表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【彼女の計画_短編_本編1部プロローグ/要約版】彼女の計画 ―職場の上司の裏アカウントを知ってしまった日から、私の“観察”は始まった―  作者: Taku


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/3

第1話   彼女の計画 ―弱みを握った瞬間―

※本作は全9部作『彼女の計画』シリーズのプロローグ(導入短編)です。

※この短編は彼女の計画第1部の要約版です。

本編作品のあらましを知りたい方向けに作っています。

 全3話で完結します。第1話からお読みください。


――この人の弱みを、握った。

※本編第1部の要約版です。ざっと流れの把握を頂き本編にいくか、本編読み出した後の確認用として読みください。


【プロローグ】


拓が純に自分の裏アカウントを教えたのは、何の気なしだった。


仕事の相談で行ったカフェでのこと。部署異動があり、純は新しい業務に戸惑っていた。上司である拓に相談したいと申し出たのは純の方からだった。


カフェで二時間ほど、仕事の話をした。一通りの指導が終わった頃、純がぽつりと言った。


「拓さんって、仕事以外で何か趣味とかあるんですか」


拓は少し迷った。プライベートの話はしない方だ。でも、この数ヶ月で一番頑張っている部下だった。少しだけ、と思った。


「実はね……」


拓は自分の性癖の話をした。パンストフェチであること。裏アカウントで性的な投稿をしていること。


話しながら、拓は自分でも驚いていた。なぜ、この若い女性にこんなことを打ち明けているのか。それはおそらく、彼女が「誰にも言わなさそう」だったからだ。職場で誰とも群れず、いつも少し距離を置いている。その孤立が、逆に信頼できるように思えた。


純は笑った。

「変態なんですね」

「そうだよ」

「でも、面白いと思います」


その言葉の裏で、純は何かを計るように拓を見ていた。拓は気づかなかったが、彼女の目は一瞬、冷たく光った。


――この人の弱みを、握った。


その感情が、純の中でかすかに芽生えた。


---


1. 裏アカウント


「今度、見てみる?」


拓はスマホを取り出した。純が覗き込む。アカウント名を伝え、実際に投稿を見せた。


「へえ……」


純は真剣な顔で眺めていた。


後日、純からメールが来た。


「見ました。変態ですね」


それだけだった。拓は「ですよね」と返した。それっきり、話題にはならなかった。


でも、純はその夜、もう一度アカウントを開いていた。投稿を一つ一つ、スクロールしながら、彼女は考えていた。


――この人は、ここで本当の自分を曝け出している。でも、それが誰にもバレないと思っている。


その「安全な場所」を、私は知っている。


それが、奇妙な優越感をくれた。


その夜、純は自分の日記を開いた。彼女もまた、書くことが好きだった。中学の頃から、日記をつけている。観たもの、感じたことを、自分の言葉に変換する作業。それが、彼女にとっての「呼吸」だった。


「今日、上司の秘密を知った。彼は、自分を曝け出す場所を持っている。でも、それが誰にも見えないと思っている。その無防備さが、愛おしい。そして、少しだけ、怖い。」


2. もう一人の女


拓と瞳の関係は、その頃すでに始まっていた。


瞳は同じ職場の人妻だった。夫がいることはもちろん知っていた。瞳から聞いた。「うち、レスなんですよね」と、飲み会の帰りにぽろっと言った。それから数週間後、残業の夜に体の関係を持った。


それから月に二度ほど、職場の外で会うようになった。職場では普通の同僚のふりをして。誰にも言っていない。純にも言っていない。


ある日、拓は瞳に何気なく言った。


「純にパンストもらったんだ」


瞳は笑った。

「あの子、仕事、よくやってるね」


パンストフェチだと知っている瞳は、冗談めかしてそう言った。拓はそれ以上、純とのカフェの話はしなかった。


---


3. 視線


あのカフェから、一ヶ月が過ぎた。


純は、変わらず真面目な部下だった。でも、拓は時々、彼女の視線を感じることがあった。振り返ると、彼女はいつも通り書類を見ている。気のせいかと思った。


ある日、残業帰りのエレベーターで二人きりになった。


「お疲れさまです」

「最近、どう? 仕事、慣れた?」

「はい。なんとか。ありがとうございます」


沈黙が流れた。エレベーターがゆっくりと降りていく。


その時、純が突然言った。


「あのアカウント、まだ続けてるんですか?」


拓は一瞬、固まった。


「……ああ」

「見てます、時々。新しい投稿、面白かったです」

「面白い?」

「ええ。写真もそうだけど、その写真に添えてある文章。ああいうの、書くの好きなんですか?」


拓は答えに迷った。確かに、写真だけでなく、短い文章も添えている。


「……学生の頃、小説を書いてたんだ。短いのをいくつか」

「小説?」

「文学サークルに入っててね。でも、プロになれるわけじゃないし、やめた。その代わりが、あのアカウントなのかもしれない」


純の目が、一瞬、輝いた。


「私も、書くんですよ」

「何を?」

「日記。でも、ただの日記じゃない。観たもの、感じたことを、文章にするのが好きで。中学の頃から続けてる」

「へえ……すごいな」

「すごくないです。ただ、書かずにいられないだけ」


エレベーターが一階に着いた。扉が開く。


「じゃあ、お疲れさまです」


純は、そう言って先に降りた。


拓は、その後ろ姿を見送りながら、何か引っかかるものを感じた。


その夜、純は日記を書いていた。


「今日、彼に『書くこと』の話をした。彼も昔、小説を書いていたらしい。私たちは、同じ穴の狢なのかもしれない。でも、彼はそれを隠している。私は、それを曝け出している。その違いが、今は愛おしい。」


「彼が『書かずにいられない』人だと知って、安心した。これで、彼のことがもっと分かる気がする。そして、もっと深く入り込める気がする。」


第1話をお読みいただき、ありがとうございました。


純は拓の秘密を知り、「観察者」としての第一歩を踏み出しました。

しかし、物語はまだ始まったばかり。

拓には人妻・瞳という恋人がおり、そしてもう一人、見えない“影”が動き出します。


次回・第2話「彼女の計画 ―見えない影―」

――その“影”は、誰も気づかない場所から、すべてを見ていた。


本編『彼女の背中』(第2部)、『彼女の視線』(第3部)も連載中です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ