月夜と赤い瞳
あの後、老人から干物などを山ほど食べさせられた。
「ずいぶん落ち着いて酒を飲んでたけど、危なくないのか?」
俺の問いかけに老人は笑う
「海が本気で荒れた時ほどじゃない」
なるほどな、他の漁師もそれほど焦ってなかった。
海の男は肝が太い。
「最近は来ないが竜が水浴びしにきた時は、今の10倍すごい」
老人の言葉に、俺はリュミナを見る。
素知らぬ顔をしてるが、多分お前だよな。
「わしの船もだが、あの時は8艘壊れたな」
豪快に笑う。
すみません、うちのがすみません。
ともあれ、あれくらいでは海の男はどうってことないらしい。
「かえって邪魔したな」
俺がいうと老人は笑う。
「いやいや元気な若いやつを見るのは楽しいよ。ほれこっちの干物も美味いぞ」
(隣の娘は多分あんたの10倍生きてるけどな)
リュミナは魚をたくさん食べて満足している。
多分最初の目的忘れてるな。
爺さんからもらった酒は思いの外強くてむせた。
夜になる、海が月を写し思ったよりも明るい。
老人は満足したか、かえって行った。
俺は慣れない酒で、少し参っている。
「あれくらいで参るなんて、お酒弱いのね」
リュミナは老人からもらった酒をまだ楽しんでいる。
うわばみか、いや竜だったな。
「ふふ、樽で飲んでも味がわからなかったけど、人間の姿で飲むと美味しいわね」
「楽しんでるなら何よりだよ」
干物を口にしながらリュミナが笑う。
「久々に力も使えたから、すっごく楽しい」
月夜で照らされる赤い瞳は普段よりも綺麗に見える。
もう少しリュミナの横顔を楽しみたいが、冷える。
その日は宿をとって寝ることにした。




