リュミナとアレス
祭り会場は賑やかだった。
食い物屋台から 演劇 大道芸人
この街が夜更けまで賑やかなのは年明けの時くらいだ。
それを3日続けてこの騒ぎ。
肉の焼ける匂いがリュミナの鼻を刺激する。
「アレス!約束」
「へいへい」
奇しくも飯奢る約束を果たすことになる。
祭りには興味がなかったが、リュミナの食べっぷりと
何より倒されたとされる本人が祭りで、暴飲暴食をしてる姿は愉快だった。
「何笑ってるのよ!あなたも食べなさい」
竜というよりリスに見えるほど頬を膨らませながら食べるリュミナ。
ふと、アレスに疑問が浮かぶ。
「人間の姿になれるなら、あの時ついてくれば早かったんじゃないか?」
そんな問いをアレスがすると、リュミナは頭を捻っている。
「あの時の魔力だと大きすぎて、このサイズに収まらないのよ」
その後、いろいろ説明されたがアレスは半分も理解できなかった。
「要するに、今は全盛期の1割くらいね。」
1割とはいえ竜王だ。この国の衛兵では束になっても敵わないだろう。
アレスは苦笑しながらビールを煽る。
ここ最近で一番うまい。
「そんな苦いだけのものよく飲めるわね」
リュミナはまだ両手に肉串を持っている。
「大人になればわかるさ」
「千年くらいは生きてるわよ」
「その割には幼い喋り方だな。前はもっと威厳あったろ」
「外見に引っ張られるのかしらね、剣王もそんなこと言ってたわ」
「外見ね。それならしっくりくるかもな。前はすごい巨体で、態度もデカかった」
「乙女にでかいは失礼よ」
「あの城くらいあったろ」
「ないわよ。巣穴に入れないじゃない」
「お前の実家に城は入らんか」
「ダンジョンを実家って言う人は初めてだわ」
リュミナは笑っている。
アレスも、このくだらない会話が楽しい。
「剣王ってお前の前の部屋にいた。あの強いスケルトンだろ」
「そうよ。あの子もあなたに会いたがってたわよ」
「まじか、あれは強かった。剣術だけなら最強だぞ」
「それを倒しておいてよく言うわ」
「武器が脆かったんだろうな、運がよかった」
アレスの言葉にリュミナは呆れる。
「脆かったって、伝説級の武器よ。私が与えたんだから」
「まぁ 運だよ。それくらい強かった」
リュミナが頬を膨らませている。
「私は」
「ん?」
「私はどうだったのよ」
「そら強かったろ。決着つけられなかったし」
「お互いお腹空きすぎて、休戦したものね」
竜王とアレスの戦いは長かった。そして決着は空腹によるドローだった。
「そこまで強いあなたが、なんで門番なんてしてるの?」
「燃え尽きたというか、俺以外の強いのも育ってたし」
「飽きたの?」
「平たくいえばそうかもしれないが、わりかし平和だったろ」
話は終わらない。祭りの夜はいっそう騒がしく。
二人の会話は、活気にかき消されていった。




