押しかけ竜王は、可愛い小娘でした。
かつて、竜王を倒し勇者として栄光を掴むはずだった男がいた。
その拳は大地を砕き、跳躍は天を掴むと噂された。
だが竜王との戦いは決着がつかず、
世界は彼を勇者と呼ばなかった。
現在、王国の城門で門番を務めるアレス。
元勇者――そう呼ばれるには、十分すぎる男だ。
「はぁ……今日は異世界勇者の凱旋祭か」
落胆よりも、ただ面倒くささだけを滲ませたため息。
アレスは戦いをやめた。
王国は勇者を召喚するという荒技を繰り出し、そして見事、竜王を倒して退けた。
王国は湧き返り、三日続く祭りで大騒ぎしている。
一方アレスは非番の日だったが、祭りで騒ぐ仲間に頼まれ、結局は門番の代わりを務めている。
感謝されても、気の利いた返事すらしない。
戦いをやめた理由。竜王。
空を見上げると、星がひとつ瞬いた。
「……あいつ、倒されたか」
誰に向けるわけでもない、独り言。その瞬間だった。
森の奥から、規則を無視した軽い足音。
普通の迷い人ではない。魔獣の気配もない。
なのに、とんでもない速度で近づいてくる。
アレスは構えず、ただ目線だけを向けた。
赤い“何か”が飛び出す。
そして、アレスの目の前でぱっと広がった。
赤いフード。
白い髪。
紅い瞳。
「見つけたわよ、アレス! 責任取りなさい!」
叫びとともに飛び込んできた少女に、アレスはまばたきすらしない。
「待て、誰だ?」
「誰だ!じゃない!待てど暮らせど迎えに来ない!甲斐性無し!」
アレスは呆気に取られる。少女はアレスを突き飛ばし、ふんぞり返った。
戦う気がないとはいえ、自分を突き飛ばせる少女にアレスは驚愕する。
竜王とも戦える自分を突き飛ばせるのは……
少女の胸元には金の刺繍 それはドラゴンの紋章
10年前にも見た覚えがある
「いや待て、そのフードの紋章は」
「ええーーい 頭が高い!我こそは竜王リュミナその人である!!」
アレスは言葉が出ない。
竜王リュミナ。十年前に戦った、あの竜王の生まれ変わり。
世界を揺るがす存在は、今はただの怒った少女の姿をしていた。
「お前倒されたんじゃ?」
「世代交代?脱皮?生まれ変わりがあるって前にも言ったよね?」
竜王は肉体が滅びる前に換えの肉体を用意する。
「旅が一緒にできたなら、飯くらい食わせるって言ったよね?」
竜王と戦い疲れて会話した時、そんなことを言ったな。
飯くらいご馳走すると
「それってプロポーズだよね!!!」
こうして俺たちは再会した。




