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元勇者の俺と竜王(少女)の二人暮らし。 世界平和は家庭円満の後でいい?  作者: Hike技研


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海を走る

海で、

シーサーペントとクラーケンが、取っ組み合っている。


なるほど。

港に人気がないわけだ。


浜辺では、漁師と思われる集団が、海を前にして頭を抱えていた。

あれでは、とても漁など行けないだろう。


その中で、集団の前方。

岩に腰をかけた高齢の漁師が、海の戦いを静かに眺めている。


……ずいぶん、達観したものだ。



「あれじゃ、魚が逃げちゃうわね」

リュミナの言うことはもっともだ。


だが、漁師にとっては、それ以前の問題だろう。


「倒してくる」

さらりと言う。


確かに可能だが、こんなに人目がある中で目立つのも気が進まない。

どうしたものかと考えていると、


周囲の漁師たちが、次々と引き上げていった。

時間に解決を任せたのだろう。


浜辺に残っているのは、高齢の漁師だけだ。


よく見ると、焚き火を起こし、何かを炙りながら酒を飲んでいる。

……あれは、帰らないな。


見物人は減った。

酔っ払いの証言なら、大ごとにもならないだろう。



「やるか」

その一言で、リュミナの表情がぱっと明るくなる。


……分かりやすすぎる。


さて、倒して食べるとか、そういう話じゃない。


「遠くに逃がす程度でいいか」


俺の言葉に、リュミナは一瞬だけ不満そうな顔をして、


すぐに楽しそうに笑った。


「優しいのね」


「食い切れないし、それに、あいつらも喧嘩してるだけだろ」


俺は足元の流木を拾い、靴の裏にくくりつける。


「何してるの?」


リュミナが覗き込んできた。


「海の上を走る準備」


普通に答えたつもりだったが、リュミナは思い切り引いている。


「そんなものだけで走れるの、あんただけよ」


「水が体重を感じる前に次の足を出すだけだ。流木を使えば、さらに簡単になる」


「……まじ変態」


なんともひどい罵倒だ。


「お前はどうするんだ?」


「飛び上がれば届くでしょ。蹴って、また戻ってくるわよ?」


……人のことは言えない。


お互いに驚きはするものの、

心配など、するはずもなかった。


無理だとも思わない。


「お前なら、できるだろ」

発想はともかく、実際に可能なのだ。


「じゃあ俺が海蛇をやるから、イカは頼む」


「ええ? やだ。このブーツ、気に入ってるのに。粘液だらけになりそうじゃない」


……そこかよ。


言い終わると、リュミナが駆け出す。


老人が腰をかけている岩の前。


「美味しそうね、おじいちゃん」


軽く声をかけ、岩を蹴る。


跳躍というより、地面と平行に射出されたような動きだった。


向かう先は、シーサーペント。


「あ! くそ、ずるいぞ!」

一拍遅れて、俺も砂浜を蹴る。


……っと、ご老体のそばは砂がかかるな。


岩を迂回した分、リュミナには追いつけそうもない。


「仕方ない。イカを蹴るか。墨を吐かれたら厄介なんだが……」


ご老体を避けながら、足指、足首、ふくらはぎ、膝、もも。

五点にまとめてバフをかける。


踏み出すたび、砂が爆発するように舞い上がった。


結果、海が割れた。


海の上を走るつもりだったが、割れた海をそのまま駆け抜ける。


ぶっつけ本番だ。想像と違うが、このまま行こう。




先に、リュミナの蹴りがシーサーペントに直撃した。


反動で、彼女は回転しながら浜辺へ戻っていく。


「おっさきーー!」


跳ね返されたシーサーペントが波に叩きつけられる。

死んではいないだろうが、相当効いている。


クラーケンまで、あと十歩。


俺も跳躍する。

蹴りを入れ、リュミナと同じように浜へ戻るつもりだったが、跳ね返ってきたシーサーペントが進路を塞いだ。


蹴り飛ばす。


その瞬間、体勢が崩れる。


……仕方ない。拳だ。


粘液まみれになるのは、正直勘弁してほしい。


腕まわりに、三点バフ。


驚かせる程度でいい。これで十分だ。


クラーケンの、目と目の間に掌底を捩じ込む。


反動で跳ね返れる。



そう考えていたのだが、戦い疲れていたのか。


手加減したはずなのに、クラーケンはそのまま海中へ沈んでいった。


「……しくじったな」

クラーケンと共に、俺も海へ沈む。





泳いで浜へ戻ると、

そこでは老漁師とリュミナが、すっかり酒盛りを始めていた。


「先にやってるわ」


炙ったイカをつまみに、酒を飲んでいる。


俺は濡れた服のまま、焚き火の前に腰を下ろした。


……寒い。


そっちのイカなら、俺も食いたいな。



逃すつもりだったシーサーペントは、

気を失ったまま沖へ流され。

クラーケンは、海中深く沈んでいった。



海は、静かだった。

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