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プロローグ
遠い昔のこと。
遥か彼方のフランスの地で、血で血を洗う凄惨な戦いがありました。
しかし、百年の長きに渡って続いた戦争は、ある日突然、ひとりの勇敢な少女の出現によって、終局へと向かってゆきます。
彼女の名はジャンヌ・ダルク。
“オルレアンの乙女”と呼ばれ、神の名の下に、フランスを平和へと導いたはずのジャンヌ――
けれども、天をも揺るがすほどに大きく膨れ上がってしまった、その絶大な人気を妬み、恐れた国王達の陰謀によって、彼女は悲劇の結末を辿ることとなります。
時は一四三一年。
魔女の汚名を着せられ、火刑に処されたジャンヌは、炎の赤が体に乗り移ると、空に向かって無垢な微笑みを向けました。
「神よ、貴女の御心に感謝致します」
最期の瞬間、彼女は、茜色の空の向こうに神の姿を見たのでしょうか――。