手を出したい恋
この2人に『告白』はない。
「先輩! チョコあげます!」
「学校にそんなもの持って来るな」
冷たく返す。
そして、再び書きはじめる。
「校則違反?
じゃあ、可愛い後輩のことを考えて、尚更受け取ってもらわないと!」
「何でそうなるんだよ。
ここは学校、しかも図書室。黙って持って帰れ」
気にしない。
「…泣いてみましょうか」
「わかったよ、もらうよ」
手を止め、後輩の方に顔を向け、チョコをもらう。
1つ10数円のチョコ、それを1つだけ。
何の意味があるのやら。
「ありがとうございます!」
「もう持って来るなよ、この中学校の決まりを守れ」
よく考えれば、それは、人生で初めて何かをもらったことだった。
そして、
「先輩! チョコをあげます!」
「…」
笑顔で差し出してくる後輩。
これで、何個目だろうか? なぜか、毎日チョコをもらっている。今は、1月。バレンタインは、まだ近くない。
新しい遊びだろうか?
僕に話しかけるだけでも、十分遊びだろうに。
理由は、聞こえてこない。
「ほら、もらって下さい! いつものように!」
「…」
「先輩?」
『明日も渡そう! バレンタインまでずっとチョコあげる! 面白いから!』
理由は、わからない。
けど、こういうのは、聞こえてくる。
心の声が。
僕は、恋愛ができない。
相手にも、産まれてくる子にも、迷惑をかけてしまうから。
事実、両親からは避けられている。
小さい頃から、盗っ人のように、隠れて食事をしてきた。冷たい目で見てくるから。
そして、幼稚園から一緒の同級生たちからも。
「先輩? 本当にどうしたんですか?」
『また距離が近いのかな、私にはそういう感情がないから分かんないや』
「また、明日もチョコを持ってくるのか?
君のチョコは美味しいから、困るよ」
僕は微笑んで返す。
そして、今日もチョコをもらう。
後輩は、顔を赤くする。
『恋愛』の感情はなくても、そういう顔は、してくれるらしい。
まあ、去年の4月からの付き合いだから、わかってるけど。
僕は、恋愛をしたらいけない。
でも、そういう感情は、抱いてしまう。
そして、この、よく構ってくれる後輩を、からかいたくなってしまう。
数ヶ月後には、僕は受験。
告白はないけど、まだこの子と遊びたい。
ありがとうございました!




