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Unmade -歪みし世界の中、人身御供となりて奏でた仮初めの青春譚-  作者: イチジク浣腸
仲間

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名もなき記者

報道の自由とは、単なる権利ではない。

それは時に、己の存在を消し、命を削ってまで誰かの闇を暴くという覚悟だ。

この物語は、帝国の闇を追うひとりの記者と、彼が目撃してしまった”絶対権力の顔”の記録である。

霧深きレインバルドの裏路地にて、報道とは何か、自由とは何かが問われる——。

帝国の首都、レインバルドの深夜。霧が街を包み込み、冷たく湿った空気がひとしずくひとしずく、地面に落ちていった。路地裏に立つひとりの記者は、周囲の静寂に耳を澄ませていた。彼はただの記者ではない。その身体に宿るのは、人技アストリオ

今、彼の人技「隠纏ステルライド」が、静かに、しかし確かに、周囲と彼自身を隠している。視界のすべてが霧に溶け、影の中に溶け込んでいく。


彼が今、追っているのは帝国騎士団《暁の鷲》の団長、ベレト・マグナリア卿。彼の足音がかすかに響く。見上げると、月明かりが薄く霧を照らし、ベレトの姿がかすかに浮かび上がった。けれど、その姿に動じることなく、記者は一歩また一歩と、影のようにその後を追う。足音は彼に気づくことなく、彼の周囲の空気すらも静かに閉ざしていった。


隠纏ステルライド――この技があれば、どんなに慎重で警戒心の強い者でも、後ろから近づく者を感じ取ることはできない。それが彼の強みであり、今まさに活かされる瞬間だった。目の前の騎士団長、ベレト・マグナリア卿が、彼に気づくことは決してない。ただ、霧の中でひとり、記者はその後ろに影を落としながら、静かに、そして確実に足を進めていた。


「これで、ようやくあの男の秘密を暴ける……。」


記者は小さく呟き、深呼吸して、ベレトの背後に忍び寄った。隠纏ステルライドを駆使し、彼の姿はほぼ消え失せ、まるで霧の中に溶け込んだかのように周囲の視線から完全に消えた。しかし、その瞬間、ベレトが不自然に足を止め、ゆっくりと振り返ると、その鋭い視線が背後へと向かう。記者は凍りつくような冷や汗を感じ、心臓が大きく跳ね上がった。まるで、何かに気づいたかのように――。


「何か気配を感じる…?」


ベレトの鋭い眼差しが、記者がいる場所をじっと見つめている。記者は無意識に体を硬直させ、息を呑む。だが、ベレトは何も言わず、再び歩き出した。記者はその隙をついて、再び後を追い始める。


そのまま数分後、二人は帝国の外れの街へと辿り着いた。辺りはほとんど人影もなく、薄暗い路地に唯一灯るランプの明かりだけが頼りだ。記者は息を潜め、ベレトが向かう先を見守る。


そして、その先で記者は見た。


街の片隅に立つ、奇妙な影――悪魔のような姿をした者が立っていた。彼は不気味に歪んだ笑みを浮かべながら、突然、周囲の空気が異様に震え始めた。その力が周囲の空気を変え、記者は目を見開く。


「これは…人間ではない?」


ベレトはその悪魔のような者に歩み寄り、何も言わずに剣を抜く。だが、それは決して通常の戦いの構えではなかった。何か、暗黒の力がその一瞬に集約されたように感じる。


「喰らえ。」


ベレトの低い声が響き渡ったその瞬間、彼の体がまるで異次元に引き込まれるかのように変貌を遂げた。剣ではなく、漆黒の魔力をまとった手が、悪魔のような者を掴む。その瞬間、記者の目の前で信じられない光景が広がった。


ベレトは悪魔のような者をそのまま喰らった――言葉では表現しきれないほどの暴力的な力で、目の前の存在をまるで吸い込むように消し去った。


記者はその瞬間、体が固まり、恐怖に震えた。隠纏ステルライドを使っていたが、もはやその力が無意味に感じられるほどの恐ろしさだった。


その時だった。ベレトの視線が突然、記者に向けられた。


「君も、見てしまったか。」


その声は冷たく、容赦がない。記者は完全に隠れているつもりだったが、ベレトはまるで彼の存在を知っていたかのように、ゆっくりと歩み寄る。


「さあ、君も…消えてもらおう。」


ベレトの手が記者に伸びる。その瞬間、記者は絶望的な思いで体を動かそうとするが、隠纏ステルライドの力では、すでにベレトの気配を遮ることはできなかった。記者の目の前で、ベレトの手が不気味に空を切り、暗黒の力が渦巻きながら迫る。


最後に記者は、無言でその恐怖に飲み込まれていった。

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