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ダンジョン作成記  作者: MS
第一章
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一章第二話

 ホムンクルスのエレナは跪き、顔を伏せていた。

 白色に輝く肌が艶やかに鴉の濡れ羽色を思わせる髪の間から覗ける。

 そう彼女の裸体を隠すのは立っていれば足首まで届く髪だけだ。

 跪き顔を伏せていて、彼から距離もあるので髪以外は何も見えないが


「しばらくそのままで待て」

「はい、創造者様」


 魔具のランタンとカスタム本を持つと執務室へと歩いて出て行く彼。



 ドアが閉まり、仮称王座の間から見えなくなると小走りになり執務室の椅子に座る。

 裸で出てくるのは想定外であり、頭で組んでいたエレナに対する対応を変えざるえなかった。 魔方陣が消え去る時の閃光でも凝視を止めなかった彼にはエレナが跪く僅かな時間、彼女の裸体を確認している。

 カスタム本の装備や道具の購入手続きの章を再確認しながらも、エレナへの対応も考える。

 説明書、カスタム本、技能ウウゥル大陸知識。

 これらから得た情報から出た結論なのだが、モンスターは裏切る可能性が大きい。

 簡単に裏切るとは考え難いが、裏切りか離散は絶対にある。

 故に対応は慎重に、だが卑屈にならない様にしなければ。

 殺せ、死ねと命じる立場の自分は部下に侮られる訳にはいかない。

 侮られたら命令を無視されたり、自分の命よりモンスター自身の安全を優先するだろう。

 創造者だ、ダンジョンマスターだと居丈高な振る舞いや高慢な態度も反感や不必要な恨みを得るだけだろう。

 時と相手によっては必要だと理解して。

 だが恐怖で縛るのも下策。

 部下からの積極的な献策をなくし、失敗時隠蔽に走るか逃げ出すかだ。

 初期使用可能ポイントの四割を自己強化に消費したのも、創作したモンスター達の反乱等を警戒しての故。

 理想は親愛を持ちながらも畏敬される、だ。

 今はそんな器量はない、ないが


 装備や道具の購入、ダンジョンの設備の管理等は執務室で指示する。

 手続きとは執務室の椅子に座り、机に向かい。


「起動、接続、装備一覧」


 目の前に画像が浮かび上がる。

 ファンタジーの世界観なのに、SF?

 いや、現代風のトイレやリビングが出ていた時点で今更、か。

 タッチパネル式で魔力を使う必要があるが。

 基本的にモンスター創作一体につき銀貨千枚が支度金としてダンジョンマスターに支払われる。

 この執務室でしか使用できない仮想資金として。

 装備には要求ステータスがあり、それが満たされないと装備できない。

 消費ポイントが少ないモンスターを大量に創作すれば莫大な資金を入手可能だが。

 そういう判断は各ダンジョンマスターに任されているのだろう。

 服の一覧を呼び出すと、一先ず女性用の服装を一式購入する。

 ダンジョンマスターと創作モンスターのサイズの心配は必要なく仕上がるとの事。

 手続きを終えると机前の床に魔方陣が現れ、すぐ消え去る。

 ランタンと服一式を抱えるとエレナの元へと急いで向かう。



 跪き、顔を伏せているエレナの近くへ歩いて向かう。

 ランタンの明かりで浮かびあがる、黒髪が床に広がる様は月夜の湖の美しさを思わせ、溜め息が漏れる。

 美しい背中に視線が行きそうなのを自制し服一式を渡す。

 着るように言えば、その場で着替えだしたので驚いて彼女の顔を覗く。

 創られたばかりで羞恥心やらがないのか?

 との疑問は、長い睫を伏せ恥ずかしげにしていたので羞恥心はあるのだなと慌て背を向けたが。

 その為、エレナの表情に恐怖が浮かんだのに気付けなかった。



 仮称王座の間も執務室も、古く歴史を感じさせる。

 でなくて廃墟一歩手前。

 モンスター創作と現魔法や魔法で創作できない特殊部屋等の為に、威厳を出す為のバージョンアップにポイントは使いたくない。

 エレナが着替え終わるまで考える。

 創作したばかりなので好感度か忠誠度かは判らないが低い事はなかろう。

 最低限、雇用者と労働者の関係を築ければ良しとしょう。


「御待たせしました」


 振り返ると、再び跪き、頭を伏せていたので立たせる。

 おどおどと、不安そうに此方を伺うエレナに抱いた感想は、綺麗だな、いや、そうも思ったが警戒させてしまったか、だった。

 同行する様に伝えると執務室へとゆっくり歩き出す。

 考える時間を稼ぐためだ。

 初めてのモンスター創作で浮かれ過ぎていた、と反省する。

 少し落ち着いて考えれば、裸で出てくる状況も予測してシーツぐらい用意できていたはずだ。

 取り返しのつかない失敗でなければ良いのだが。

 彼女が自分から五歩ぐらい離れてついて来るのを確認する。

 自分が彼女の立場だったら、どう考えるか。

 創作され、召喚された直後に迷いなく跪いたのだから敬意はあったと思いたい。

 そうしなければ消されるとの恐怖心からでなく。

 その後の対応も良くなかった。

 光源はランタンだけだったのに、それを持って行ったので暗闇のなかで放置してしまった事。

 服を渡した後、早く着る様に、との言葉を命令ととらえ恥辱に耐えながら着替えだしたのかも。

 産みの親とはいえそんな事されたら、自分なら恨むな。

 仕事の上司にされたら訴える。

 え?もしかして詰んでる?

 仕返そうにも勝てないから従ってるだけ?

 いや、まて落ちつこう。

 不安そうに此方を伺っていたから、復讐やらは警戒しないでよいなら良いな。

 信用は低いと考えるべきだ。

 なるべくゆっくり歩いて来たがもう執務室だった。

 執務室の椅子に座り、手早く購入画面をよびだす。

 自分から離れた場所に控えているエレナに視線を飛ばす。

 椅子に座った後に、また跪こうとしたので不要と遮った。

 その後は寝室に繋がるドアの横で控えている。


「近くへ」

「畏まりました」


 色々と悩んだが本人、本ホムンクルスに聞くのが最良だと判断。

 取り敢えずだったので、一番安い物ばかりを揃えたのだが。

(美人は何着ても映えるんだな)

 此方に背筋を伸ばし綺麗に歩いて来るエレナを改めて良く見る。

 白い肌に黒髪が流れ落ちるのが艶やかだ。

 安物の服だからだろうか、歩くと揺れる。

 俯き気味な顔は瞳と肌色以外は日本人的。

 外見年齢は二十歳前後

 不安そうな表情と潤んだ蒼い瞳。

 切れ長の目は冷たい印象を与えかねないが瞳が大きく唇も小さめで可憐に感じさせる。

 後三歩程の距離まで近寄るとスカートの両端を摘まみ、軽く持ち上げながら腰を曲げ頭を深々と下げ、跪も深く曲げる。


「お呼びでしょうか」


 最悪な結果にならない様に願いながら言葉をかける。

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