あの日のあの人
掲載日:2026/08/04
僕は、ずっとあの日のあの人を待ち続けている。
耳元で甲高い音が鳴り続ける。
「もうこんな時間か。」
カーテンからこぼれる一筋の光が僕の顔を、優しくなでた。今日もいつものように、歯を磨き、顔を洗う。そして、そんな日常から逃げるように散歩に出かけるのが僕の日常だ。見慣れた道をいつものように歩いていると、綺麗な黄色の羽をもつ蝶々が、ぼくの前を通り過ぎて行った。
僕は、あの夏を思い出した。
あの人が隣で笑っていたころの夏を、、、
「そういえば、あいつ蝶々すきだったっけ」
家に帰ると、机の上にはいつもご飯が準備してある。それを新鮮な気持ちで食べるが、どこか食べなれたような、落ち着くような味がする。気が付くと、涙で前が見えなくなっていた。
僕には、もうあいつの名前も顔も何もかもを思い出すことができない。
あいつって誰だっけ?
僕はまた散歩に出かける。何かを探すように、何かを追いかけるように。
僕は何に必死になっているんだ。すると、一匹の蝶々が目の前を通り過ぎていった。
僕は家に帰った。そして思い出す、もう50年も待ち続けていることに。
「いつもありがとう」
そう呟きまたいつもの日常に、戻っていくのだった。
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