アルフィン・ルンシュターの策
「我らが進む道」の第二話となります今回からやっと主人公アルフィン・ルンシュターの登場となります。前書きは以上です。
「私に考えがあります」
今まで騒然としていた会議室はアルフィン・ルンシュターの一言でいなされた。
「考えとはなんだね?アルフィン統帥長」
ハルベットはアルフィンに問いかけた。
「まず我らアルラードは現在オルランタ連邦の管理化、まぁすなわちは支配下にあります。」
アルフィンは淡々と話し始めた。
「今まではギリギリとはいえ払える量の物資徴収でしたが、今回のオルランタの要求は現在の我が国の出せる量ではないですな。そうなると我々が取れる手段は2つ。」
「1つ目はオルランタ側に物資徴収の時期をずらしてもらうか物資徴収の量を減らしてもらうことですな。」
「それが良い!」
「交渉による選択肢しかない!」
一部のものがその案に賛同する。
「ですが…」
アルフィンが賛同者の意見を遮る
「先程も説明しましたが我々アルラードはオルランタ連邦の支配下であります。彼らにとって我々は、物資を貢ぐだけの“土地”であり“人足”です。対等な関係などではありません。そのため交渉などあり得ませんな。」
賛同者はその言葉を聞き頭を落とした。
「となると…結局2つ目しか選択肢がないということか…そしてその2つ目の選択肢とは何だね?」
ハルベットはアルフィンに問いかける。
「2つ目の選択肢とは…」
アルフィンは先程まで固くなっていた顔を和らげ少しずる賢い笑みを浮かべた。
「アルラード公国を復活させることですな。」
その言葉を聞いた会議室のメンバーは思いがけてもいなかったアルフィンの発言に一瞬我を失ったが…
「アルフィン統帥正気ですか?」
「なんという妄言だ!!」
とまた机を叩きアルフィンを怒号で罵ったが、
「アルフィン君にも何か秘策があるのだろう。一旦聞いてみようではないか」
とハルベットがその場を和ませる。
「ご配慮有難う御座いますハルベット管理長官」
アルフィンはハルベットに一礼した後
「まぁ確かにアルラード公国の復活は厳しいでしょう。しかしこれは我々アルラード人の願いであります。」
「皆さん方も知っておりますよな?我々アルラードが搾取されているのは物資や資源だけではないことを」
「………」
会議室のメンバーは下を向く者、強く拳を握る者、今にも泣きそうな者など様々だった…
「我々は色々なものを失いました。人も物も平和も…」
「しかし我らは野望を失ったことはありません!」
「そしてその野望は今まさに、再び燃え上がろうとしている!」
彼の声は鋭く、そして力強かった。
その一言には、長い屈辱の歳月と、押し殺してきた憤怒が込められていた。
「オルランタは我らの誇りを奪い、国旗を焼き、兵を縛り、民の口に鎖をはめた。
だがそれでも、この地の魂まで奪うことはできなかった!」
「我々アルラード人は、ただの敗者ではない。
再び立ち上がる!
今、我らの野望は灰の中から蘇る。最初の一手だ」
アルフィンの演説で交渉を主張した者、物資徴収の断固拒否を者の心を掴んだ今まさに会議室のメンバーの心が一つになったのだ。
「アルフィン・ルンシュター」
ハルベットが、深く息を吐きながら口を開いた。声には不思議な静けさがあった。
「……はい!」
アルフィンは反射的に背筋を伸ばし、力強く答えた。
会議室の空気が、ぴんと張り詰めた。
周囲の視線が二人に集中する。机の上に置かれた書類の端が、わずかに震えていた。
「……今日をもって、君のアルラード自治区軍統帥長の任を解く。」
沈黙。
その言葉は、まるで凍てついた刃のように会議室を切り裂いた。
アルフィンの眉がわずかに動く。誰も息を呑む音すら立てない。
ハルベットは間を置いた。
その瞳には怒りも軽蔑もなく、ただ何かを決意した者の確固たる光があった。
「――そして、全アルラード管理長官の任を命ずる。」
一瞬、空気が弾けたような錯覚が走った。
ざわめきが起こりかけたが、ハルベットの次の言葉がそれを押しとどめた。
「この地を、再び立たせるためには従属ではなく、野望が必要だ。
アルフィン、お前の目は誰よりも未来を見ている。
ゆえにこの役を任せる。
アルフィンはしばし沈黙し、敬礼した。
その瞳はかすかに揺れ、やがて深く、静かに息をついた。
「……承知いたしました。
ならば、アルラードの為にこの命捧げましょう。」
ハルベットは小さく頷いた。
「頼むぞ。アルラードは、もはや“占領地”ではない。
君の手で、それを“国”へ戻すのだ。」
その瞬間、アルフィンの心に一筋の炎が宿った。
それは誇りでも栄光でもない――“決意”という名の炎だった。
「では、2つ目の選択肢の続きといきましょう」
アルフィンが再び話を続けた。
「言わずもがな戦力はアルラードが圧倒的にオルランタ連邦に負けている。そのため戦闘は避けなければならない。」
「ではどうやって独立するのか?という疑問が出るでしょう。」
「ですが、この疑問はオルランタ連邦の行動さえ理解できれば簡単な事だ。」
「皆さんご存知でしょうが今までオルランタ連邦はアルラードの物資徴収量を増やしたことも減らしたこともありません。」
「が、急に増やした。」
「つまりは…戦争でしょうな」
「我々はそれを利用します。ハルベット長官の許可を取って私の部下にオルランタの情報について探らせていましたが…」
(そんな事私は一度も聞いたことないぞ)
とハルベットが心のなかでアルフィンを叩く
「オルランタ軍は少量の国境防衛軍を残して南から西へと向かっておりますな。つまり今が独立の時でしょう。オルランタ軍が我々鎮圧のために戦争計画を潰すことはないでしょうからね。」
「今こそ反逆の狼煙を上げるときだ。我々は属国ではない。偉大なるアルラード公国だ」




