をバタバタさせて全身を使って、この歓喜を現していた。

 伏せている顔には何の表情も出ていないが。

 それは胸内から溢れだしそうな歓喜を抑えこんでいるためだ。

 それに今は御命令がある、全身全霊を賭けて遂行する。

【そのままで待て】

 髪の毛一本も動かさず、瞬きもしないで命令を守っていた。



 創造者様が御戻りになられ光が辺りを照らす。

 御自ら私の傍までおいでになる。


「頭を上げよ」

「はい、創造者様」


 伏せていた顔を上げ、御尊顔を拝見する。

 深い慈悲を浮かべた瞳、闇をも凌ぐ漆黒の髪。

 このお方が私の創造者様。


「服を着る様に」

「畏まりました」


 創造者様から服や下着、靴等を下げ渡される。

 賤しい僕たるこの身に手ずからに与えて頂けた!

 身に余る光栄に胸が高鳴り幸福感に溢れる。

 着る様に御命令為されたので、その意味を考える。

 創造者様を御待たせする訳にはいかないので、瞬間で浮かんだ考えに飛び付いてしまった。

 着る過程をお楽しみになられるのだ、と

 爪先から髪の毛一本まで総て創造者様の物。

 鑑賞為されるのなら喜んで望まれる姿勢になります。

 そうならば淡々と着替えるのも嬉々と着替えるのも興醒めだろう、ならば

 恥ずかしげに着替えるのが正解

 どれぐらい時間をかけるべきか?

 創造者様の反応で調整しましょう、と着替え始めたのだが創造者様が直ぐ様背中を向けられたので、失敗してしまったと目の前が暗くなる

 期待を裏切ってしまった。

 短絡的過ぎたとの後悔に苛まれる。

 これ以上の不興を与えぬ様に急いで服を身に付けていく。

 着替え終えるとすぐさま跪き頭を伏せる。


「御待たせしました」

「立て」


 急いで立ち上がる。

 先程の失敗で思わず創造者様を伺ってしまう。

 どうか御許しを、と。

 創造者様は私を暫く観察されると。


「付いて来るように」

「畏まりました」


 創造者様は何事か深くお考えられながら進まれる。

 従者の分を守り付いて行く。

 主の思考を遮るなど、許されぬ事だがすがり付き許しを請いたい。

 だが、そんな事をすれば不興を買うは必至。

 今は御慈悲を祈るしかない。

 どうか汚名返上の機会を、と。


 新たな部屋で椅子にお座りに為られたので、跪こうとするが不要と御命令がありドア横に控える。

 無言の空間の中、先程の失敗と弁明が頭の中で何度も繰り返される。


「近くへ」

「畏まりました」


 私の処遇を御決めになされたのだろう。

 背筋を伸ばし綺麗に見える様に歩く。

 後三歩程の距離まで近寄るとスカートの両端を摘まみ、軽く持ち上げながら腰を曲げ頭を深々と下げ、膝も深く曲げる。


「お呼びでしょうか」

 創造者様に創られた存在ものとして見苦しい最後だけは避けましょう。

 そんな覚悟を持って創造者様の前に立つ。

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