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ダンジョン作成記  作者: MS
第二章
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二章第二十話

 地下迷宮の施設維持、魔具使用の為の魔力備蓄を執務室で執り行い、改めて戦力増強の創作魔物を再考するネームレス。

 創作可能魔物一覧表を調べていると新たな追加創作可能魔物を発見。

 イースの階級進化ランクアップ実行で解禁されたのだろう、それらの基本能力値や説明文を読み検証。

 その中に内政(家政)に適した魔物を発見。創作必要Pポイントが10Pと低い事、種族が精霊であり食糧負担がない事。

 イースがまだ戻らないが戦闘能力が皆無なので創作を決定。

 時間を無駄にしない為にDMダンジョンマスター室で、その魔物を創作し改造カスタムを施し召喚。

 これまでと変わらず部屋中央付近に魔法陣が出現し閃光を放ち消え去る。

 身長は一メートルに届くかどうか、可愛らしい外見に自己主張が激しい胸部。

 同じ精霊種の水精霊ウンディーネミールは少女の姿で現界した、だが今回はカスタム時に確認していた外装で現れた事に内心安堵する。

 そんな感想を抱いていたネームレスに


「お仕事するよ!」


 にぱっという感じで彼に笑いかける住居精霊ブラウニーリーン。

 精霊と言えば無口、無表情が通常運転のミールを基準に考えていたネームレスは虚を突かれ硬直してしまう。


「お仕事するよ!」


 予想外の事態に軽い混乱状態になるも最早習慣とも言える外面偽装で表に欠片も出さないネームレス。

 それ故か彼の様子を気にしていない為か同じ言葉を重ね期待と希望に満ち溢れた表情かおでネームレスを見詰めるブラウニー。

 内心の混乱状態を表に出さない為に表情を押し殺した為の無表情の彼、他に部屋の様子を見れる者が居たならば冷徹な視線をリーンに投げているように見えていただろう。

 だが彼女はそんな視線も気にせず全身でネームレスに好意を表していた。

 混乱して固まっていても何もならない、と気を取り直し


「我が名はネームレス。この地下迷宮のダンジョンマスターだ」

「お仕事するよ!」


 言葉を選び、噛み砕き、手振り身振り……何を言っても尋ねても、「お仕事するよ!」としか返ってこない状況に疲れ果てたネームレスはリーンからの情報収集を諦めた、裏切りや反逆などするように見えないし。

 仕事をください、と顔に書いてある彼女をエレナの元に連れて行く気力もなくなっていた彼は「掃除を頼む」と何も考えずに命じてしまう。

 あ、掃除用具の置き場や手順を説明しないと、とすぐさま気付き話しかけようとして再び固まる。

 帽子から靴まで茶色で揃えられ、髪と瞳も茶色で肌は日焼けしたような褐色のブラウニー。

 どこから持ち出したのか体長に合った道具類で床を掃き掃除するブラウニー。雑巾がけするブラウニー、梯子はしごを壁にかけ、はたきで天井や壁の埃を落とすブラウニー、壁を拭き掃除するブラウニー……

 魔法陣もないのに三十人ぐらいに増えているブラウニー達に思考停止状態に陥るネームレス。


 ブラウニー

 古い家や屋敷、城に宿る精霊で、家人が眠っている間に掃除をしてくれる事がある。


 石畳で作られている壁や床も磨かれた大理石や黒曜石のように輝き、見違える程に綺麗になったDM室。

 ブラウニー達の「お仕事するよ!」の大合唱に正気に戻ったネームレスは、部屋から消えたブラウニー達を探すため慌てて飛び出したのだった。


 地下迷宮と農場部屋を繋げる扉から入ると骸骨兵が二体、歩哨として待機する詰め所。

 その詰め所にエレナを呼び出し、ネームレスはブラウニーを紹介していた。


「エレナ。ブラウニーのリーンだ」

「お仕事するよ!」


 DM室の騒動後、執務室の掃除をしていたブラウニー達に上司を紹介すると言うと何故かリーン一体に戻った。

 考察は後からじっくりしよう、とその現象は横に置き顔合わせを優先。


「リーン、上司になるホムンクルスのエレナだ。指示に従うように」

「お仕事するよ!」


 エレナはリーンと視線を合わせ


「よろしくお願いしますね、リーンと呼んでも?」

「お仕事するよ!」


 変わらない返事をするリーンだが、エレナは気にしてない様子で会話を続け意志疎通が出来ているようだ、多分。

 安心するべきか自分の能力不足かと少し悩み、エレナに後を任せるとDM室に戻ったネームレスだった。


 彼がDM室に入るとイースも戻っており、骸骨兵の訓練について報告を受ける。イースと訓練内容の話し合い後、再び創作と召喚を再開。

 まずは枝悪魔インプを四体創作・召喚、デンスと同じ改造カスタムを施したからか、イースの存在感故か従順だ。

 次は留守中に捕虜の反逆を抑止するために動く石像ガーゴイルを創作し召喚。


 ガーゴイル

 魔法で疑似生命体化した石像を指す。自我がなく判断力が低いが石で出来た体は硬く、翼での飛行が可能で戦闘能力が高い 。


 農場部屋詰め所に設置し、詰め所に人間ヒューマン森妖精エルフが侵入したのならば攻撃せよと命じる予定だ。

 設置の時はネームレス、ミール、イースの監視下でエレナ達に害がないか確かめてからであるが。

 食糧事情を考えるとアンデットや精霊、魔法生物で戦力を整えたい。

 だがアンデットは聖なる力に弱く、精霊は力が環境に左右され安定性に欠け、今現在創作可能な魔法生物は戦闘力か知能面で心許なさすぎる。

 偽装や繁殖も考慮すると、やはり小鬼ゴブリンを創作して数を用意するべきだな。

 

 ブラウニーに10P、インプに120P、ガーゴイルに50P消費。家畜用と緊急用に200P確保しておくので、残り使用可能Pは349.5P。

 ゴブリン一体を創作するのに25P必要で改造にPを追加しないなら十三体は創作可能。

 寝床は拡張すれば良いだけだが、食糧事情を考えるとそんなに増やしても問題だろう。

 ならば改造に追加Pを注ぎ質を上げるか、以前より温めていた構想の検証も兼ねて。


 DM室にある唯一にして地下迷宮の心臓である宝石を冠する椅子に腰掛けるネームレス。

 その傍らに控えるのはランクアップし、スケルトンからハイスケルトンへと変貌を遂げた骸骨兵長イース。

 そして跪くゴブリンとインプ。ガーゴイルは片隅で置物と化していた。


「我が名はネームレス。この地下迷宮のダンジョンマスターであり、おまえ達の主人だ」


 喋れぬガーゴイル以外の、新たに創作された魔物達から了承の返答がある。

 新たに創作されはゴブリンはランの様な森林探索や偵察に有能な技能スキルは付与せず、ヤンやマリにハブの様な戦闘特化タイプの基礎能力値強化タイプのゴブリンを六体、魔法を扱えるように改造を施したタイプが一体の計七体。消費したPは250P。

 ネームレスはイースに創作されたゴブリンを、訓練に参加させるように命じ下がらせ。

 インプをデンスに預けると、ゴブリン寝床部屋の拡張等を済ませる。ガーゴイルの設置は捕虜が寝静まってからなのでDM室に放置。

 施設維持魔力の補充や、新たに創作した魔物を組み込んだ戦術の構築、新旧の魔物の交流等。

 これらに数日は必要だろうとネームレスは執務室で、戦術構築や襲撃計画を練るのだった。

※ ※ ※ ※ ※


 人間から見るとエルフは細長く尖った耳をした、繊細で美しい容姿をした種族だ。

 身長は大きな差はなく、感覚が鋭敏で夜の闇にも行動を妨げられる事がない。

 体つきは華奢で細いが虚弱とはほど遠く器用で俊敏、筋力こそ低いが魔力が高く、弓術と精霊魔法の優れた担い手。

 独自の文化を持ち閉鎖的で森から出る事などほとんどない。

 そんなエルフの一員でありながら奴隷として捕らえれ、ネームレスの地下迷宮に連れて来られた美貌のエルフ。

 彼女は懸命に二体の精霊に身振り手振りで語りかけていた。

 エルフや精霊魔法の使い手にとって精霊は血を分けた肉親、伴侶や恋人よりも近く親しい存在である。

 そのため千年あると言われるエルフの寿命も加わり、妊娠率の低下による種族数の減少に拍車をかけていた。

 ちなみにリーンは執務室と自然洞窟偽装部、農場部屋を除いた部屋の清掃を終えて、同じ精霊のミールと行動を共にしている。

 精霊魔法は精霊との絆(友愛)の深さが、威力や応用範囲等に強く影響する。

 無論、魔力の多寡、魔法への造詣も大事だが、絆が深ければなくても問題なくなってしまう。

 ヴォラーレとデンスはエルフの精霊への干渉に警戒しており、どちらかが常に監視を払っている。

 デンスの配下に四体のインプが配属されてからは、気配の遮断や諜報の訓練の一環に、優秀な魔法戦士であるエルフに気付かれないようにしての監視作業が組まれる事に。

 その監視に気付いていないのか、承知の上なのかエルフから反応はないが。

 魔法の道具マジック・アイテムで喋る事が出来ないエルフは、身振り手振りで意志を伝えようとしている、が上手く伝わっている様子には見えなかった。

 そんなエルフと精霊の様子をヴォラーレは、美しいエルフの少女と精霊の交流を見守るお姉さんという演技で監視している。

 デンスと違い監視に有用な技能を持たない彼女は、下手に気配を消そうとするよりはと堂々と見張っていた。

 当初は純粋な美貌ならば己を超えるエルフにネームレスの寵愛が行けば面白いのに、と考えていたヴォラーレだが、今は何とかしてネームレスの興味をエルフに向けられないかと監視をしながら策を練っている。

 でも、あの胸だとネームレス様の食指は動かないかも知れないわね、やっぱりエレナ様とネブラに誘導すべきかしら?

 入浴や着替えの時に確認していた裸体を、思い浮かべながらヴォラーレは頭を悩ませる。

 ネームレスの寵愛を独占するのも手だが、彼を落とすのに長期戦になるのが目に見えている現状、嫉妬で消されるのは避けたい。

 ヴォラーレを排除可能な女性型魔物は現状ミールだけなのだが、早急に対策をとらないといけないと彼女の第六感が警鐘を鳴らす。

 床関連で淫魔の自分に勝てる相手は居ない、それにネームレスの伽の調整係になれば、この地下迷宮での地位と安全は盤石。

 それに快楽に貪欲になって貰わないと計画に差し障りもある。

 全然噛み合っていないエルフと精霊の交流を眺めながらヴォラーレは策謀を練るのだった。



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