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反逆の狼煙

今回はハルベット元長官がメインです


 中央アルラード管理本部所全アルラード管理長官室


「非常に良い座り心地だ。これがアルラードを統べるものが座る椅子か…」

アルフィンは長官室の後ろにドンと構える机の椅子に腰掛ける。

 トントントン

ドアの叩く音が聞こえる

「入りたまえ」とアルフィンがドア越しの相手に伝える

アルフィンの短い一言に続いて、扉が静かに開いた。

そこに立っていたのは、まだ十七、八ほどの青年だった。整った顔立ちに中性的な線の細さを持ち、淡い茶髪であった。

緊張のあまり、指先がわずかに震えていた。

「も、元ハルベット長官の補佐官で……これからは、アルフィン・ルンシュター全アルラード管理長官の補佐官となります。アンスター・テルンです。」

(こんなに若い少年が補佐官か…)

アルフィンはそう思った。

「……そうか。ようこそ、テルン。これから忙しくなるぞ。」

青年は慌てて一礼した。

「そして要件は何だね?」アルフィンが問いかける

「その…ハルベット元長官が会議室でアルフィン長官に用があるということです」

「そうか…分かった今から会議室向かう。」

アルフィンは急ぎ足で部屋を出ていった。

(このお方がハルベット長官の言うアルラードの救世主か…想像通り威厳のあるお方だ)とテルンはアルフィンが去った部屋で思った。


 中央アルラード管理本部所会議室


アルフィンが会議室に来たときには既にドアが開いていた。アルフィンが部屋を覗くと段ボールに荷物を詰めている作業しているハルベット元長官の姿が見えた。

「ハルベット元長官用件とは何でしょうか?」

アルフィンが作業中のハルベットに声をかける。

「あぁ…アルフィンか待っていたよ」

ハルベットはかすれた声で返した。

「要件というのはアルラードのこれからの体制についてだ。」

淡い光がブラインド越しに差し込み、段ボールに詰められた書類の山を照らしていた。

机の上にはまだ整理しきれない書簡や書類が散乱しており、

その混沌はまるで――旧体制の終焉を象徴しているようだった。

「これからの体制、ですか。」

アルフィンは低く答え、近くの椅子に腰を下ろす。

ハルベットは黙ってゆっくりとその正面に立った。

「君が長官に就いたと聞いて、皆が口々に“新しい時代”だと言っている。

 だがね、アルフィン君。新しい時代という言葉ほど、危ういものはない。」

「……危うい?」

「あぁ。」

ハルベットは老いた目でアルフィンを見据えた。

「新しい時代とは、古い時代の犠牲の上にしか立てない。

 そして犠牲を払った者たちは、往々にして報われぬまま忘れ去られる。

 アルラードをどう導こうと、君が最初に捨てるのは“人の情”だ。」

アルフィンは黙ってハルベットの言葉を聞いていた。

だが、わずかに口角が上がる。

「……そうかもしれません。

 ですが、情に溺れた政治は、あなたの時代で終わったはずです。」

その言葉に、ハルベットは小さく息を呑んだ。

しかし次の瞬間、ふっと笑う。

「やはり、君は私の後継者に相応しい。言葉が鋭い。」

「誉め言葉と受け取っておきます。」

ハルベットは段ボールの中にあるファイルから一つにまとめられた古びた書類を取り出した。

「これはオルランタ連邦からの人道派遣要求書だ。君が引き継ぐ前、私はこれを全て破棄するよう命じられた。だが破棄などできなかった。……これには、“アルラードとオルランタの闇”がすべて記されている。」

「こ…これは!?」

アルフィンは一番表の用紙を見て驚いた。


「…物資徴収を名目にした「資源供与契約」と、その裏で行われていた「人的取引協定」の詳細がここに記されている。」

ハルベットは淡々と述べる。

「……まさか、これを承認したのはアルラード評議会か?」

アルフィンの声は低く、押し殺したような響きを帯びていた。

ハルベットは小さく頷いた。

「そうだ。あの頃、アルラードは“徴収命令”による反乱鎮圧で苦しんでいた。

 上層部は表向きオルランタに人道を派遣するという形で、

 実際には反乱勢力、アルラード市民をオルランタに労働力、実験計画の被験者として強制移動を行った。」

「私を含む一部のものはこの「人的取引協定」を拒否したが、

…過半数以上はこの案に賛成した。"アルラードの人間しかいない"評議会なのにだ。」

「だが私は諦めなかった。その後私はオルランタ連邦との外務官を務めオルランタとのコネを作った。」

「そして私は全アルラード管理長官の座についたのだ。そして「人的取引協定」に賛成した売国奴を追放しわずかとはいえ人的取引の量を減らした。だが実験計画は進んでいた。」

「これはオルランタ連邦の「超人計画」の写真だ。」

ハルベットは小さな写真を一枚取り出した。

そこに映っていたのは、痩せこけたアルラードの人間と、

白衣の男――写真の隅には小さく「オルランタ研究連邦会」と印字されている。

「オルランタ連邦はさらなる軍事増強のために植民地から被験者を集め人体実験を行っている…」

「私は長官の間に徴収命令、人的取引協定の破棄そしてアルラードの独立を達成できなかった。」

「だが君にはこの偉業を冠水できるという意思を感じる。」

「アルフィン長官何度も言うがアルラードを任せた。」

「私は旧体制の人間として大人しく去るよ…」

ハルベットが段ボールを抱え、ドアノブに手をかけたその瞬間――

「……反逆の狼煙は、いつだって静寂の中から上がるものだ。」

アルフィンの低い声が、会議室の広い空間に響いた。

振り返ったハルベットは、一瞬、言葉を失ったように立ち尽くす。

若き長官の瞳は、炎ではなく氷のように澄み切っていた。

「あなたが築いた秩序を壊すのも、あなたが残した理想を守るのも、

 結局は――この沈黙を破る“誰か”の意志だ。」

しばしの沈黙。

やがてハルベットは、深く、静かに一礼した。

その仕草は、どこか安堵の色が滲んでいた。

「……ならば、その狼煙が再びこの空を焦がすとき、

 私は、遠くでその光を見届けよう。」

そう言い残して、ハルベットはゆっくりと部屋を後にした。

扉が静かに閉まる音だけが、会議室に残響のように消えていく。

アルフィンは窓の外を見上げた。

その景色はアルラードという国の運命を動かす男の最初の景色となった。

ご愛読ありがとうございます。全速力で続編制作中です。

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