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元勇者の俺と竜王(少女)の二人暮らし。 世界平和は家庭円満の後でいい?  作者: Hike技研


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12/12

ビキニという名の災厄

飲みすぎたのか、リュミナはまだ寝ている。


 漁師たちが仕事を終え、港へ戻ってくる時間だ。

 暇を持て余した俺は、港で彼らの働きぶりを眺めていた。


 大量の魚を捌く者、別の街へ運ぶために荷造りをする者。

 長い時間見ていても、なぜか飽きない。


 港の隅で魚を焼いていた老人が、手招きした。


「あー、部屋貸してくれてありがとうございます」


 昨日、海辺の家を貸してくれた老人だ。


「せっかく作ったがな。息子が街へ行っちまって、使わねーんだ」


 そう言う老人の顔は、少し寂しそうだった。


「よく寝れたか?」


「いや、連れのいびきがうるさくて、朝から散歩ですよ」


 酒を差し出されるが、首を振る。

 代わりに、老人は湯飲みにお茶を注いでくれた。


「可愛いお嬢ちゃんだが……そんなにすごいのか?」

「ええ。竜並みに」


 老人は腹を抱えて笑った。


「ふははっ! 昨日はすごかったな。ありゃ竜神様でも不思議じゃねぇ」

(まさしく竜王です)


「若いのが旅してんだ。夜も楽しめばいいのにな」


 俺はお茶を噴きそうになる。


「深い意味はねぇよ。若いうちは楽しむもんだ」


 焼けた魚を差し出しながら、老人は満足そうに笑った。



◇◇◆



 リュミナが起きてきたのは、昼を過ぎてからだった。


「服を見に行きたい」


 そう言われ、俺は首をひねる。


 港町に、そんな洒落た店があっただろうか?

 なくはない。

 

だが、あったとしてもリュミナ向けではない。


 案の定、最初の店では首を横に振られた。


「お嬢ちゃんなら、三件先の店がいいですよ」


 言われた通り向かい、店先を見た瞬間――

 俺は絶句した。


 異世界文化の結晶。

 水着。


(……これで何が隠れる)


 いや、知っている。


 これは、いわゆるビキニアーマーだ。


 防御力など、存在しない。


「良いわね。涼しそう」


 リュミナはあっさり気に入った。


(マジか……)


 そういえば、リュミナの部下にワンショルダーのワンピースを着たトロールがいたし、

スケルトンはほぼベルトだけだったな。


 異世界より恐ろしい文化圏。


 「ねえ、これどう?」

 差し出されたのは、金色のブーメラン。


「……誰が履くんだ」


「あなたよ」

「履けるか!」


 履く前に破けるわ。


「当店の品質は丈夫ですよ」


「うるさい」


 試着室から出てきたリュミナは、赤いビキニ水着。

 

防御を期待する厚みなどない。

 

留め金などない。


ヒモだ。


俺の心臓がやばいことになっている。



 せめてもの抵抗で薄手の上着を二着買う。

 

一着は俺、もう一着をリュミナに。


こんな姿で歩かせられない。


おっと自分のサイズだったからリュミナには大きかった。

「……大きいな」


取り替えようとすると、リュミナが俺の手を引く。


「これでいい」

 顔が、少し赤い。


まぁでかいほうが体隠れるから良いか。



そう思ったのだが。


上着を羽織った途端、

 

なぜか太ももが、さっきよりまぶしい。


隠したはずだ。


なのに破壊力が上がっている。



どんな戦いの一撃より、俺は打ちのめされた。

(やめろ。裾を押さえるな。赤くなるな)


現在、アレスのHP5以下。


回復手段は、ない。



挿絵(By みてみん)

◇◆◆



そのまま海へ向かった。

視線が集まるたび、俺は無意識に前へ出る。


「邪魔よ」


「邪魔じゃない。目立つんだ」


「あなたもデカくて目立つわよ」


上着の裾をつかんだまま、隣を歩くリュミナ。

波打ち際で足を浸し、楽しそうに笑う。


「涼しいわね」


「……そりゃそうだ」


 距離が、少しずつ縮まる。


「ねえ」


「なんだ」


「これ、気に入ったわ」


 聞かなくても分かる。


 海は穏やかで、


 太陽は高く、


 竜王様はご機嫌だった。



◆◆◆


「そういえば、海の上を歩けるって言ってたわね」


「ああ。昨日は加減を間違えたが」


「教えて!」




浅瀬で何度も挑戦するリュミナ。


俺が見本を見せると、


「……変態ね」



 失礼なやつだ。


上着は浜辺に畳まれている。

濡れるのが嫌だという。


結果、ビキニ姿が全力で視界に入る。


残りHP2



「ちゃんと見てて!」


「無茶言うな」


俺は浜辺に座るしかない。



……立てないからだ。



いや、正確には――立っている。

 



ドゥー・ユー・アンダースタンド?



分からない方は、そのままで結構です。


だから言ったろ。


ブーメランじゃダメだって。



あーリュミナがこけて髪まで濡れてるな。

でも笑ってるから良いか。

竜王は水浴びを良くしてたって言ってたな。


挿絵(By みてみん)


いまの姿なら被害は俺だけだ。


しばらく俺は立てなかった。




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