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ダンジョン作成記  作者: MS
第一章
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一章第一話

 絶対に死なない、との覚悟を決めた彼は今


 使用した食器や調理器具を洗っていた。


 あの決意後すぐ様、仮称執務室へ向かおうとしたのだが

 テーブルの上の食器。

 シンクにて水に浸している片手鍋。

 それらが気になって、気になって仕方ないのだ。

 放置していたら気になって、集中できないと判断。

 一生懸命、鍋底の焦げを洗い落とす。

 鍋が綺麗になるころには激情も冷め、冷静になる。

 もう一度、己に問い掛ける。

 答えは変わらない。

 死なない。

 怒りゆえの激情からでなく、そう心から思える。

 急がば回れ、だ。

 部屋数も多くないだろうし、まずは探索を終わらせよう。



 仮称食堂にもドアが二つ。

 湯槽へのドアと、もう一つ。

 明るい部屋ゆえ気付いたがランタンも魔具で、魔力を流すと光量が増した。

 ランタンに、説明書と魔力指導書を持つと仮称食堂の灯りを消し探索を再開。

 次の部屋は再び石畳の部屋であり、湯槽部屋、仮称食堂と現代風の部屋が続いていた為、違和感が強く感じられた。

 正面に扉、すぐ右側にドアがある以外はただ広いだけの部屋だ。

 この部屋を仮称倉庫と名付けると右側のドアへ進む。


「成る程、此所につながるのか」


 仮称倉庫からのドアを開けるとそこは仮称執務室だった。

 仮称倉庫の扉が開かない事を確認すると、念のため仮称王座の間にて他のドアや扉がないのを調べる。

 隠しドア等がない限り行ける場所は全て確認し終えると仮称、いや執務室の本の解析を再開。

 本棚から一冊抜き出すとページをゆっくりとめくりだす。

 最初から最後のページを確認終えると元有った場所に戻し、新たな本を抜き出す。

 再びめくりだす。

 何冊も同じ行為を繰り返す。

 単調な作業の繰り返しは精神を削り、苦痛を生む。

 騙されているのでは?

 との疑心暗鬼に苛まれながらも本のページを捲る手を止めない。

 この世界へ招かれ理由は?

 何をさせたいのか?

 何故自分なのか?

 召喚されたのは己だけでなさそうだが欺瞞の可能性もある。

 隠し文ではあったが警告文をのせていたのは何故か?

 疑問は尽きず、疑えば全てが怪しく感じられる。


「有った」


 掠れた声が唇から漏れる。

 本棚の本の約七割方を調べ終わった時に日本語で書かれたページを発見する。

 そう、ページだ

 本でなくページを、だ。

 その本を机上に置き、確認を再開する。

 結局は日本語で書かれた本やページはその一冊以外なかったが。

 区切りが付いた所で限界を感じ、寝室のベッドへ。

 眠りに落ちる僅かな間に思った事はシャワーも浴びてないなと以外と暢気な事だった。



 微睡みから意識が浮上し目覚める。

 夢落ちを期待しなかったと言えば嘘になるが、やはりダンジョン内の寝室だった。

 固いベッドにごわごわとした肌触りのシーツだったが別段気にならなかった。

 彼は適応力に優れている様だ。

 箪笥を調べると肌着に下着、トランクスタイプだった、ズボンに長袖の上着がそれぞれ複数枚畳まれて用意してあり、サイズも確り合わせてある。

 因みにズボンにベルトはなく、紐で結ぶらしく紐も何組か用意されていた。

 押し入れと思っていた場所はリネン室で、シーツや枕カバーが綺麗にたたまれてある。

 シャワーを浴び、着替えるとそこには村人が居たのだった。

 このダンジョンマスターたる彼なのだが、黒髪、黒瞳。肌色や造形も日本人的であり、可もなく不可もない容姿。

 農耕民族たる日本人の真価を見せ付ける。

 洗い物を持って仮称食堂へ。

 洗濯機を回して食事を用意する。

 冷蔵庫の中に前回の余りの食材、棚には新たな食材が補充されていた。

 黒パンと干し肉と芋がやはり三個ずつ。

 飽食国家日本で育った人間にはかなり辛い食卓だろう。

 他のダンジョンマスターが自分と同じ日本人ならば、だが。

 洗剤は見当たらなかったので水洗いのみで、脱水後に乾燥機へ。

 前回はスープだったので、フライパンで干し肉を焼こうと考えるも油も見当たらず、肉からも脂分がでないので結局スープに。

 食べ終えると洗い物をかたづけ、乾燥機から洗濯物を取り出すとたたみ、箪笥に仕舞うと執務室へと向かう。




 机に付属していた椅子に座るとランタンの光量を調整する。

 魔力の扱いもだいぶ上手くいく様になった。

 寝る前に発見した本を開き、日本語で書かれているページを読みだす。


 説明書だとダンジョンの盾であり、剣であるモンスターはポイントを消費し創作する。

 と、書かれていた。

 例として、説明書の創作リストに載っているモンスターを紹介すると。


 コボルト

 二足歩行する犬。

 創作消費ポイント10ポイント。


 説明書原文だともう少し情報があるが、今必要そうな情報はこれぐらいだ。

 が、この隠されていた本の内容を知ると唖然とする。

 隠されし本、命名カスタム本の内容をまとめると


 ダンジョンマスター、創作モンスター等はポイント消費する事でカスタムできます。

 カスタム上のルール。

 カスタムで付与できる技能リスト。

 魔法リスト。

 ポイントを消費しないで技能や魔法を覚える、覚えさせるには。

 装備や道具の購入手続き。

 説明書に載っていない創作リスト。


 これを知っているかで難易度が確実に変わる。

 カスタム次第でもあるが、創作10ポイント、カスタム10Pで創作されたコボルトとノーマルコボルト二匹で戦わせるとしよう。

 消費Pは同じだが、カスタムコボルトが圧倒するだろう。

 運次第でもあるが、ノーマルコボルト十匹と戦っても打倒しうるポテンシャルを獲得できるだろう。


 或いは装備品の購入でもだ。

 ノーマルコボルトの攻撃は噛み付きと爪による引っ掻きだ。

 因みに説明書によると戦う訓練を受けてないが農作業で鍛えられている農民と一体一匹で戦うと勝率は四割、兵士相手だと裸の時に襲わないと傷すら付けられない、と書かれていた。

 そんなノーマルコボルトでも武器を持たせ、 鎧を着せ、盾を持たせれば

 同じノーマルコボルト同士なら装備有りが有利である。

 追加Pのないカスタムコボルトでも、上装備で武器技能と盾技能を付与すれば農民を圧倒できる様になり、兵士にも傷つける事も可能になる。

 追加10Pありカスタムコボルト装備付きなら兵士も殺しえる。

 平均的な兵士ならだが。


 説明書にカスタム本、ランタンをサイドテーブルにのせ、彼は仮称王座の間にある宝石付きの椅子に座っていた。

 創作やカスタムは、この椅子に座ってないと不可能だからだ。


「ダンジョンマスターのカスタム開始。」


 頭の中に情報が浮かび上がる。



名前:

種族:ダンジョンマスター

性別:男

技能:

魔法:

能力値

ST(体力):10

DX(敏捷力):10

I(知力):10

HT(生命力):10

HP(耐久力):10

MP(魔力):10



 能力値の10とは、この世界の人間ヒューマンの平均値だとカスタム本には書かれていた。

 科学技術の発達した現代人、しかも平和な日本に住んでいた自分のST(体力)やHP(耐久力)が魔物モンスターやらとも戦えるヒューマンの平均値とは信じられない。

 記憶を弄られた様に、身体も弄られているのだろう。

 種族がダンジョンマスターだし。(STを2低下)

 そう念じると

ST:10→8

《20P獲得》

 能力値を減らす、不利になる技能を付与する。

 これによりポイントを獲得できるが、この方法で入手したポイントはそのカスタムしたモンスターにしか使用不可なのだ。

 その後も能力値を変更して以下の数値にした。


ST:8

DX:12

I:15

HT:13

HP:10

MP:48


 ここ迄で339ポイントを消費。

 そして技能の付与。

 魔法の才能

 ウウゥル大陸知識

 魔法語

 魔法:六種類

 43.5ポイント消費し、残り使用ポイント617.5ポイント。


「カスタム終了。」

 

 仮称王座の間の大扉前。

 彼が大扉へ指差し


変化魔法チェンジ・マジック


 大扉を押し開ける。

 魔力指導書には魔法は訓練せねば、魔法は使えないと書かれていたが。


創造魔法クリエイト・マジック


 水の様に変化していた土が石畳に創作され、廊下を形成されていく。

 カスタム本に解決方法が載っていた。

 MP(魔力)を消費しながら廊下を創作していく。

 魔法は魔道書から呪文と動作を読み解き、呪文を唱えながら両手両足で定められた動作が必要。

 呪文と動作が正確ならば魔法が発動する。

 呪文と動作の意味の理解が深まると、呪文や動作を省略可能。

 極めると動作も呪文も必要なくなり、MP消費量も激減される。

 本人の資質や、師匠の有無。

 習得に費やせる時間等で魔法習得の時間は変わるが。

 カスタムはその理を簡単に越えさせる。

 ポイントを消費する事で本来なら何百時間とかかる、習練や学習の効果を一瞬で修めるのだ。

 勿論魔法以外の技能も同じく、魔道書を読み、発音に必要な魔法語は日本語より理解が深くなった。



 説明書にはダンジョンを作らなければならないとの章の後、ゲームのチュートリアルの様な感じでポイントを消費しながら廊下や部屋を作成し、ダンジョンを作り、モンスターや罠を配置する章が書かれている。

 だがポイントを消費してダンジョンを作成しなければいけないとは書かれていない。

 執務室に隠されているカスタム本を発見できなければ、ポイントを消費しながらダンジョンを作るしかないだろうが。


 いや、カスタム本を発見して、ダンジョン創作魔法を知りえても習得しない可能性もある。

 魔具の使用で、MP消費のリスクを体感した後だと。

 一瞬で作成でき、労力を使わないがポイントを消費するか。

 魔法の習得必須で、時間もかかり労力も必要だがポイントを消費しない創作魔法か。


 吐き気、目眩、倦怠感に苦しめられながら仮称王座の間の宝石椅子に座りこむ。

 魔法が使える事に興奮し、加減を間違えた。

 長さ五メートル、高さ三メートル、幅三メートルの廊下を作っただけで魔力が危険領域に。

 魔力の回復に睡眠は必須ではない。

 体力を回復する様に身体を休めていれば魔力も回復する。

 だが軽い家事でも、何かすると回復しない。

 モンスター創作で補助要員を作らなければ。

 しかし魔物を創作すれば種によっては食糧が必要になる。

 説明書とカスタム本の創作可能モンスターリストを眺めながら考える。

 アンデット系や魔法生物系ならば食糧は必要ない、よな?

 やっぱり、家事と言えばメイドだよな?

 彼の名誉の為に述べておくが、この時の彼は魔力の使いすぎによる体調不良で判断力や理性のたがが緩んでいたのだ。

 多分。

 魔法生物系モンスターの一種で現レベルで創作可能モンスターにホムンクルスが存在する。

 技能錬金術の高習熟度と必要な器具や材料が有ればポイント消費なしで作成可能だが、手間と時間と資金がかかるのでモンスター創作で作りだす。

 ホムンクルスはカスタム本の発見か、ダンジョンマスターのレベルアップにて創作可能となる。


「モンスター創作開始」


 瞳を閉じ、青白い顔で紫色になった唇を開き弱々しく紡ぎだす。


「ホムンクルス創作、カスタム開始」

《ホムンクルス創作必要ポイント15ポイント消費。カスタム指示要求》


名前:

種族:ホムンクルス

性別:

技能:

魔法:

能力値

ST:8

DX:10

I:10

HT:9

HP:4

MP:2


(コボルトより弱いのか。)

 元来ホムンクルスは錬金術士の助手や家事の為の存在で、戦闘行動は設計段階で考慮されていない為戦闘力はないに等しい。

 モンスターに分類されてるので彼の勘違いも、致し方ないものだが。

 性別を女性とし、髪色は黒、瞳の色は蒼に。

 肌色は欧米人の様な白色に、スタイルは巨乳で腰のくびれは可能の限りくびらせ、ヒップは大きすぎず…

 繰り返すが、彼は魔力不足の体調不良で理性のたがが飛んでいるのだと思われる、多分。

 外装の出来映えに納得がいかない彼だが、ふと思い出す。

(技能付与美形)


《技能付与美形必要ポイント10ポイント、モンスター所持ポイントより消費》


 先程よりもっと細やかな調整が可能となり、嬉々として彼の理想らしき外装を整えていく。

 椅子に座って念じるだけの創作やカスタムは魔力の回復を阻害しない様で体調不良からも回復したのか、青白かった顔色も普段と変わらなく見える。

 出来映えに納得したのか、カスタム指示を次々と出し完成させる。

 

名前:エレナ

種族:ホムンクルス

性別:女

技能:美形、調理、礼儀作法

魔法:

能力値

ST:7

DX:11

I:11

HT:9

HP:4

MP:2


 モンスター創作、カスタム使用ポイント28ポイント。

 残り使用可能ポイント589.5ポイント。


「カスタム終了、モンスター召喚」


 興奮で震える声で告げる。

 仮称王座の間の中央の床に、魔方陣が出現し強く輝きだす。

 瞳に強い好奇心と期待を浮かべながら、魔方陣を見詰める。

 一際大きな閃光を放つと魔方陣は消え失せた。

 そこには……

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