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ダンジョン作成記  作者: MS
第一章
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一章第十一話

 地下迷宮ダンジョン

 予兆もなく突然出現し、魔物モンスターを産み出す。

 出現したばかりの地下迷宮でも、村を滅ぼせるだけの魔物がいる。


 神殿では地下迷宮は地上を狙う邪神が己の眷属を使わして作らせている、としていた。

 真偽はさておき。



 ある時期まで地下迷宮は発見されればすぐさま駆逐されていたが、地下迷宮最奥の宝石に若返りの力が発見された事で変わる。

 急速に研究され、宝石が大きければ大きな程効果が強い事。

 五階層以上の宝石を使用すれば不老が可能になる事が発見される。



 それからは地下迷宮は資源と定められ、発見時の報告の義務化、独断での迷宮攻略時の厳罰。 多くの国で似た法律や王命が発令される事になった。

 この経緯から探索者と言われる職が誕生した。

 地下迷宮を探しだし報告する、迷宮からあふれでた魔物を退治して等で褒賞金を得る。

 領主や役人に報告すれば大抵は、その探索者に攻略許可が下る。

 許可が出ない時は褒賞金に色がつけられるし、攻略を辞退する人間も多い。

 


 国が地下迷宮を飼う事もある。

 発見されてすぐに攻略すると入手出来る宝石ー魔石ーも効果が低い。

 だが放置する訳にもいかずに、地下迷宮の出入口に駐屯軍を置いて管理する事に。

 そして死罪の罪人等の処刑場とし、迷宮を育てるのだ。

 調査を徹底し、魔物の間引き等での管理をして魔石を成長させたら狩り取る。

 五ヵ国同盟やスヴィエート帝国の様な国力に余裕がある国家でなければ、発見しだい駆逐するしかないが。




 魔力の回復中、骸骨兵達の喧騒を耳にしながら思考を重ねる。

 いくつかの擬装を考えていた。

 骸骨スケルトンを使う事で死霊魔術師ネクロマンサーを装う。

 最悪、自然洞窟を根城にした死霊魔術師でスケルトン達を捨て逃げた、と調査や討伐に来た人間を騙す。

 アンデットの為、食料が必要なく反乱の危険が低い事も創作を決定した大半の要素だが。

 第二案は犬人コボルト小鬼ゴブリンを使って、野良やはぐれが自然洞窟に住み着いただけ、と騙す。

 つまり、この地下迷宮を地下迷宮だと気付かせない事を優先して創っているのだ。



 疲労で限界になるまで作業を続け、夢を見ない程深く眠る。

 今日も彼の作業は遅くまで続くのだった。




 ファランクスという戦術がある。

 古代ギリシアより続く歩兵戦術だ。

 彼は映画で見た記憶から骸骨兵長イースに伝え、結果骸骨兵達の行軍訓練が開始された。

 右手に武器を、左手に盾を装備し、右隣の兵の盾に自分の右半身を隠して戦うのだ。

 魔法のあるこの世界で似た戦術があるか不明だが。

 正面からの攻撃に高い防御力を誇るが、機動力がなく側面や背面からの攻撃に弱い、最右翼の兵の右半身がさらされるといった欠点もある。

 ファランクス時の行軍は本来なら打楽器(太鼓等)でタイミングを取るのだが、訓練に訓練を重ねた骸骨兵達には不要。


「ゼンシン!」


 以前なら前衛も後衛もなく歩き出したが、前進するのは六体の骸骨兵達だけで弓兵は弓構えたまま微動もしない。

 その後もイースの指示に従い突撃、援護、後退を見事にこなす骸骨兵達。

 イースだけ一歩前に出、他の兵は横列一列で彼と向き合う。


「ゲンジョウノ、クンレンセイカデス」


 合図もなく一斉に片膝を付くと頭を伏せる。

 これも訓練の成果か?

 その疑問を飲み込み。


「見事だ。イース、骸骨兵達よ。頼もしく思うぞ」


 本当にそう思う、もはや芸術の域の統一感だ。

 彼らの忠誠がある限り、簡単に遅れはとるまい。


「アリガタキオコトバ」


 その声色に喜色を感じたのは彼の勘違いだろうか?




 骸骨兵の訓練を見学後、昼食を採ると以前の様にホムンクルス達との会議だ。


「さて、ミールはどうだ?」

「はい、創造者様。真面目な方です、口数の少ない方ですが」


 彼の質問に右側に控えたエレナが答える。


「そうか。ネブラ、麦の脱穀は大丈夫か?」

「はい、ご主人様。新たにできた水車小屋で可能だよ」


 麦の収穫時期が近付くと問題が浮かび上がった。

 脱穀である、調べると器具の購入か、農場部屋のバージョンアップで追加される水車小屋か、と判る。

 器具を詳しく調べると労力と時間が掛かる。

 水車小屋は魔具で麦を入れるだけで脱穀が可能とあり、永く使うのといずれ農場はバージョンアップするので、早いか遅いかの違いかと思いポイントを消費しアップしたのだ。

 器具の名前が気にいらない事も、後押しした。


 器具後家殺して何ぞや?

 後家殺しって未亡人専門の女好きの事だったはず、そんな道具必要ないな。

 これは彼の勘違いで、その器具の正式名称は千歯抜き、後家殺しは通称である。


 ネブラの報告は続く。


「鶏小屋の孵化器も増えて、卵も二個置けます」

「鶏は何匹ぐらい飼えそうだ?」

「はい! 二十匹ぐらいがストレスなく育てられるかと」


 数えられる様になりました! 褒めてください!

 全身からそんなオーラを振り撒く、尻尾を全力で振る幻影が見える。


「そうか、良い報告だ」


 意識して優しい表情かおと声色でそう言葉を掛ける。

 褒めてあげたいが、今は難しい。

 理解してくれるだろうがエレナに悪い。

 彼女の報告は何時も完璧に感じているが、彼女を褒めた事がない。

 それなのにネブラを褒めるのも、後は余りネブラを甘やかすのも考えものだろう。

 褒めるだけでも、こんなに気を使うのか。

 内心の溜め息を表に出さぬ様に気をつける。


 それゆえ先程の言葉だ。

 色々と受け取れる言葉、表情と声色で伝えた積もりだ。

 後で二人だけの時に改めて褒めよう。


「はい、ありがとうございます」


 どうやら伝わった様だ。

 報告は続く、小麦や大麦の予測収穫量と時期……


 前回の様な問題もなく会議は終了した。


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